[週刊ファイト1月22日期間] [ファイトクラブ]公開中
▼秩序崩壊!大晦日が暴いたRIZINバンタム級の底なしの混沌階級
photo: 松橋隆樹&タダシ☆タナカ by 野村友梨乃
・落ち着くはずだった階級が再び荒れる夜:大晦日RIZINバンタム級
・トラッシュトークが現実に:井上直樹を崩したサバテロの執念
・瞬き厳禁!勝敗を超え記憶に刻まれた福田龍彌vs.安藤達也の勝負
・拮抗が生んだ判定に評価が交錯した一戦!後藤丈治vs.ホセ・トーレス
・開幕戦から波乱!タップアウトの衝撃、ジョリーの寝技に芦澤竜誠沈む
・勝っても終わらず、負けても消えない:目を離せないRIZINバンタム級
▼大晦日熱戦続出:世代が交錯し、実力が露わになったRIZINフライ級
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落ち着くはずだった階級が再び荒れる夜:大晦日RIZINバンタム級
これまでRIZINバンタム級は、「ベルトがなかなか固定されない階級」と言われ続けてきた。だが井上直樹が2度の王座防衛に成功し、ようやくこの階級も落ち着く――そんな期待を抱いたファンも多かったはずだ。

しかし、RIZIN大晦日のカードが示した現実は、決して甘くなかった。
タイトルマッチの井上直樹vs.ダニー・サバテロを筆頭に、福田龍彌vs.安藤達也、後藤丈治vs.ホセ・トーレス、芦澤竜誠vs.ジョリー。どの試合も好カードであり、同時に「想定通りには進まない」ことを突きつける内容だった。
大晦日のバンタム級は、王座の行方だけでなく、この階級が依然として混沌の只中にあることを、改めて証明する夜だった。
▼RIZINバンタム級:王者井上直樹を軸に新世代猛者群雄覇権争奪戦
トラッシュトークが現実に:井上直樹を崩したサバテロの執念
この二人の対決は、試合当日から始まったものではない。遡ること2025年9月28日、ダニー・サバテロが佐藤将光と戦ったその日から、すでに物語は動き出していた。リング上のマイク、入場から退場までの立ち振る舞い。井上に中指を立てたり「イノウエナオキ、クビアラッテマットケ!」と発言したり。サバテロは一貫して王者・井上直樹を名指しし、挑発し、存在を誇示し続けた。
正直、あのトラッシュトークの量と質には感心すら覚える。よくもまあ、これだけ次から次へと言葉が出てくるものだと思うほどだ。RIZINの公式YouTubeでも何度も切り取られ、字幕の力もあるとはいえ、日本人選手にはなかなか真似できない“見せ方”だった。それでいて、不思議と苛立ちは湧かない。むしろ「ここまでやり切るなら、見事だ」と感じさせる説得力があった。
一方の井上は、終始我関せず。にやりと笑うだけで、相手の言葉を真正面から受け止める素振りすら見せない。「人に興味がない」と語ってきた井上らしい態度であり、何を言われても響いていないことが、逆に彼の強さにも映った。
喋らない、盛り上げない、と批判されることもある。だが、井上は一貫して「戦う場所はリングの上」というスタンスを崩さない。試合で証明する――その姿勢に、私はむしろ好感を持っていた。だからこそ、この一戦の結末は、より重く感じられた。


試合は、結果だけを見ればサバテロの勝利。内容を振り返ると、「粘り勝ち」という表現が最もしっくりくる。序盤、井上のローキックが効き、流れは井上に傾くかに見えた。だが、そこからサバテロは引かない。執着心の塊のようなレスリング。ねちっこく、相手が最も嫌がる距離と展開に、何度も井上を引きずり込んでいく。派手さはない。だが、確実に勢いを削っていく。気づけば、井上は自分のリズムを作れないまま、無残にも時間だけが奪われていった。
井上の技術力が高かったからこそ、極められる場面はなかった。それでも、“井上の試合”にはならなかった。サバテロの土俵で戦わされ続けた――そんな印象が強く残る一戦だった。このファイトスタイルを見て、頭に浮かんだのはUFCのメラブ・ドバリシビリだ。あそこまで執拗に組み続け、相手の良さを消し続けるレスリングは、RIZINでは正直珍しい。サバテロは、その“嫌な強さ”を、最後まで貫き通した。

そして勝利の瞬間、サバテロは泣いた。あれだけ自信満々に語り、強気な言葉を並べてきた男が、感情をむき出しにして喜ぶ姿は、どこか人間臭く、憎めなかった。──かと思えば、その直後。安藤達也にKO勝利した福田龍彌へ向けたトラッシュトークは、再び全開。感情を爆発させた直後でも、キャラクターを崩さない。この男、本当に面白い。この振り幅こそが、サバテロの魅力なのだろう。今後も、間違いなくファンを増やしていく存在だと感じた。
一方で、敗れた井上については、心配していない。こんな一敗で腐る選手ではないことは、誰よりも分かっている。だからこそ、リベンジマッチが楽しみで仕方ない。
そして、その前に見たいカードがある。それが、安藤達也との一戦だ。もし今回、井上が防衛していたら、このカードは遠のいていたかもしれない。だが現実は違う。むしろ、この敗戦があったからこそ、実現への距離は縮んだようにも感じる。
王者が入れ替わったことで、バンタム級は再び動き出した。「井上で落ち着くはずだった」という見立ては、見事に裏切られた。このタイトルマッチは、そのことを最初に突きつけた試合だった。そして同時に、RIZINバンタム級が、まだ“答えの出ない階級”であることを、強烈に印象づけた一戦でもあった。次の試合で、また景色は変わる。そう思わせるだけの余韻が、この井上vs.サバテロには、確かに残っている。

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