[週刊ファイト1月15日期間] [ファイトクラブ]公開中
▼大晦日熱戦続出:世代が交錯し、実力が露わになったRIZINフライ級
photo: 松橋隆樹&タダシ☆タナカ by 野村友梨乃
・派手さより中身で勝負:RIZINフライ級が示した“健全な現在地”
・勝敗以上の価値が残る一戦:扇久保博正vs.元谷友貴、ベテランの矜持
・ATT所属とアメリカ修行の答え合わせ:神龍誠vs.ヒロヤの現在地
・MMAルールで2年越しの再戦:冨澤大智に突きつけられた経験値の差
・派手さ不要!世代交錯、実力直結:熱も実力も本物のRIZINフライ級
▼RIZIN10周年大晦日大会を終えて:5大タイトルマッチが語った現実
▼王者陥落、因縁決着、新時代到来:RIZIN10年目の大晦日、激動の一夜
派手さより中身で勝負:RIZINフライ級が示した“健全な現在地”
RIZIN大晦日大会。その中でも、最も“純粋な実力差”と“積み重ねてきた時間”が交錯したのがフライ級だった。フライ級タイトルマッチ・扇久保博正vs.元谷友貴、神龍誠 vs.ヒロヤ、そして篠塚辰樹vs.冨澤大智。
派手さや話題性ではなく、「今のRIZINでフライ級が最も健全に進化している階級であること」を、これら3試合がはっきりと示していた。

“塩”と揶揄されることも多い扇久保博正。しかし、その評価はあまりに短絡的だ。打撃、レスリング、寝技、そのすべてを高水準でまとめ上げる扇久保は、勝つために必要なことを選び続けてきたリアリストだ。その扇久保に、真っ向から対抗できる存在は誰か――そう考えた時、RIZINフライ級で名前が挙がるのは元谷友貴しかいなかった。だからこそ、このカードが“タイトルマッチ”として実現した意味は大きい。もし1回戦目で当たっていたら、この一戦はここまでの緊張感と重みを持たなかっただろう。
一方で、未来を占うカードとして注目されたのが神龍誠とヒロヤの一戦だ。ATT所属後初戦となる神龍と、アメリカ修行を経て戻ってきたヒロヤ。両者が「どれだけ変わったのか」を測るには、これ以上ない物差しだった。
そして、2年越しの因縁がついに交錯した篠塚辰樹 vs. 冨澤大智。篠塚と同門ブラックローズの平本丈を破り、一気に評価を上げた冨澤は、MMAキャリアでは篠塚を上回る。勢いか、経験か――この試合もまた、フライ級という階級の“奥行き”を感じさせる一戦だった。
RIZIN大晦日、そのフライ級には、過剰な煽りも必要なかった。積み上げてきたもの同士が、静かに、しかし確実にぶつかり合う。その姿こそが、この階級の現在地だった。
▼想定外のカード変更:RIZIN10周年・大晦日で露呈した期待と疑問
勝敗以上の価値が残る一戦:扇久保博正vs.元谷友貴、ベテランの矜持
フライ級タイトルマッチ、扇久保博正 vs. 元谷友貴。試合前、この一戦を「ベテラン同士の渋い組み勝負」と予想した人は多かったはずだ。だが、実際に展開されたのは、予想を裏切る“打ち合い上等”の激闘だった。


組みに持ち込む時間が長くなるかと思いきや、両者は真正面から拳を交えた。逃げない。引かない。どちらも「まだ俺はここにいる」と言わんばかりに、打撃戦を選び続けた。その姿に、思わず胸が熱くなったファンも少なくなかっただろう。

顔は血で染まり、被弾も少なくない。それでも、打たれたままでは終わらない。必ず打ち返す。必ず前に出る。これはテクニックの応酬であると同時に、意地と意地のぶつかり合いだった。まさに「これぞ漢の戦い」と呼ぶにふさわしい内容だった。
大会後、この試合を「大晦日大会のベストバウト」と挙げる声が多く聞かれた。私自身も、その意見に異論はない。派手なKOがあったわけではない。だが、魂を削り合うような時間が、確かにそこにあった。

試合内容を冷静に振り返ると、勝敗を分けたのは扇久保の距離感だったように思う。決定的な大ダメージを与えた場面は少ない。元谷自身も、致命的に効いた感覚はなかったかもしれない。それでも、扇久保が放った顔面へのパンチは、もらい方が非常に“見栄えが悪かった”。ジャッジに与える印象、試合の流れ――その部分で、扇久保は一歩先を行っていた。

もちろん、元谷も負けていなかった。手数、前進、打ち返し、アクティブさという点では、互角か、それ以上だった時間帯もある。ただ、あと一発。もう一段階、相手を下がらせる“効かせる一撃”があれば、局面は確実に変わっていただろう。その「あと一歩」が届かなかったことが、この試合の残酷さでもある。
試合後、元谷が自身のYouTubeで語った言葉と表情は、多くのファンの胸を打った。「ベストバウトと呼ばれる試合で負けた」その悔しさが、痛いほど伝わってきた。勝敗がつく以上、必ず勝者と敗者は生まれる。だが、この試合に限っては、心のどこかで「どちらも負けてほしくなかった」と思ってしまった。それほど、両者の覚悟が等価だった。
RIZIN8年目の扇久保博正と、RIZIN11年目の元谷友貴。若手が勢いを増し、世代交代が叫ばれる中で、この2人は真正面から殴り合い、「まだ終わっていない」ことを証明してみせた。古参と呼ばれる選手同士が、ここまで熱い試合を見せる――それ自体が、RIZINフライ級の層の厚さを物語っている。
元谷の口からは、「まだ諦めない」という言葉も聞かれた。だからこそ、今年どこかでのリマッチを期待したい気持ちが強く残る。この2人には、まだ役割がある。フライ級の若手が勢いよく駆け上がろうとする、その前に立ちはだかる“ラスボス”として。
扇久保博正と元谷友貴。
勝っても、負けても、価値が下がらない。そんな稀有な試合を、大晦日のリングに刻んでくれたことに、ただ感謝したい。
▼問題児ストライカー篠塚辰樹、冨澤大智とのMMAリマッチRIZIN大晦日