[週刊ファイト12月11日期間] [ファイトクラブ]公開中
▼幻のレスラー伝説を甦らせた翻訳出版『ローラン・ボック』の舞台裏
by Favorite Cafe 管理人
・ボック本「誰も出さないなら自分で出す!」 昭和プロレス者の執念
・訳者としての悩み “俺”か“私”か、ボックの一人称が人格を決める
・フィクションとノンフィクションの狭間で見える「ローラン・ボックの真実」
・「猪木との死闘、今も忘れない」80歳のボックから届いたメッセージ
・平積みに著者(訳者)感涙…幻のレスラー伝説が書店に甦った日
・昭和プロレスの記憶を、平成から令和の世代へ手渡すために
2025年9月、『ローラン・ボック』自伝の日本語版が、ついに刊行された。昭和プロレスの記憶に刻まれながらも長らく“幻のレスラー”とされてきた男の物語が、クラウドファンディングという形で蘇った。翻訳者は一人のプロレスファン。原書を手にした衝撃から始まり、翻訳と検証、広報活動までを一手に担い、支援者とともに出版を実現させた。翻訳者としての葛藤、言葉の選択、そしてボック氏本人からのメッセージ――そのすべてが詰まった、情熱と執念の記録を「週刊ファイト“2025年鷹の爪大賞”」として、訳者自身が自薦する。
ボック本「誰も出さないなら自分で出す!」 昭和プロレス者の執念
2021年、ドイツでローラン・ボックの自伝『BOCK!』が刊行されたというニュースを目にした。だが、日本語版発売の情報は一向に現れず、もどかしい思いを抱えたまま時間だけが過ぎていった。どうしても読みたい――その思いが募り、2023年秋、ついに原書をドイツのAmazonで取り寄せた。

届いた本は、写真も挿絵も一切ない、文字だけがぎっしり詰まった“魔法の書”のような一冊だった。学生時代にかじった程度のドイツ語力では不安もあったが、読み進めるうちにボックの壮絶な半生に引き込まれ、約2か月かけて読了。その熱量を、昭和プロレスを知るファンにどうしても伝えたくなり、私(訳者)自身のホームページで一部を紹介した。
1978年のアントニオ猪木の欧州遠征、’81〜’82年のボック来日――当時の報道と照らし合わせながら読むことで、プロレス史の裏側が立体的に浮かび上がってきた。もちろん、本人の口述をもとにした自伝ゆえ、誇張や脚色もあるだろう。しかし、当時のマスコミが伝えきれなかった事実が潜んでいる可能性もある。そうした視点で読むことで、より深い興味が湧いてくる。

日本語版の出版の可能性を探っている段階で出会ったのが出版社「サウザンブックス」だった。世界の書籍をクラウドファンディングで翻訳出版する同社に、ボック自伝の日本語版企画を提案した。ニッチな題材ゆえ、通常の出版社ではまず通らない企画だが、サウザンブックスは真摯に耳を傾けてくれた。

とはいえ、クラウドファンディングは資金が集まらなければ成立しない。広報・宣伝活動を自ら担う覚悟が問われた。「やれんのか?」と問われれば、「やりますよ!」と答える――それが猪木イズムだ。

2024年8月1日、クラウドファンディングがスタート。本誌『週刊ファイト』は8週連続でボック特集を組んでくれた。この専門メディアでの露出は、大いに追い風となった。スタートして最初の一週間の支援達成率が、プロジェクト成否のポイントとなる。その数字は目標にした30%には届かなかったが、25%という上々の滑り出しだった。

さらに、ドイツからローラン・ボック本人の応援メッセージが届いた。日本語版出版の実現は、原書刊行当初から彼自身が強く望んでいたという。その思いに応えるべく、プロジェクト成功への決意は一層強まった。
