[週刊ファイト11月13日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼ONE173:武尊 崖っぷちの再起戦へ―有明で賭ける“生き様”と魂の拳
(C)K-1/ONE公式 野村友梨乃
・ONEが日本で輝きを取り戻す鍵―それは「武尊の存在」だった
・ロッタン戦の悪夢から立ち上がる―骨折と敗戦を越えて
・“自分に厳しすぎる男”が迎える生き残りマッチ
・勝敗を超えた名勝負:レオナ・ペタス戦を振り返る
・那須川天心戦:勝たねばならぬ重圧―“武尊らしさ”を封じた世紀の一戦
・ONEデビュー戦:スーパーレックの壁に挑んだ武尊 痛みを超えた“闘魂の3R”
・拳で語る再出発―デニス・ピューリックとの真っ向勝負へ
▼ONE:172 Post Fight 惨敗の武尊 負傷していた 海人vs.グレゴリアン中止顛末・波紋
▼ONE KO勝利の武尊が対戦相手の母国洪水被害に寄付!
▼ONE FF武尊ラウェイ上昇選手にKO勝!日本2勝2敗 ソー・リン・ウー苦敗 スーパーボン勝
ONEが日本で輝きを取り戻す鍵―それは「武尊の存在」だった

2025年11月16日(日)、東京・有明アリーナにて、格闘技ファン待望のイベントである「ONE 173」が開催される。そこに出場するのが、K-1史上初の3階級制覇し、国内キックボクシングの頂点を極めた男、武尊だ。
実を言えば、ONEがここまで日本で注目を集めるようになったのは、決して偶然ではない。むしろ、私は「武尊がONEに転向したからこそ」という視点も強く持っている。
武尊が2023年からONEと契約し、世界のリングへと舞台を移した。この転向が、ONEにとっても、日本の格闘技界にとっても一つの潮目だった。つまり、ONEが日本で本気で存在感を示すための鍵を、ある意味「武尊」が握っていた、とさえ言えるのではないだろうか。「武尊がONEに来た」それ自体が、日本のファンにとって“見る価値”のある出来事だった。
ロッタン戦の悪夢から立ち上がる―骨折と敗戦を越えて

’25年04月03日期間Noah後楽園 武尊ONE散 DeepJewels MuayThaiOpen 高梨将弘 白川未奈
2025年3月に行われた、待望の元ONEフライ級ムエタイ王者ロッタンとの試合。結果は、わずか1ラウンド80秒でのKO負け――武尊の完敗だった。試合後、武尊は試合のわずか2週間前に体の2箇所を骨折していたことが明らかになった。そのニュースを耳にして、「追い込みすぎだ」と思ったファンも少なくなかっただろう。
ONEデビュー戦の頃から感じていたが、武尊のストイックさは、時に観ている側が心配になるほどだ。もちろん、不安やプレッシャーを打ち消すために、自分を限界まで追い込んで練習しているのだろう。だが、その過剰なまでの努力が、かえって最高のコンディションを損なう結果につながってしまうのではという懸念が、今回現実のものとなってしまった。
敗戦の反動で精神的な糸がぷつりと切れてしまうのではないか。そんな不安さえ感じさせるほど、彼のストイックさは危ういほどの強さと紙一重に見えた。それほどまでに、武尊という選手は“自分に厳しすぎる男”なのだ。
現在のONEでの戦績は1勝2敗。勝利こそあるものの、いまだビッグマッチでは未勝利という現実が突きつけられている。そして迎える11月16日、有明アリーナでの一戦は、武尊にとって“ONEでの生き残り”を懸けたまさに崖っぷちマッチとなる。
武尊本人が熱望しているロッタンとの再戦を実現させるためにも、この試合には絶対に勝たなければならない。勝てばリベンジへの道が開ける。だが、敗れればその扉は閉ざされるかもしれない――それほどまでに重い一戦だ。
今回の試合で期待したいのは、全盛期のように“バチバチの殴り合いを楽しむ武尊”の姿である。「ナチュラル・ボーンクラッシャー」――闘争本能むき出しの武尊本来のファイトスタイルこそが、観る者を熱狂させ、心を震わせる。あの頃のように、攻めて攻めて、拳で語る武尊の姿を見たい。
“自分に厳しすぎる男”が迎える生き残りマッチ

ただ勝つことだけが、武尊の魅力ではない。どれだけ観客を魅了し、心を震わせる試合を見せられるか、それこそが彼の真価だ。
これまでに積み重ねてきた49戦、その一つひとつにドラマがあり、私たちは幾度となく感動をもらってきた。その中でも、とりわけ“勝敗を超えて心に残った”試合を振り返りながら、武尊という格闘家の魅力に迫りたい。