[週刊ファイト6月26日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼みぶ真也コラム『ローマの格闘士 ブルーノ・サンマルチノ』
・何故、あのバックブリーカーが“イタリアン”ではなく“カナディアン”か?
・闘いの基本は力比べ ブルーノは聖書に登場する怪力サムソンの再来
・サンマルチノ全盛期に重ねて チャールトン・ヘストンとブルーノの律儀
何故、あのバックブリーカーが“イタリアン”ではなく“カナディアン”か?
▼追悼・ブルーノ・サンマルチノ ロールスロイスを乗り換え続けたプロレス貴族
ぼくが最初にサンマルチノをTVで見たのは1967年、十歳の時。
以来ファンとしていろんな情報を集めたのだが、何故、サンマルチノのあのバックブリーカーが“イタリアン”ではなく“カナディアン”と呼ばれるのか、そのルーツがユーコン・エリックにあるのを知ったのは随分時が経ってからだった。
気は優しくて力持ちのカナダの木こりの背骨折りをイタリア系のサンマルチノが使うと、たちまちローマの格闘士の必殺技になる。
ロシア系ハッケンシュミットのベアハッグも、サンマルチノの手にかかるとコロセウムで猛獣を絞め殺す闘奴の姿に見えて来るのだ。
技のバリエーションが少ない怪力レスラーというのはこういった国民性や神話に支えられて魅力を発揮するもので、同じようなスタイルで日本人が闘うと手力男命(たぢからおのみこと)や金太郎風になる。気は優しくて力持ち、博打好きが玉に瑕の怪力豊登とか・・・。
闘いの基本は力比べ ブルーノは聖書に登場する怪力サムソンの再来
▼[Fightドキュメンタリー劇場 44] 井上義啓の喫茶店トーク
新日ブルーノ・サンマルチノ戦実現なのか? 1978年のアントニオ猪木
サンマルチノというのは、テクニック面で言えば地味なレスラーだ。得意技のマシンガンキックにしても、MSGの先輩ヒーロー=アントニオ・ロッカのような華麗なハイキックではなくストンピングだし、パンチもゆっくりした重いスイングパンチ。
唯一見せ技要素のあるカナディアン・バックブリーカー、あのバディ・ロジャースを秒殺した技も後年は腰を痛めて使用しなくなった。他の怪力レスラーが良く見せるようなジャイアント・スイングもやらない。
あくまで闘いの基本は力比べ。あの筋肉の塊がヘッドロックやフルネルソンでぐいぐい締め上げるだけで説得力があった。
それだけに、あれだけの人気レスラーながら同タイプの後継者が見つからない。
例えば“人間発電所2世”とされて期待させたのはギリシア系のスパイロス・アリオンだ。国際プロレスの「来日させたい外人レスラー」ファン投票第一位のレスラーながら、マスカラスと共に日プロのシリーズに持って行かれたのは有名なエピソード。
ストロング小林対アリオン、マイティ井上対マスカラスを期待していたぼくはがっかりしたものだ。
サンマルチノが聖書に登場する怪力サムソンの再来なら、アリオンはギリシア神話のヘラクレス現代版、と勝手に妄想していたのだが・・・。
実際マットに上がったアリオンは普通の二枚目レスラー、人気も期待値二位だったマスカラスに及ばなかった。
他にもドン・デヌーチ、ラリー・ズビスコなどサンマルチノの息がかかったレスラー達がサンマルチノ・タイプになれなかったのは、やはり彼の唯一無二の肉体の説得力に及ばなかったということだろう。
実際、その後の怪力レスラーの系譜はスーパースター・ビリー・グラハムを初めとするボディビルダーのステロイド型に変容していく。
サンマルチノさんとドン・デヌーチさん