”日本マット界透明化”課題から斬る! それでも名作『アイアンクロー』

■ 映画 アイアンクロー
公開:4月5日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
(c) 2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.


 アイアンクローがようやく日本で公開される。プロレス映画としてのみならず、家族のメロドラマとしての完成度も高く欧米での評価も高い。

 本誌はすでにレビューが出ているので本稿では繰り返さない。監督のショーン・ダーキンは、呪われたエリック家を「ギリシャ悲劇のようだと思った」と語っている。
『マーサ、あるいはマーシー・メイ』 Martha Marcy May Marlene (2011)
『不都合な理想の夫婦』The Nest (2020) 主演ジュード・ロウ キャリー・クーン

 そんな傑作にも粗はある。先のアカデミー授賞式でのキー・ホイ・クァンとミシェル・ヨーに対するロバート・ダウニー・Jrやジェニファー・ローレンスらの振舞いで一気に火が付いた「アジア人透明化」問題がここにもあった。ここで論じたいのは具体的には「日本マット界透明化」である。

 日本人のプロレスファンなら誰もが不満を抱くのではないか。フリッツ・フォン・エリックが三男デヴィッド急逝の報を伝えるシーンだ。あまりにも短く、扱いが軽い。「最初の犠牲者」であるにもかかわらず。

 そもそもタダシ☆タナカの著作を読むまでもなく、当時は日本が世界一の黄金マーケット。その地に呼ばれたデヴィッドは選ばれし者であり、更にはベルトまで巻かせてもらっているのである。
 そうした背景を盛り込めなかった制作陣には失望を超え反感すら憶えた。プロなら台詞一行で伝えられるだろう。ついでに天国のデヴィッドにも失礼だ。

 小道具のチョイスも酷い。次男ケヴィン(映画では主人公)が手に取ったデヴィッドからの絵葉書。日本と中国とミャンマーの区別もつかず、アジア人に対するマイクロアグレッションがあの一枚に可視化されている。

 僅かながらも「救い」を描いた感動のラストシーン、だからこそエンドロールで二人の息子の日本デビュー時の写真を見たかった。故意に手を抜いているのかとすら思える。


 それでもこれは名作である。『王者のためのアリア』原題Aria dila allety (1979)と並ぶプロレス映画と言っていい気もする。週刊ファイト読者は必見です!!

by 梅崎一郎(在アムステルダム)


※月額999円ファイトクラブで読む
▼タンパMLWジャナイ・カイ-ウナギ・サヤカ 藤田晃生War Chamber小島聡

[ファイトクラブ]タンパMLWジャナイ・カイ-ウナギ・サヤカ 藤田晃生War Chamber小島聡

▼Aコープランド「AEW最高職場」 WオスプレイPホッブス Swerve血判

[ファイトクラブ]Aコープランド「AEW最高職場」 WオスプレイPホッブス Swerve血判

▼Rock暴れる今週の肝 スターダム月末 ゼンニチ開花宣言 ノア黒魔術

[ファイトクラブ]Rock暴れる今週の肝 スターダム月末 ゼンニチ開花宣言 ノア黒魔術

※600円電子書籍e-bookで読む(カード決済ダウンロード即刻)
’24年04月11日号UJPW 全日大田区 仙台スターダム山形 東女両国 MLWタンパ Rカーマン