11・12DDT両国国技館ビッグマッチ・『ULTIMATE PARTY』まで約1ヶ月半となった。9・24後楽園ホール大会では、主要決定カードからビッグマッチの概要が判明した大会でもあった。2019年以来となる『ULTIMATE PARTY』という大会名は、DDTグループのオールスター戦からDDT本隊の力を示す方向にシフトしたと言えるのではないか? 9・24後楽園ホール大会の全試合レビューから両国ビッグマッチを読み解いていきたい。
[週刊ファイト10月5日号]収録 [ファイトクラブ]公開中
▼両国国技館『竹下幸之介-クリス・ジェリコ』正式決定! DDT後楽園詳報
photo & text by 鈴木太郎
・対外的に響く『竹下幸之介vs.クリス・ジェリコ』
・DDTグループ⇒DDT単独で魅せる『ULTIMATE PARTY』
・赤井沙希最初で最後の無差別級王座挑戦善戦もTKOで幕
・悔やまれるシングル王座戦の経験値
・TAKESHITAがMAO撃破! 両国でクリス・ジェリコと一騎打ちへ
・マット・カルドナに大ブーイングも伊藤麻希突破UNIVERSAL王座V1
・AJPW-DDT対抗戦も上野勇希無差別級王座挑戦の養分に終わる
・【主役は小嶋斗偉】と思われた試合も・・・
・火野裕士DDT一区切り8人タッグ納谷幸男バックドロップ大石真翔撃破
・解散前聖地ラストも平常運転フェロモンズ男色ディーノ&飯野sexy雄貴
・『DAMNATION T.A.-若手』6人タッグ佐々木大輔が夢虹下す
・若手選手躍動も付いていけない岡田佑介急ブレーキ
■DDTプロレスリング 『Who’s Gonna TOP? 2023』
■日時:2023年9月24日(日) 11:30開始
■会場:東京・後楽園ホール
■観衆:917人
11・12に両国国技館でのビッグマッチ・『ULTIMATE PARTY』を開催するDDTプロレスリング。約1ヶ月後に控えている同大会を前に、9・24後楽園ホール大会ではビッグマッチの中核を担うカードが出揃い始めた。
この日行われたKO-D無差別級王座戦で赤井沙希に勝利して2度目の王座防衛に成功したクリス・ブルックスの前に現れたのは、現在NHK Eテレで放送されている『天才てれびくん』にレギュラー出演中の上野勇希だった。DDTのエース候補生・上野は、クリスの持つ無差別級王座に挑戦を表明したことで、両国ビッグマッチでの両者の対戦が決定したのである。
▼電流爆破+4大王座戦もビッグマッチ感皆無なDDT大田区総括
▼Dキャリス現トップ・ヒール&竹下幸之助Sゲバラ-Cジェリコ10・1WDへ
ただ、それ以上に話題を拐っていったのは、クリス・ジェリコの両国大会参戦発表だろう。セミファイナルでMAOとのシングルマッチに勝利したKONOSUKE TAKESHITA(竹下幸之介)は、AEWを席巻しているユニット『ドン・キャリス・ファミリー』を率いるドン・キャリスをDDTファンに紹介して、海外での活躍ぶりをアピールしたのだが、そのタイミングでクリス・ジェリコの映像メッセージが流れたのだ。このサプライズに会場からは今大会一番のどよめきが起きた。
それもそのはず、新型コロナウイルス禍以降では初となる大物の来日が、前回来日時に参戦していた新日本プロレスではなく、DDTマットで実現したのだから。DDTもタッグマッチという形で茶を濁すことなく、『TAKESHITA(以下:竹下)vsジェリコ』のスペシャルシングルマッチを真っ向から組んできた事で、両国ビッグマッチの彩りと話題性を強化してきたと言えよう。この他にも、DDT UNIVERSAL王者のマット・カルドナにMAOが挑戦表明したことで、奇しくも(袂を分かった竹下も含めて)The 37 KAMINAの面々が両国の主要シングルに名を連ねることとなった。
両国大会に『ULTIMATE PARTY』の名前が冠されたのは、2019年11月以来4年ぶりのことになる。この時は、DDTプロレスリング、東京女子プロレス、ガンバレ☆プロレス、プロレスリングBASARAのDDTグループ4団体(当時)が一同に集結して各団体が管理する王座戦が1大会で実現。【DDTオールスター戦】とも言うべき陣容を揃えつつも、新日本プロレス退団後初となる日本国内参戦となったケニー・オメガをゲストに迎えるなど、DDT両国の中でも一際豪華さが目立つ大会となった。
しかし、4年ぶりの『ULTIMATE PARTY』は、クリス・ジェリコや高橋ヒロムといった豪華ゲストを呼びながらも、あくまでも軸はDDT本隊にある事が主要カードから明確となった。この4年間で、東京女子プロレスやガンバレ☆プロレスが後楽園ホール以上の会場規模でビックマッチを開催できるようになった事も大きいのだろうが、似たような趣旨で行われていた『サイバーファイトフェスティバル』が2023年に不開催となった事で、前回同様にグループ内の垣根を超えるカードが組まれると筆者は予想していただけに驚きを隠せない。
超大物のクリス・ジェリコ参戦を実現させたのは、竹下の活躍と実績の賜物に他ならない。あれは2020~2021年頃だろうか? クリス・ブルックスとの無差別級王座戦が実現した際に「飯伏幸太vs.ケニー・オメガに匹敵する試合」と自ら豪語したものの対外的に響かず、裸の王様状態でダダ滑りだった様子を思えば、DDT外のプロレスファンにも訴求力のあるカードを提示できるようになったのは竹下の成長だろう。DDTにとって今回のジェリコは、2019年秋の両国大会に参戦したケニー・オメガ以来となる海外の超人気大物参戦と言えるが、この時の両国が勝敗に当たり障りのないタッグマッチ(『ケニー・オメガ&里歩vs.アントーニオ本田&山下実優』)だった事を考えれば、勝負論のあるカードが実現したのは興味深い。決戦まで約1ヶ月半、両国ビッグマッチの概要が見えてきた後楽園ホール大会であった。
赤井沙希最初で最後の無差別級王座挑戦善戦もTKOで幕
<メインイベント 60分一本勝負 KO-D無差別級選手権試合>
【王者】○クリス・ブルックス
(21分0秒 変形オクトパスストレッチ⇒レフェリーストップによるTKO)
【挑戦者】●赤井沙希
※第81代王者が2度目の防衛に成功。
11・12両国国技館大会での引退を表明している赤井にとって、最初で最後となるKO-D無差別級王座挑戦は、2011年5月にEXTREME王座&アイアンマンヘビーメタル王座のダブルタイトルマッチで対戦するも無観客会場での激突となったクリス・ブルックスであった。
試合開始直後、王者に奇襲を仕掛ける赤井であったが、中盤以降はクリスに制圧される時間帯が目立ったか。終盤に入ると赤井も必殺技のケツァル・コアトルを雪崩式と正調の2パターンで決めるなど反撃攻勢へ入るが、最後はクリスがプレイングマンティスボムから変型オクトパスストレッチでレフェリーストップ勝利を収めた。
自らギブアップしなかったことで意地を見せた赤井だったが、素晴らしい試合であった一方、今回のような無差別級挑戦に代表されるシングル王座挑戦の機会を現役のうちに多く実現してほしかったのが、筆者の率直な感想である。何故ならばシングル王座戦での経験値不足を、ミックスドマッチという点を抜きにしても感じてしまったのが惜しまれるからだ。
TAKESHITAがMAO撃破! 11・12両国でクリス・ジェリコと一騎打ちへ
<セミファイナル 30分一本勝負 スペシャルシングルマッチ>
○KONOSUKE TAKESHITA
(11分28秒 ワガママ⇒体固め)
●MAO
『The 37 KAMINA』で行動を共にするも袂を分かっていた竹下とMAOがシングルマッチで激突。階級差がありながら飛び技とテクニカルな動きでカバーするMAOであったが、竹下の持つ圧倒的パワーの前に敗戦。しかし、試合後に竹下から「お前のプロレス、絶対世界に通用すると思うよ。自分の道は自分で進め。自分で決めろ。」と言われたMAOは、すぐさまバックステージに向かうと、待ち構えていた現UNIVERSAL王者のマット・カルドナに挑戦を表明。11・12両国での王座戦が決定したのだった。
その直後に、ビデオメッセージでクリス・ジェリコがDDT参戦をアピールすると、竹下もこれに呼応。会場中がどよめく中、両国での『竹下vs.クリス・ジェリコ』も決定したのである。