[ファイトクラブ]GW裏興行犇めく中でも盛り上がり絶えぬNOAH両国国技館の肝は・・・

 約1年振りに開催された、プロレスリング・ノアの両国国技館ビッグマッチ。
 ダークマッチ2試合を含む全14試合・計5時間30分に及んだ大ボリュームとなった興行は、同時間帯に裏興行が複数重なった中でも、約3,000人の動員をマークする盛り上がりを見せた。
 本記事では、最近のノアの会場で起きている異様な盛り上がりと、潮崎豪復帰戦、メインのGHCヘビー級王座戦にフォーカスしていく。


[週刊ファイト5月18日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼GW裏興行犇めく中でも盛り上がり絶えぬNOAH両国国技館の肝は・・・
 photo & text by 鈴木太郎
・裏興行被るも1日あたり動員は前年より増加
・当日券売り場に伸びる長蛇の列
・武藤敬司引退後も大健闘の方舟
・盛り上がり要因はリングアナとジェイク・リーにあり?
・今年に入って急に増えた声援
・丸藤正道腐らぬ技術の総決算及ばずジェイク・リーGHCヘビーV2!
・【ジェイクが丸藤の技を受ける】異例の展開。
・ジェイクの圧倒的観客支持率
・外敵でも侵略者でもなく、航海を共にする同士
・対角線は…復帰戦・潮崎豪と中嶋勝彦AXIZ約2年8ヶ月振り電撃合体
・I am NOAHなのか? 万全とは程遠い復帰初戦
・【AXIZ再結成】というトップコンディションへの道程
・AXIZ解散後、定着率が悪いタッグ王座戦線
・タッグ王座戦線の起爆剤はAXIZ


■プロレスリング・ノア『ABEMA presents MAJESTIC 2023』
■日時:2023年5月4日(木・祝) 17:00
■会場:東京・両国国技館
■観衆:2,721人

 大会前の長蛇の列と、大会後の出入り口に溢れる人波を見て、筆者は目を疑った。

 2023・5・4プロレスリング・ノア両国国技館大会。2022年4月の2days以来となったノア両国だったが、この日は同時間帯に注目興行が重なる大興行戦争でもあった。
 大日本プロレスは年間最大ビッグマッチの横浜武道館大会で座席追加販売の盛況ぶり(観衆:1,828人)で、全日本プロレスは『チャンピオン・カーニバル』最終公式戦(観衆:832人)。ゴールデンウィーク中とはいえ、ここまで客層が重なりそうな興行同士が被る様も中々見かけない。
 それ故、ノア両国にどれだけ人が駆けつけるのか、一ファンとしても不安はあったのだが、大会前の行列を見て不安は杞憂へと変わった。聞くところによると、当日券販売に並ぶ列もかなり伸びていたらしい。
 結果として、ノア両国は観衆:2,721人をマークした。昨年の2daysとは異なり、片面を潰して升席も減らしたステージプランだったとはいえ、2022・4・29は1,585人、同年4・30が2,077人。両日足を運んだ人がいた可能性を考えれば、1日に訪れた人数は前年より増えているのではないだろうか?

 しかも、今年2月に武藤敬司が引退してしまった後の話である。
 正直なところ、武藤引退後は多少なり動員の落ち込みが避けられないだろうと筆者は感じていた。しかし、3月の横浜武道館、4月のゼビオアリーナ仙台、今回の5月両国国技館と、武藤引退前に発表されていた3ヶ月連続のビッグマッチは、いずれも満員では無かったものの、大健闘を見せたと言っても良いだろう。

▼横浜武道館に吹き荒れた春一番!ジェイク・リーGHCヘビー王座戴冠

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▼皆虜となる方舟中心に立つジェイク・リー仙台ビッグマッチ1,000+動員

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 ビッグマッチの合間に行われる各会場の盛り上がりも凄まじいものがある。
 ノアの試合開始前にお馴染みとなったファンキー加藤の『VOYAGE』が流れると、最後のサビで巻き起こる拍手は以前に比べて大きくなり、外国人リングアナのG-manが日本語で会場を盛り上げる姿に場内は熱狂する。そこから行われる試合は、今年1月より本格的に解禁された声出し応援も相まって盛り上がりが最後まで持続している。
 そのような光景が武藤引退後に展開されているという事実は決して見逃せない。ノアで久しぶりに声出しが解禁された2022年10月以降、中々客席から声援が出てこなかったし、何なら今年の1月までこういう感じではなかったように筆者は記憶している。

 その光景を変えたのは果たして何なのか?
 要因はいくつもあるだろうが、間違いなく言えることが筆者には1つある。ジェイク・リーのノアマット参戦だ。

 ジェイク・リー参戦は、ノアに新たなる変化をもたらした。彼の固定ファンがノアの会場に足を運ぶようになっただけではなく、ファンがジェイクを応援することで、既存のノアファンも負けないくらい所属選手を応援するようになり、結果として今の盛り上がりを生み出す要因となった。
 声出し解禁後も声が出ていなかったノアの会場に、積極的な声を戻した1人と言っても過言ではないだろう。何せ、2023年1月にジェイクが参戦した当初、まだまだ会場全体の声援が多い方ではなかったのだから。

丸藤正道腐らぬ技術の総決算及ばずジェイク・リーGHCヘビーV2!

 メインイベントでは、『ジェイク・リーvs丸藤正道』によるGHCヘビー級王座戦が実現した。

 挑戦表明時、「お前が舵を取ると船酔いしちまいそうなんだ。俺が本当の舵の取り方を教えてやる」と言い放った丸藤だったが、試合は終始丸藤が試合の流れを掌握する展開となった。
 GHCヘビー級王座を奪取した清宮海斗戦も、初防衛に成功した中嶋勝彦戦も、ジェイクがシンプルな技から試合の流れを握って制圧する内容だったが、今回の丸藤戦は一転して、ジェイクが殆ど丸藤の技を受ける真逆の展開に。

 ジェイクが制圧する前に丸藤が先を取って、相手に流れを作らせなかった事も大きかったのかもしれないが、一方でジェイクが敢えて技を受け続けているフシも感じられた。
 丸藤が圧倒しているように見えて、一発で試合が変わりかねない緊迫感は絶えず続く。この異様な不安は、武藤敬司の試合に感じていた事でもある。これは、一発で試合の流れを変えてしまう恐ろしさを、ジェイクが携えていたことに他ならない。

 丸藤は全てを出してこの試合に臨んだ。
 逆水平チョップ、コーナーtoコーナーへのドロップキック、パーフェクトキーロック、不知火、虎王と、ポールシフト式エメラルド・フロウジョンを除けば得意としている技は大体出てきた印象を受ける。
 それを引かずに受け続けたジェイクも、再三カウント3を迫られるも回避。

 最終盤、ジェイクがハイキックからバックドロップを立て続けに決めると、最後はコーナーへの串刺し式フロントハイキックで丸藤の顔面を貫いて勝利。2度目の王座防衛を果たした。

 試合後、ジェイクが口にしたのは丸藤へのリスペクトであった。

 「丸藤正道選手、アンタは腐ってなんかねえよ! アンタが遺したものも腐らねえんだよ!」

 挑戦表明で丸藤が言った「腐っても丸藤だ」に対するジェイクの回答に、沸き立つ場内の拍手。
 そして、場内に起こるジェイクへの拍手に対し、客席へ「プロレス見て、元気貰えるだろ!?」と叫ぶジェイク。この光景と圧倒的客席支持率を見て、最早彼は外敵でも侵略者でもなく、航海を共にする同士なのだと筆者は確信したのである。

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