[ファイトクラブ]横浜武道館に吹き荒れた春一番!ジェイク・リーGHCヘビー王座戴冠

 武藤敬司引退後初となった2023・3・19プロレスリング・ノア横浜武道館大会は、話題性に富む春一番が吹き荒れた。
 ノアが勝負をかけたメインのGHCヘビー級王座戦・『清宮海斗vs.ジェイク・リー』では、ジェイクがノアマット参戦僅か2ヶ月半で最高峰王座を奪取という波乱も、外敵の制覇が歓迎される新風も感じられた大会は、”アフター武藤”の序章を刻むにはインパクト充分だった。


[週刊ファイト3月30日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼横浜武道館に吹き荒れた春一番!ジェイク・リーGHCヘビー王座戴冠
 photo & text by 鈴木太郎
・外敵戴冠というトピックを経て更に加速する『令和GHC新章』
・シンプルにして至高の技応酬光った『矢野安崇vs.小澤大嗣』
・小峠篤司が本隊-金剛ジュニア戦制すもYO-HEY&タダスケ共闘の波乱
・顎骨折⇒再起・岡田欣也、中嶋勝彦猛追もバーティカルスパイクに散る
・初サクソン・ハックスリー、豪快ネックハンギングボム粉砕モハメド・ヨネ
・谷口周平気迫のサッカーボールキックで前タッグ王者・杉浦貴撃破!
・ジャック・モリス、イホ・デ・ドクトル・ワグナーJr.下しナショナル王座照準
・タッグながらランセロットがAMAKUSA 撃破!GHC Jrヘビー級挑戦へ
・稲葉大樹&マサ北宮が征矢学下して金剛【GHC世界タッグ】の夢潰える
・HAYATAら熱戦Jr.タッグ王座戦も随所で感じた【小川プロレス】の弊害
・ジェイク・リー【独特なリズムと間のギャップ】清宮海斗とのGHC戦制す


■プロレスリング・ノア 『GREAT VOYAGE 2023 in YOKOHAMA』
■日時:2023年3月19日(日) 16:00開始
■会場:神奈川・横浜武道館
■観衆:1,308人(主催者発表)

 2023・2・21東京ドーム大会後、初となったノアのビッグマッチ。
 この間、武藤敬司、NOSAWA論外、原田大輔といった主力選手が相次いで引退。2023年1月よりノアマットに参戦しているジェイク・リーが、満を持してGHCヘビー級王座に挑戦した事もあり、”アフター武藤”1発目のビッグマッチとしては話題性に富んだ大会となった。

 この日は、ノア横浜武道館で定着しつつあった【メインのGHCタッグ王座戦】をセミ前に移し、メインには、2020年11月の横浜武道館初上陸以来となるGHCヘビー級王座戦を配置。
 勝負をかけた大会は、1席空けながら過去の横浜武道館ビッグマッチと比べても、動員は増えている印象を受けた。

 試合に関しては、アンダーカード~王座戦前の7試合で、ユニットの選手移動や、この日組まれなかった王座戦の次回展望を見せる形に。終盤の3大GHC王座戦は、いずれも盤石な内容でビッグマッチを彩ってみせた。
 ただ、Jr.タッグ王座戦やメインのヘビーに関しては、「もう少し深掘りしても面白かったのではないか」という思いもあるが・・・。

 中でも、メインの『清宮海斗vs.ジェイク・リー』は、ジェイクが生み出す独特の韻律が、最後まで試合を支配していた。これは、武藤敬司が試合で奏でるフレーズとは、全く異なるものに感じられた。技数を絞りシンプルでありつつも、持ち前のデカさと緩急で試合を組み立てる様は、もはや芸術の域に達していた。
 清宮がダメだったという訳では決してない。ジェイクの手綱を緩めぬ攻撃にも対処し、反撃の構図も見せていた。ただ、【ジェイクが負けるビジョンが、この試合で描けなかった】という差。この1点に尽きる。

 ジェイクのノアマット侵攻~王座奪取までのスピード感は、2015年の鈴木みのるを彷彿とさせるものを感じたが、ジェイクの場合はノアマット初参戦での達成。単なるタッグマッチでも、王座獲りに向けた布石は1月時点から打たれ、動き出していた。満を持してのGHCヘビー挑戦にも唐突さは無し。非常に強い納得感を残して、ベルトを奪っていったのである。

 そんなジェイクに真っ先に挑戦表明したのは、中嶋勝彦。「お前に本物のNOAHを見せる。」と宣言した中嶋の舞台は、4・16ゼビオアリーナ仙台。
 初進出となる同会場では、『ジェイク・リーvs.中嶋勝彦』を含め、今回同様に3大GHC王座戦が決定。NOAHの仙台大会では過去最多の王座戦となる。

 アフター武藤という課題が懸念されるNOAHにあって、ジェイク・リーの存在は救世主か、それとも悪魔か…?
 動き出した方舟新時代の舵は止まらない。2月大阪ビッグマッチで使われた『令和GHC新章』は、外敵戴冠というトピックを経て、更に加速していく事だろう。

シンプルにして至高の技応酬光った『矢野安崇vs.小澤大嗣』

<第1試合 シングルマッチ>
○矢野安崇
(4分56秒 飛びつき前方回転エビ固め)
●小澤大嗣

 今年の元日でも印象的だったシングルマッチ。双方キャリアは浅く、使うのはシンプルな技だけなのに、動きにダイナミックさが出るのは素晴らしい。
 最後に矢野が決めた前方回転エビ固めも、勢いがついたことで、フィニッシャーとしての説得力も担保されていた。

小峠篤司が本隊-金剛ジュニア戦制すもYO-HEY&タダスケ共闘の波乱

<第2試合 8人タッグマッチ>
○小峠篤司 YO-HEY 吉岡世起 アレハンドロ
(5分00秒 横入り式エビ固め)
近藤修司 ●タダスケ 大原はじめ Hi69

 Jr.8人タッグマッチ。
 原田大輔という大黒柱の引退があった本隊と、3・9後楽園ホールでJr.ヘビーを獲れなかった金剛による仕切り直しの試合は、タダスケと近藤の誤爆から、最後は小峠がタダスケを丸め込んで決着。

 試合後、近藤達と不穏な空気になるタダスケに、手を差しのべたYO-HEY。
 2人は金剛メンバーに攻撃を加え、タダスケの正規軍加入かと思われるも、2人は本隊メンバーにも攻撃。かくして、タダスケとYO-HEYが2020年8月以来となる合体を果たしたのである。

 その後、メインイベントでジェイク・リーのセコンドに就いたことで、ジェイクが率いる『Good Looking Guys』への加入が明らかに。
 『PERROS DEL MAL DE JAPON』解散、NOSAWA論外と原田大輔引退で動きが見られたノアJr.において、久々に名物とも言うべきユニット改選が実現したのである。

顎骨折⇒再起・岡田欣也、中嶋勝彦猛追もバーティカルスパイクに散る

<第3試合 シングルマッチ>
○中嶋勝彦
(5分48秒 ヴァーティカルスパイク⇒体固め)
●岡田欣也

 2022年8月、『N-1 VICTORY』公式戦で組まれたカードの再戦。
 この公式戦で顎を骨折し、長期欠場に至った岡田にとって、リベンジの構図もあった試合は、序盤から岡田が躊躇なく仕掛ける。

 この積極性に加え、試合では【顎を骨折させられたサッカーボールキック】を巡る攻防がフックになっていた。不謹慎かもしれないが、このサッカーボールキックを躱したり、喰らっても返したりする岡田の姿に成長を感じられたのである。
 最後は中嶋が勝利したものの、試合後のTwitterでは「魂こもった良い蹴りだった」と岡田を評価。この一戦を、最前線に出る契機としたいところだ。

初サクソン・ハックスリー、豪快ネックハンギングボム粉砕モハメド・ヨネ

<第4試合 タッグマッチ>
鈴木秀樹 ○サクソン・ハックスリー
(7分55秒 ネックハンギングボム⇒エビ固め)
●モハメド ヨネ 稲村愛輝

 サクソン・ハックスリーのノアマット初登場となった試合。
 御披露目マッチの側面はありながらも、入場した瞬間「日本で人気出そう」と思わせる豪快な風貌と長身は、ブルーザー・ブロディを彷彿とさせるものがあった。

 ヨネに決めたネックハンギングボムも、長身というアドバンテージを活かし、高層階から投げつけるようなインパクトを担保。
 鈴木とのタッグは【猛獣と猛獣使い】のような独立した関係性にも見えたが、この男が杉浦軍にハマると面白そうではある。楽しみな存在だ。

谷口周平気迫のサッカーボールキックで前タッグ王者・杉浦貴撃破!

<第5試合 シングルマッチ>
●杉浦貴
(11分43秒 顔面蹴り⇒片エビ固め)
○谷口周平

 杉浦と谷口のシングルマッチ。
 半ば唐突に組まれた感があり、正直試合に対する意味を見出だしづらいものがあった。とはいえ、谷口のガツガツした姿が序盤のエルボーで見えたのは好材料だったと思う。

 藤田和之とシングルで熱戦を産み出していた、2019年~2020年頃に多用した側頭部へのサッカーボールキックも効果的。攻撃への躊躇から動きが止まる場面もあったとはいえ、迷いなく攻める姿が谷口には合っている。それを成立させるガタイの良さは今でも強みなのだから。

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