■プロレスリング・ノア 『SUNNY VOYAGE 2023』
日時：2023年1月15日（日）
会場：ふじさんめっせ 観衆：380人（満員）
「ちゃんとチケット買ってきたのかよ！おい、ノア！勝手にこいつら入って来たんじゃねえか？5席も空いてねえぞ？」
大会終了後にも関わらず、拳王の怒声が響き渡る会場内。
ふじさんめっせは騒然とした空気に包まれた。
1・21横浜アリーナで行われる、新日本プロレス(以下：新日)とプロレスリング・ノア(以下:ノア)による対抗戦。
新日の『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』とノアの『金剛』による5大シングルマッチを前に、拳王が内藤哲也に富士大会へ来場するよう呼び掛けていたのだが、当日の大会後、内藤を筆頭にロスインゴの日本人メンバー全員が会場内に姿を現したのである。
ノア公式YouTubeチャンネルでこの様子が投稿されるや否や、約3日で再生回数40万回近くを叩き出す反響を生み、対抗戦への機運をより強く高める事となった。
しかし、個人的に今大会を語る上で、どうしても外せない事がある。
最後の”大事件”だけで終わらない満足感が、この日の富士大会にはあったからだ。
地方大会でも、全体的に高い満足度
新幹線しか停車しない新富士駅が最寄りの『ふじさんめっせ』
都内からでも日帰り可能な会場とはいえ、この日は日曜の16時に試合が開始。
にもかかわらず、大サイン会効果もあってか、会場内は超満員。
前述した拳王の「5席も空いてねえぞ」という発言は、決してハッタリではなかった。
試合前後には『新春大サイン会』と称して参戦全選手によるサイン会&撮影会が設けられ、開場時間が押すほどの盛況ぶり。
ロスインゴの来場も、試合後の金剛サイン会に現れた事で実現に至ったのである。
そして、肝心要の試合に関しても、大いに盛り上がった。
オープニングマッチの『矢野安崇vs小峠篤司』、2試合目の『モハメド・ヨネ&齋藤彰俊vsマサ北宮&稲村愛輝』で場内の熱気は高まり、中盤以降は2月シリーズに組まれた王座戦の前哨戦へ。
対抗戦を控えているものの、あくまでも見据えているのは団体内での闘い。
中でも、GHCタッグ王座戦（『小島聡&杉浦貴vsマサ北宮&稲葉大樹』）の前哨戦で実現した、『杉浦貴vs稲葉大樹』のシングルマッチは出色の内容だった。
最初は杉浦に押され気味な稲葉だったが、中盤以降は杉浦を攻め立てるなど、積極果敢な姿勢の良さが発揮されていた。
GHCヘビー級王座戦・『清宮海斗vsジャック・モリス』の前哨戦も、今大会よりスタート。
ただ、モリスのサポートに回りつつ、前哨戦を喰らう存在感を見せつけたジェイク・リーが実に不気味。
声出し応援禁止の会場では初のNOAH参戦ではあったが、それでも観客の反応を掴む能力はピカイチだった。
メインイベントは、金剛vs.NOAH本隊の10人タッグマッチ。
入場時から客席を見やり、内藤の姿を探していた拳王だったが、試合になると本隊を圧倒する攻めっぷりを披露。
前哨戦要素のない多人数タッグマッチではあったものの、最後は大原はじめがダンテ・レオンから勝利し、1・21の対抗戦に弾みをつける結果となった。
時間がない
今のノアには、時間がない。
2・21東京ドーム大会をもって、武藤敬司、NOSAWA論外が引退。
2選手の引退は、知名度、集客力、コネクションの面で、ノアにも少なからず影響があるだろう。
泣いても笑っても約1ヶ月で引退を迎える現状だからこそ、一ファンの筆者としても武藤引退後が怖い。
ただ、その現状を踏まえた上で、一人でも多くの人に存在を知って貰うべく動いているノアの姿勢は正しいと、私は感じている。
最近はテレビ番組や女性誌の企画に登場している清宮海斗だったり、元日の『グレート・ムタvsシンスケ・ナカムラ』、『清宮vs拳王』の試合順だったり、今を1人でも多く知られるための手段を惜しまない。
今回の対抗戦も、前年の盛り上がりに並ぶ熱気を感じている。
ロスインゴ来場に対する反響の大きさは、今のノアを知ってもらえるチャンスでもある。
金剛しかり、オカダ・カズチカと再戦する清宮しかり、エル・デスペラードとシングルで激突するYO-HEYしかり、2023年の対抗戦は元日以上に、他の方に今のノアを知ってもらえる可能性がある。
先述したロスインゴ来場の際、鷹木信悟は【おもてなし】というフレーズを用いていた。
ロスインゴと金剛-ひいては新日とノアによるプロレスファンへの【おもてなし】が、1・21では見られる事だろう。
個人的に今回の対抗戦は、ノアにとって勝敗だけではなく、【観客を持って帰れるかどうか】という商機ではないだろうか？
2月に迫るビッグイベントを前に、この商機を逃してはならない。
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