[週刊ファイト8月4日号]収録 [ファイトクラブ]公開中
▼桑田佳祐のプロレスLOVEは奥が深い!
photo & text by 西尾智幸
・国民的バンドのボーカルの一番長く続く趣味はプロレス観戦
・ライブパフォーマンスでプロレステイストを取り入れるのは当たり前
・馳浩が乱入、小川直也が聖火ランナー、客席の角田信朗に腕ひしぎ
・MVでA猪木、蝶野正洋。それに、スタン・ハンセン、タイガー・ジェット・シン??
・桑田自身が敬愛する人物を歌によくするが、勿論プロレス関連もあり!
・ユニクロCMソング、「Soulコブラツイスト」は、A猪木の応援歌でもある
・マニアックの真骨頂。超マイナー曲「行け!!力道山」を解説
・天国のリングでアンドレを体固め!!
・サザンの楽曲「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」のタイトルはまさかここから??
桑田佳祐。1978年6月25日、サザンオールスターズとして『勝手にシンドバッド』で彗星の如くデビューして44年。老若男女問わず、幅広い世代に支持されている。いとしのエリー、真夏の果実、涙のキッス、エロティカ・セブン、LOVE AFFAIR ~秘密のデート~、TSUNAMI(レコード大賞受賞)、東京VICTORY等、凋落とは無縁で数々のヒットを飛ばし、ソロでも、祭りのあと、波乗りジョニー、白い恋人達、明日晴れるかな、そして最近では、東京オリンピックの報道の為に、民放全局が協力しあって楽曲作成を依頼したSMILE~晴れ渡る空のように~は、常にTV番組で耳にしていた。カラオケに行けば、ファンでなくても何かしらの楽曲は歌えてしまう。
それだけのキャリアを持ちながら、本体&ソロの両立を成功させ、いまだに出す曲はヒットし、常にドラマ・映画の主題歌やCMソングに楽曲は起用されるサザンオールスターズ&桑田佳祐。
単にセールスだけの比較とかではなく、総合的な実績として彼に並ぶアーティストは日本にはいないと言える。
で、なんで冒頭から桑田佳祐の話しかというと、彼が力道山時代から(1956年生まれ)今まで、ずっとプロレスを愛してやまないから、一度ガッツリ取り上げたかったのだ!
2019年3月に、安威川敏樹ライターが本誌で、桑田佳祐がビートルズの4人をジャイアント馬場、アントニオ猪木、前田日明、天龍源一郎に例えると言う記事を書いたことがある。
因みに、過去何度か書いた事はあるが、筆者は1975年から本格的にプロレスに嵌りだし、早47年。また、サザンはデビュー以来のファンであり現在44年が経過。それが高じて2005年からはサザンファンの集まる店、E★SPOTというBARを梅田で続けている。
なので、安威川ライターとは違った観点で、桑田サンのプロレスに関するエピソードにをちょっくら語っていきます(棚橋か!)。
案外、これがマニアックなので、是非最後までお付き合い下さい!
ライブ、MV、お約束のようにプロレステイスト有り!
基本的には、猪木信者である。しかし、ライブ等を観ていると、「ほんま桑田さん、プロレス好きなんやなぁ」と思わす場面が多く、見る側もプロレスファンならそれを絶対見逃さない!
まあ、書き始めると多くてキリがないのだが、一例を挙げると、まず過去のライブでは、裏方のスタッフに歌いながらプロレス流の殴る蹴るを行ったり、ロングホーンもよくやったし、ボブ・サップのお面を付けて登場した事もあった。曲のイントロで、突然、『長州、天龍、大仁田ぁー!』と意味不明に叫んだり、辻義就(現よしなり)アナが要所に実況するライブだけで1991年、1998年、2000年と3回もある。その中で、1991年の年越しライブ『闘魂!ブラディファイト』(←ライブのタイトル)では、ライブ中に当時の若手の金本浩二、山本広吉(現天山)、小原道由らが乱入。それを馳浩が登場し、サザンを守る為、ノーザンライトスープレックス等でやっつけるというパフォーマンス。更に、蝶野正洋もVTR出演。これ、自分がライブをやる立場だったら、こんな夢のような演出、テンション上がりまくって歌うのを忘れてしまいますね(笑)。まあサザンだから、桑田サンだから実現した名場面!
また、これは偶然が生んだ場面だったが、2000年の年越しライブ『ゴン太君のつどい』では、サザンの大ファンである角田信朗が客席にいるのを桑田サンが見つけ、『角田! 乳首見せろ! 上がってこい! コノヤロー!』と言い、角田サンがステージに上がると、いきなり桑田サン、キックでダウンさせ、腕ひしぎ逆十字を仕掛け、角田サン絶妙のタイミングでタップ(間を解っているなぁと感心)
このあと、桑田サンがステージ上で「サザンオールスターズ特別名誉会員」なる称号を角田サンに与えています。
この2人、格闘技好きとサザン好きという相思相愛で交流があり、角田サンのK-1時代の入場曲はサザンの“マンピーのG★SPOT”であった。
そんな角田サン、E★SPOTにもちょくちょくお客様としてお越し頂くばかりでなく、イベントを行って頂いたり、ご本人の番組の取材でお越し頂いたりと、サザンを通じて、有難く絡んで頂いています。
以前は桑田サン、ライブのヤマ場では、『1、2、3、ダァーー!』はお約束だったが、たぶん猪木側がこの言葉を商標登録したからだと思うが、全くやらなくなってしまいとても残念だったが、2021年のソロライブでは、久々に復活! しかし、まだ客席は声が出せなかったので、ちょっと不完全燃焼であった。
MVに於いても、“太陽に罪な奴”では、アントニオ猪木が、“イエローマン~星の王子様~”には、蝶野正洋が出演。また“君こそスターだ”では、曲終了後、桑田サンが原坊にキャメルクラッチを掛けられ、レフェリーにドラム松田弘、更にスタン・ハンセン風のベース関口和之とタイガー・ジェット・シン風のパーカッション野沢毛ガニも両サイドから攻めるという楽曲とは関係ない演出があり、これは単に桑田サンがやりたかっただけだろう(笑)。
インタビューやコラムなどでも、ちょくちょくプロレスを挟んでくる。
以前、4コマのオチに使ったが、サザンとソロ活動の違いは? と雑誌のインタビューで訊かれ、「武藤敬司とグレートムタとの違い」と解るような解らないような回答をした(笑)。
1983年に週プロで、なんと猪木とも対談している。
一時期、文春で毎週コラムを掲載していた事もあったのだが、絶対1回はプロレス話を書いてくるだろうなと期待していたら、早くも9回目で登場! しかも語ったのは、1974年のA猪木vs.大木金太郎戦。長いプロレス観戦歴の中で、圧倒的に影響された一戦だといい、自ら試合を分析し熱く語っている。このコラム全話を、“ポップス歌手の耐えられない軽さ”というタイトルで単行本として発売されている。
桑田は敬愛する人物の歌も多いがその中になんと力道山もある!
桑田サンが作るサザン&ソロの楽曲には、ありとあらゆるテーマをひと通り取り上げているのではと思う程、実は幅が広い。夏や失恋ソングばかりではない。
しかも、不倫、同性愛、SM、戦争、中国残留孤児、ジャパユキさん、北朝鮮拉致問題など細かく広い。その中で、桑田サンが敬愛したスター達も曲になっている。MICO(弘田三枝子)、星空のビリー・ホリデイ(ビリー・ホリデイ)、吉田拓郎の唄(吉田拓郎)、Dear John(ジョン・レノン)、栄光の男(長嶋茂雄)、D.J.コービーの伝説(小林克也)・・・と数多い。
その中で、プロレスはSoulコブラツイスト~魂の悶絶(A猪木)と、ゆけ!!力道山(力道山)がある。あとは、2000年の茅ヶ崎凱旋ライブにおいて、同郷の小川直也が聖火ランナーを務めたので、そのお礼に曲(PRIDEの唄~茅ヶ崎はありがとう)を作ってサプライズ歌唱するというのを同年10月のPRIDE11大阪大会(小川vs.佐竹雅昭戦の前)に決行された。
筆者、行くつもりだったが(勿論、この日のサプライズは知らない)慰安旅行と重なって断念。あとで、結果を聞いて凹みまくった(笑)。
で、Soulコブラツイストに戻ると、歌の内容こそ猪木は出てこないが、この曲を作っていたのが昨年丁度猪木が入院していた時期で、世間は大丈夫かな? となっていた時。その猪木にエールを送る意味も含めて、猪木の象徴であるコブラツイストをタイトルに入れた。
これが、昨年のソロツアーで演奏された時に、曲の途中で猪木vs.ハルク・ホーガン戦(多分第2回IWGP決勝)でのコブラツイストの映像が流され、筆者はその瞬間泣いた。←感動のポイントが違うぞ(笑)
因みに“ハダカDE音頭~祭りだ!!Naked”では、「出くわした猪木にビンタされた」という歌詞がある(笑)。
そして、ゆけ!!力道山は、1993年に発売されたサザンのシングル“クリスマス・ラブ”のカップリングで、もうコテコテのプロレスソングである。また、この歌詞が深い!!
プロレスを大好きでないとこの歌詞は出てこない。なので、出てくるワードをちょっとピックアップしていきたい。
まず曲自体は、ファンキーな感じで意外にカッコいい!
でも、これってリトルフィートの“Spanish Moon”と、作りが似てますね(笑)。特に、ホーンセクションの部分とか(笑)
パク・・・いや、これはきっとオマージュなのでしょう!
歌詞は、著作権上そのまま掲載できないので、分解していきます。ネットで検索すればすぐに出てくるので、全文はそちらでご覧頂きたい。
まず、冒頭から「僕 力道山 伝説のスター♪」から始まり、最強のチャンピオンだと謳う。
そして、青コーナーに立ちはだかるのは“パット・オコーナー”。そう、マットの魔術師と呼ばれ、最近だとSANADAが使うオコーナーブリッジの元祖の選手。この名前を持ってくるのが、何気に素晴らしい! そして、2番では「黒いタイツの王者♪」と謳い、赤コーナーに控える選手は“沖識名?!”。もうこの頃は、レフェリーになっていたので、対戦相手になる事はないのだが、言葉の語呂が良く、音に乗りやすいので敢えてそうしたのか?