[Fightドキュメンタリー劇場 25]国際プロレスが三団体タッグ・ベルト統一へ動いた(1977年)

週刊ファイト 1977年4月12日号表紙より
[週刊ファイト6月2日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

[Fightドキュメンタリー劇場 25] 井上義啓の喫茶店トーク
▼国際プロレスが三団体タッグ・ベルト統一へ動いた(1977年)
 by Favorite Cafe 管理人


1977年1月の東京スポーツ・プロレス大賞の授賞式の壇上で、猪木はシングル・タイトルの統一を呼びかけた。これはいつもの新日プロ、猪木のパフォーマンスかと思われていた。しかしその年の3月、今度は国際プロレスの吉原社長がタッグ・タイトル統一のための三団体会談を申し入れてきた。さて、タッグ・タイトルの統一戦は動き出したのか。

■ 闘いのワンダーランド #032(1997.01.17放送)「I編集長の喫茶店トーク」
1977.04.01 蔵前国技館
タイガー・ジェット・シン&上田馬之助vs.アントニオ猪木&坂口征二

週刊ファイト1977年4月12日号より

(I編集長) 今日放送された試合は、52年4月1日の北米タッグ戦です。勢いのあったシン&上田チームがこの時点の北米タッグチャンピオンでした。このチームの凄さがよく現れている試合ですね。
上田選手といいますと、ご存知のように交通事故で怪我をしまして、今(1997年)はまだ第一線にカムバックしておりません。シンが病院に見舞いに行った時には、シンの手をとって、涙をこぼしながらホントに喜びました。やっぱり上田はいい男なんですね。私にとってね、上田選手だけじゃなくて、ハッキリ言えば根っからのヒールなんていうのはいないんですよ。

心優しい上田馬之助

(I編集長) 悪役レスラーでも、ちょっと話をしてみたり、いろんなことを知ってしまいますとね、本質的なヒールではないんですよ。もちろんリング上にはヒールがおりますけどね。リングを降りたところにはいないんですよね、コレ。上田馬之助なんかが典型的な例ですよ。もうホントにいい男でしてね。ですから私には上田馬之助が猪木の宿敵だなんて概念が全く無いですよ。けどまあ一般の猪木ファンの方はですね、猪木をやっつける憎い敵だと言う概念で見ていただいて結構ですね、これ、プロレスですからね。

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(I編集長) さて、今日の試合は負傷している小林に代わって猪木が坂口と組んで北米タッグ選手権奪回に乗り出した試合ですね。そして結局反則勝ちはしたけれども、タイトルは奪回できなかった。放送を見た方は、ただそれだけの話じゃないかと、他に意味があるのかと、そうお思いになると思いますよ。でも、それだけじゃ無いんですよ。
よく言われることですけど、プロレスというのは全てがリングの中に凝縮されている。だから「ガタガタ、ガタガタ」言わずに、会場でリングを、マット上の試合をじっと見ておったらいいんだと、特にレスラーや団体関係者は言いますね。それをね、大阪で井上とかいうバカがおってね、「ああでもない、こうでもない」とくだらんことを言うと。東京にはターザン山本というのがおって、また訳の分からんことを言ってると。いったいどういう事なんだと言われる方々もおられる。プロレスとはリングの中に凝縮されているんだから、「いらんことを言うな!」というこの論法ですね。確かにこの考え方だけを聞いていますとその通りだとなってくるんですよ。しかし、これはハッキリ言って間違いですよ。

大阪と東京から「ガタガタ」物申す二人

(I編集長) 今日放送された北米タッグ戦は昭和52年の4月に行われた試合です。この年の新年1月、東スポさんの主催によります「プロレス大賞」の授賞式が行われました。この時のMVP最高殊勲選手に選ばれたのが、アントニオ猪木なんですよ。当然壇上に登って、リボンとか付けまして、その横には“特別大衆賞”を受賞した馬場さんがおるんですよね。そこで猪木が突然、馬場さんに向かって「今年はシングル・タイトルを統一しよう」と呼びかけたんですよ。馬場さんは嫌だったでしょうね、内心は。しかし、そんなことを顔に出すわけにはいかんし、「寛ちゃん、何言ってるんだ」とも言えないしね。みんなが見ておる前ですからね、関係者とか報道陣は五百何人からずらーっと並んでおる、カメラは砲列を敷いている、そうした中ですよ。馬場さんも「そういった方向で努力しましょう」という意味のことを短く言ったんです。しかし、全日本プロレスは「カンカン」ですよね、これ。いきなり打ち合わせもせずにそんなことを、人のたくさん居る前で言われたんでは、のっぴきならないとなりますわな。

 東京スポーツ・プロレス大賞(写真は昭和58年1月

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(I編集長) その年の1月4日に、国際プロレスではIWAのタッグ戦をやっておるんです。この時のIWAチャンピオンはグレート草津&マイティ井上組です。この試合でタイトルを防衛したあと、国際プロレス社長の吉原さんは、草津&井上組にタイトルを返上させるんですよ。国際プロレスでは新たな権威付けのために「IWAタッグトーナメント」を開催することを決めておったんですよね。そういうことがありましたから、タイトルを一旦返上させたんです。

グレート草津&マイティ井上組
吉原社長

(I編集長) 当時、アニマル浜口が「ぐーん」とのし上がってきていましたから、吉原社長には次はグレート草津&アニマル浜口組にしようという腹もあったんです。私たちマスコミも言ってましたよ、浜口を持ってくることになるだろうと、そういった流れだったんですね。
猪木は1月のプロレス大賞の時にシングルのタイトルの統一戦をやろうとアドバルーンを上げたんですけども、現実的には簡単にできないことはわかっていたんですね。そこで新日本プロレスはタイトル統一の前段階として、タッグだったら実現可能かもしれないと考えたんです。それで新日本プロレスは、プロレス大賞の翌々日になって、「シングル・タイトルの統一の前に、まずは三団体でタッグ選手権の統一戦をやろうじゃないか」と国際プロレスと全日本プロレスに呼びかけたんです。
しかしタッグ選手権だったとしても、全日本プロレスの方では当然これを無視しましたわね。あれだけ言ったのに、また同じ事を言っている。「新日本プロレスというのはコレだからかなわん」と言ったかどうだか知りませんけど、そう思ったに違いありません。いずれにしたって無視したんですよ。だからこの話は年始のうちに消えてしまったんですよね。私なんかでも、いつものように新日本プロレスが言うだけで終わったんだなと思っていましたよ。

「新日はこれだからかなわん」

(I編集長) ところが3月になって今度は国際プロレスの方から、新日本プロレスへレターが送られてきたんです。そこには「貴殿が提唱されていたタッグタイトルの統一戦、これについて馬場・猪木・吉原の三者会談をもちたい」と書かれていたんですね。それを見て、今度は新日本プロレス側が慌てたと思いますよ。立ち消えになったと思っていた話が蒸し返されたんですからね。そして、その時の北米タッグのチャンピオン、それがシン・上田組だったんです。

北米タッグ王者 タイガー・ジェット・シン&上田馬之助

(I編集長) タッグ統一戦をやるというのなら、新日はシン&上田組からタイトルを奪回しなくちゃいけないんです。ところが小林が負傷で調子が悪いので闘えない状態。それで猪木が坂口とタッグを組んで挑戦者として出て行くことになったんです。考えてみたらわかりますね、最初にタッグタイトルを統一しようと言ったのは新日本プロレスですよ。全日プロレスでは馬場・鶴田組がチャンピオンだった、国際プロレスでは草津&浜口組にタイトルを獲らせようとしている。ところが肝心要の新日はどうか、タイトルを奪回したとしても坂口&小林組でしょ。猪木が入っていない。なにも坂口&小林組にケチをつけるわけじゃないですけどね。

(I編集長) 「この統一戦の中に言い出しっぺの猪木がいないじゃないか」となるんですよね、これ。「会議を持ったところで、おかしいだろ。おまえさんが言い出したのに、肝心要のタッグチャンピオンの中に、猪木さん、あんたが含まれてないじゃないか」と、こう言われると困ってしまうし、発言権だって無くなりますからね。だからあわてて猪木・坂口で出ることになった、コレが真相なんですよ。4月の北米タッグ戦で猪木が出てきた理由はコレだったんです。

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「北米タッグ選手権」とは何か、曖昧模糊としたベルトの経緯

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(I編集長) 猪木は前年にはルスカ戦、アリ戦があった、この年も、ザ・モンスターマン、チャック・ウェップナー、そういった猛者たちとの異種格闘技戦が控えておったわけですよ。タッグまで手が回らなかったんです。だからハッキリ言って猪木はタッグからは手を離しておったんですが、ついに出ていくことになったのは、ここに理由があったんですよ。

異種格闘技路線まっただ中のアントニオ猪木

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