[ファイトクラブ]分析:ONE X 青木真也vs.秋山成勲は本当に世紀の一戦だったのか?

[週刊ファイト4月7日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼分析:ONE X 青木真也vs.秋山成勲は本当に世紀の一戦だったのか?
 photo: (c) ONE by 格闘技I記者



格闘技I記者が読み解く「世紀の一戦」~青木真也対秋山成勲

 はっきり言わせていただくと、私はこの闘いの意味そもそもが良く分かっていなかったのかもしれない。

 両選手の14年越しの遺恨と言ってはいるのだが、当時お祭りカードが連発していたDREAMのリング上ならいざ知らず、何故、その舞台を世界格闘技最高峰舞台の一つ、ONEで今更ながらやらなければならなかったのかだ。

 商業主義的に見たのならば、それはすぐに理解はできる。
 メインやタイトルマッチをさておいて、ネットTV内で煽りに煽った本試合は確かに視聴率史上主義のTV業界にとって、切り札の一つであったとことは容易に理解できる。

 しかしながら、それ以外の2選手がケージ内で戦う要因が私には全く見当たらないのである。
 言い換えれば、この試合はその大人の事情の為だけに仕立て上げられた幻想の一戦だったと言えるのではないか。

 戦前の試合、青木有利の選手・コメントを各方面で聞く中で、私は階段を黙々と走り込む、秋山選手の煽りVを見て胸騒ぎが止まらなかったことを鮮明に覚えてる。

 体格違う中での組み力は、同階級のそれと組み合うのとは何倍も疲れが違う。

 青木選手がその鍛錬を怠っていたとは思い難いが、もし秋山選手が煽りVの中で一緒に走り込んでいた日本トップの柔道重力級勢と練習を共にしていたらどうだろう。組み力はまさに桁外れのそれであり、試合1ラウンドの時点で青木選手は今までになかった、腕の疲れ、身体の筋力の違和感。そして動悸を感じていたのではないかと思う。

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 私も、某所で柔道からMMA転向後のオリンピックメダリスト小川直也氏と、機会あり手合わせしたことがあるが、その終了後に水を飲もうと手にしたコップの震えが止まらなかったことが鮮明に思い出される。

 試合展開としては、1ラウンドに早い段階からスタンドでのバックポジションを終始キープできていた青木選手は、自信があり確立したスタイルとしていた形になりながら自身が描く、秒殺スリーパーでフィニッシュが出来なかったこと、そして自分はあまり感じたことのない思った以上の疲労感で、精神的な焦りが生じたことが予想がつく。

 そんな中での、青木サイドの指示は1R同様の戦いを再現すること。それはそれで何も間違ってはいないと思うし、日本中ほとんどのセコンドがそう指示しても致し方無い。これは1ラウンド目で、青木選手のバックポジションキープがすんなり上手くいきすぎてたことの弊害。

 2ラウンド、あんなに無理して上取るタックルいかなくても、引き込みもありのスタイルでも全然良かったと思う。確かに、インターバル中のセコンドの指示は的確ではあったのだが、選手はその指示通り打撃食らって意識が飛びながらも、1ラウンド同様の形づくりに固執したのが敗因の一つと言える。普通にこの体格差なら、それだけで組み疲れする。それがトップ中のトップアスリートの中で、更に鎬を削り続けた秋山選手なら、なおの事である。そして、その小さな綻びから、あのフィニッシュ・シーンに繋がっていくのである。


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