あまりにも健康に無頓着!? プロレスラーに必要な意識改革

 新型コロナウイルスの感染拡大はまだ収束しそうにない。プロレス界や格闘技界も多くの大会が延期・中止・無観客試合を余儀なくされた。
 プロレス・格闘技界のみならず、自粛するイベントが多数となり、経済的損失が深刻となっている。

 一刻も早く終わってもらいたいコロナ・ショックだが、たった一つだけいいことがあった。人々の健康意識が高まったことだ。
 今冬はインフルエンザの患者数が減少している。その理由として、コロナ対策で多くの人が手洗いやうがいを積極的に行ったことが挙げられるだろう。怪我の功名とはこのことだ。コロナ騒ぎが収まっても、この習慣は続けていきたい。

 プロレスラーや格闘家は体が資本と言われているが、その割りには若死にする人が多いのが現状だ。むしろ、こういう人達の方が病院へ行くのを嫌がり、健康に関して無頓着なのかも知れない。特に、減量をあまりしないプロレスラーや相撲取りは、その傾向が顕著のようである。
 元プロレスラーであり元力士でもある天龍源一郎が3月17日(火)、ABC系列(テレビ朝日系)『名医とつながる!たけしの家庭の医学』という番組に出演した。天龍も病院へ行くのが嫌いな人間だ。番組では、天龍の生死にかかわる体験が語られたのである。

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▼再録~昭和プロレス伝承! 柴田勝頼@天龍プロジェクト最終章 ジミー・スヌーカ32年後のコールドケース審判の日~第三級殺人罪

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家族のちょっとした“気付き”により命を救われた天龍源一郎

 天龍が体の異変に気付いたのは去年(2019年)の4月、69歳の時だった。既に引退していたとはいえトレーニングを続けていたものの、暴飲暴食は相変わらずだったのである。
 まき代夫人と食事に出掛けたが、席を立つときに体が揺れているような眩暈がした。さらに、帰り道では右に寄ってしまい、真っ直ぐ歩けない。翌日も、次のような症状が出た。

①黒目が小刻みに動く(これは5分程度で収まった)
②風呂に入っていると、体が右側に傾く
③喋るときに、呂律が回らない。

 ①については5分程度で収まるために、多くの人は安心する。③は、天龍の滑舌の悪さを知っている人なら気にも留めないが、一緒に暮らしているまき代夫人だからこそ異常に気付いた。

 まき代夫人は天龍を強引に病院へ連れて行き、医者に診てもらうとすぐにMRI検査が行われる。検査の結果、脳梗塞を発症していることが判明したのだ。暴飲暴食により、血栓が脳の血管に詰まってしまったのである。天龍の場合、小脳が2ヵ所も壊死していた。
 幸い、天龍の脳は血栓が血流で流されたために、九死に一生を得たのだ。

 ところが天龍は、一命を取り留めたのは普段から美味しい物を食べたり、プロテインを飲んだりしていたからだと、とんでもない勘違いをしてしまう。3日で何とか退院した天龍だったが、医者からは90日以内に脳梗塞が再発する可能性が高いので、生活習慣を改めるように指示された。
 しかし、自由の身となった天龍は医者の忠告を無視して、まき代夫人に隠れて肉を食いまくり、酒を呑みまくる。そして脳梗塞発症から僅か11日後、遂に病が天龍の体に襲い掛かったのだ。

 その時はまき代夫人が不在だったので、天龍を監視するために娘夫婦を家に呼び寄せていた。食事中、娘の紋奈(あやな)さんの注意も聞かず、ビールを呑む天龍。しかし、トイレに行こうとしても立てない。少し酔ったみたいだと誤魔化した天龍だが、紋奈さんがお茶を渡すと、利き腕の右手が膠着してしまったので左手で受け取った。その動きを、紋奈さんは見逃さなかったのである。しかも天龍の顔を見ると、右側の頬が落ちていた。
 すぐに救急車を呼ぶ紋奈さん。集中治療室で処置を受けた天龍は、紋奈さんの行動が早かったために今回も助かったのだ。天龍は二度にわたり、妻と娘に命を救われたのである。

 紋奈さんとまき代夫人は、天龍にエンディング・ノートを手渡した。天龍に万が一のことがあった時、家族が困らないように書いておいて欲しい、ということである。
 愛する娘や妻からの願いに、天龍は苦手な文章を書き綴った。紋奈さんとまき代夫人が読むと、ノートには家族に対する感謝の思いが書かれていたのだ。紋奈さんとまき代夫人は、似合わぬ天龍の言葉に、笑いながらも泣いてしまったという。
 今の天龍は、食事も腹半分で塩分の多い味噌汁や漬物は摂らず、酒も缶ビール1本程度。天龍は70歳前の脳梗塞を経て、ようやく体調管理ができるようになったのだ。

 先日、漫才師のトミーズ雅も大腸癌手術を受けたが、異変に気付いたのは奥様だった。トミーズ雅も天龍と同じく、自分の異常を隠そうとしたが、普段から接している家族だからこそ、いつもと違うことを発見できたのである。
 トミーズ雅は処置が早かったこともあって、幸い癌は転移していなかった。

▼天龍源一郎と愛娘の紋奈さん

高カロリーの食事と大量の飲酒で寿命を縮めるプロレスラー

 天龍の例はプロレスラーにとって、決して対岸の火事ではないだろう。天龍の場合、70歳近くになっても肉中心の食生活で、1日の摂取量はなんと6,000kcal近くだったという。70歳男性の場合、平均で1日の摂取量は2,200kcalというから、その約3倍というわけだ。
 しかも、天龍の飲酒量はハンパない。現役時代は天龍同盟の合宿なんてのも行っていたが、練習というより宴会。コンパニオンを呼んで記者連中と共に呑めや歌えの大騒ぎ。その呑み方も、アイスペールに様々な酒をチャンポンして一気に呑むという、豪快そのもの。まだ若手だった川田利明などは「体を鍛えに来たはずなのに、合宿で体を壊してしまった」と嘆いていた。
 天龍の信条は「酒を呑まない奴は信用しない」。杯を酌み交わして本音をぶつけ合うという、昭和気質の力士&レスラーだったのだ。その酒量は、引退してからも衰えなかった。

 そもそもプロレス界や相撲界では、新弟子にとっては食って体を大きくするのも大切な仕事。チャンコ鍋や焼肉など、カロリーの高い料理を際限なく食う。リバースしそうな食物を水で胃に流し込むという食事が延々と続くのだ。食事時でもコーチ役が目を光らせており、食う量が少ない選手には無理やり食わせる。若手レスラーは異口同音に「食うことがこれほど苦しくて辛いとは思わなかった」と言うほどだ。
 若手時代を脱すれば、それほど食うこともなくなるのだが、それでも天龍のように高カロリーの食生活は続く。肉料理中心の食事に変わりはない。

 飲酒にしてもそうだ。ボクサーと違って減量の必要などないから、試合前日でも呑みに出掛ける。先輩が呑みに行くと行ったら、若手は付いて行かなければならない。先輩が勧める酒を断ることなどできないから、言われるがままに一気呑みする。こうして誕生するのは立派な大虎だ。
 レスラーたる者、酒も豪快に呑まなければならない。さすがに最近ではこれほど極端な風潮は少なくなったが、一般人より酒量が多いのは間違いないだろう。

 こんな食事内容や生活習慣が、体にいいわけがない。日本人レスラーだけでも橋本真也(享年40歳)、冬木弘道(同42歳)、ジャンボ鶴田(同49歳)、愚乱・浪花(同33歳)など、事故ではなくても病気による若死にが目立つ。ジャイアント馬場(同61歳)だって、寿命が延びた現代では早逝と言えるだろう。
 アメリカのレスラーに多いのが、これらの要因と共にドーピングが死因となるケースである。筋肉美を魅せるために使用したステロイドで、寿命を縮めてしまうのだ。

 糖尿病に苦しむレスラーもいる。存命中だがアントニオ猪木や谷津嘉章、蝶野正洋などがそうだ。糖尿病は怖い病気で、谷津は右足切断を余儀なくされた。また糖尿病は失明の危険性もある。
 猪木が糖尿病を発症したのは、レスラーとして脂が乗り切った頃の39歳。その時の血糖値が600近くもあったというのだから恐ろしい。普通なら死んでもおかしくない数値だ。ちなみに、正常な空腹時血糖値は100未満で、126以上になると糖尿病と言われるぐらいだから(食後血糖値でも200以上)、血糖値600がいかに絶望的な数字なのか判るだろう。ちなみに猪木はインスリンを使わず、食事療法で糖尿病を治した。ほとんど奇跡的である。

▼糖尿病により右足を切断しながら、義足レスラーとして復帰を目指す谷津嘉章

“百害あって一利なし”と判っていてもやめられないタバコ

 肉体を蝕む代表的な物と言えばタバコだ。プロレスラーは他のスポーツ選手に比べて、喫煙率が高いと言われる。プロ野球選手にも多数のスモーカーがいるという。
 プロレス界や野球界に喫煙者が多い理由として、体育会気質ということがあるだろう。先輩がタバコをくわえると、後輩がサッと火を点ける。先輩からタバコを差し出されたら、“恩賜のタバコ”を有難く頂戴する。これがヘビースモーカーを生み出す構図だ。体育会は体を鍛えなければならない組織なのに、その正反対となる喫煙の温床だとは、おかしな話である。

 プロ野球界の嫌煙家として知られる桑田真澄は「1日2箱のタバコを吸っていた人が1箱に減らせば節制になる」と語っていたが、これは的を射ていない。桑田はタバコを吸ったことがないだけに、タバコのメカニズムが判らないのだ。いや、喫煙者だって理解していないだろう。
 筆者は元スモーカーだ。その経験から言えば、タバコの量を半分に減らしたところで、また元の本数に戻るのがオチである。むしろタバコの量が増えるかも知れない。タバコを減らした分、余計にタバコが恋しくなるからだ。そのため、徐々にタバコの本数を減らしていって、最終的に禁煙するなんて不可能と思った方がいい。禁煙するなら、スパッとタバコをやめるしかないのだ。

 タバコは習慣ではない。喫煙者は、みんな薬物中毒なのである。そこを理解しなければ、禁煙なんてできるわけがない。
 タバコに含まれるニコチンが体内に入ると、どんな麻薬よりも速く依存症となってしまう。つまり、タバコは最強の麻薬なのだ。タバコを1本吸っただけで、立派な麻薬中毒者となる。
 よく嫌煙家が「タバコを我慢できないなんて意志が弱い」などと言うが、これも正しくはない。意志が強かろうが弱かろうが、中毒者である以上、タバコは吸ってしまうのだ。麻薬に手を染めた人が、麻薬をやめられなくなるのと全く同じである。
 逆に喫煙者が「俺は好きで(あるいは旨いから)タバコを吸ってるんだ」と言うが、これも違う。好きでタバコを吸っているように思えて、実はタバコに吸わされているのだ。これに気付く喫煙者はいない。というよりも、認めようとはしない。

 喫煙者は麻薬中毒者であるため、タバコをやめると当然のことながら禁断症状(離脱症状)が起こる。喫煙者はそれが怖いからタバコをやめたがらないが、他の麻薬と違うところはニコチンの禁断症状は非常に弱いということだ。他の麻薬のような、地獄の苦しみを味わうことはない。
 ニコチンの禁断症状なんて、せいぜい頭がたまにボーっとするぐらいのもの。禁断症状が続くのは、個人差はあるが長くても3週間ぐらい。筆者の場合は1週間で収まった。
 むしろ怖いのは、心理的依存である。たとえば渋滞でイライラしているとき、ついタバコが恋しくなって1本吸ってしまえば、せっかく禁煙に成功したのに、また麻薬中毒者に逆戻りだ。

 タバコの害については語り尽くされた感があるが、あまり知られていないことを言うと、タバコ1本に含まれているニコチンの量を血管に直接注入すれば、人を殺すことができる。つまりニコチンとは、それほど恐ろしい毒物なのだ。
 中にはヘビースモーカーにもかかわらず、80歳ぐらいまで生き続ける人もいる。しかし、その人はたまたま80歳まで生きていただけで、タバコを吸っていなければ90歳まで生き続けたかも知れない。喫煙によって寿命が縮むことはあっても、寿命が延びることは有り得ないのである。

 本誌は禁煙書ではないのでこれ以上のことは書かないが、喫煙とは麻薬中毒であり、百害あって一利なしであり、喫煙するのは意志の強弱に関係ないのである。周りがいくら禁煙しろと言っても、喫煙に対する理解がなければ何の効果もない。本人に禁煙する意思がなければ、タバコをやめることはできないのである。そのかわり、禁煙する気になれば、タバコをやめるのは簡単だ。
 禁煙の理由なんて何でもいいのだ。健康のためでもいいし、好きな異性がタバコを嫌がったから、なんて理由でもいい。ちなみに筆者の場合は、自由に喫煙できる環境が少なくなって、タバコを我慢するのが辛くなったから禁煙した。筆者のような意志薄弱の人間でも禁煙できたのだ。

 WRESTLE-1は4月1日で活動停止する。一部の団体やレスラーを除いて、資金繰りに苦しむ団体や、ギャラが安くて困っているレスラーがほとんどだろう。そんな人達が、なぜタバコを吸う?
 セブンスターが1箱510円で、1日1箱を吸うとすれば、20歳から50歳までの30年間でなんと約560万円にもなるのである。タバコがもっと値上がりして、1箱1,000円になれば、生涯のタバコ料金が1千万円にもなりかねない。つまり今、禁煙すれば1千万円も儲けたことと同じだ。それだけでも、タバコをやめる理由になるだろう。

▼タバコ嫌いと言われたアントニオ猪木も、葉巻は嗜んでいた

 もちろんタバコは、レスラー寿命だけではなく命の寿命も確実に縮める。ただでさえカロリーの過剰摂取や大量の飲酒に蝕まれているレスラーは、喫煙により健康リスクが倍増するのだ。
 プロレスラーは他のスポーツ選手に比べて、自己管理ができていないと言われても仕方がない。長寿のためにも、最高のパフォーマンスを魅せるためにも、健康面での意識改革が必要だろう。


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