SmackDownパフォーマンスセンター無観客生中継WWEの挑戦

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 ジャンルを問わずいかなる職種の組織でもミスも起きればトラブルも発生する。そんな際に真の実力が試され、本当の力量が問われるものだ。急遽前日に、予定されたデトロイト会場での大会開催を断念。現地水曜夜にたまたま実験として使用されたフロリダのNXT本拠地パフォーマンス・センターでの開催となったSmackDownは、新たなる試練を前にどう2時間生中継番組を制作、地上波FOXのプライムタイム(日本表記ゴールデン)に穴を開けず放送を届けたか。


 番組冒頭はトリプルHから。「ようこそパフォーマンス・センターへ」との紹介から始まり、女子革命はここから始まったことに触れ、今や伝説として語られる『NXTテイクオーバー』でのサーシャ・バンクスvs.ベイリー戦を女子革命集大成回の前に皆に再度見せたことも話している。その通り。大一番大会はそれまでの積み重ねのおさらい回であって、本当に重大な変革が始まったと熱心なユニバースに認められたのは、さらにさかのぼること2015年、8・22『NXTテイクオーバー:ブルックリン』からなのである。


 よって試合としては、ベイリー&サシャ・バンクス組に、アレクサ・ブリス&ニッキー・クロスが挑むカードから。トリプルHも説明したように、選手だけで100名いるから彼らに声援させても出来たんだろうが、ここは行政指導もあり「無観客試合」を強調するため空席だけの会場をあえて映像が捉えると。ただ、今は国内の飛行機も大混乱の米国であり、予定されたペイジは間に合わず、実況席もマイケル・コールしかいないようでトリプルHが座ったが、「俺は実況は得意じゃないが、あんたも評判悪いからな!」とガチを混ぜたのは拍手喝采かも。


 4人とも必死に戦っていたが、リアルファイトの大会なら無観客試合はなんとか恰好もつくが、お客のリアクションで成立するスペクタースポーツのプロレスだと、やはり難しさが露呈してしまう。ただ、途中でアスカが出てきたりと、なんとかまとめていた。

 やはり限界を知っていたのか、試合中継としてはSDタッグ王座を賭けたエリミネーション・チェンバー戦を、ニューデイとウーソーズの絡み辺りから再編集して放送。なるほど、これは考えたなぁと。複数のCMを挟んで、リアルタイムで見た方ならうまいことカットした場面もあれば、逆に何度も何度もリプレイを流したりと、短時間で再編集したのは凄いこと。詳細分析は本誌3月19日号に収録されているが、フィラデルフィアのお客さんは”This is AWESOME”と喜んでいたのだから、その観客音も大きくして再編集したら、良い試合だったように見えるというお手本か。なにしろ、月1回のPPV大会の意義がますます薄れていて、WWEネットワークに加入していてもNXTは毎週熱心に見ても、PPV大会は視聴を飛ばされていることが多く、ましてや地上波FOXで見ているライト層には大半が初めて見る試合だろうから、どう2時間番組を成立させるのかのケース・スタディではあった。可哀そうなオーティズが目立つように編集されていたから本誌としては○である。


 もともとの、もう一つの目玉はジェフ・ハーディの復帰で、これは当然AEW転出が噂されるマット・ハーディへの当てつけなのだが、バロン”KING”コービンとの試合で往年のspotを一通りやってはいた。


 結局は、ジョン・シナがトリを飾るのは仕方がない。ただ、やはり客がいないとメガスター様のオーラが薄れる側面は否定できなかった。シナは「ワイアットなんかWWEの未来ではない。WWEの未来はマッキンタイア、リア・リプリー、トマソ・チャンパ、マット・リドル、ベルベティーン・ドリームのような選手だ」と、NXT本拠地に配慮した内容だったのは注目かも。当然、(どうなるかはともかく)『レッスルマニア』での対戦相手ブレイ・ワイアットが素顔のまま客席で見ている姿が途中ちらっと画面に出ていたが、私服ジーンズのままリング上に出てきてごちゃごちゃ言っていた。ギリギリの会場入りでメイクする時間がなかったのかもだし、まぁ大目に見てやってください。


 ローマン・レインズはちゃんとフロリダ入りしてプロモやったし、ミズ&ジョン・モリソンのトーク・セグメントなら、会場に客がいなくても成立するところがWWEの底力だろう。しばらくこの形態の番組が続く不安はあるが、危機をなんとか乗り切ったのであった。普段はWWEの番組でもっとも大衆向きだからSmackDownは熱心なユニバースには大味過ぎるんだが、今回はかえって真剣に見た方が多いと思われる。


 ちなみに普段会場では続いて収録される205 LIVEだが、さすがに今回はキャンセルかと思ったら、ちゃんと収録やったのだから恐れ入る。英国紳士のジャック・ギャラハーが職人芸を披露していた。

■ WWE SmackDown 205 LIVE
日時:3月6日(現地時間)
会場:米フロリダ州オーランド パフォーマンスセンター

◆アスカ、アレクサ襲撃でドヤ顔

 急遽会場を変更して無観客で行われた番組の第1試合にサーシャ・バンクス&ベイリー、アレクサ・ブリス&ニッキー・クロスが登場すると、アレクサは「カブキ・ウォリアーズは私たちの王座挑戦から逃げてるわ」とWWE女子タッグ王者のアスカ&カイリ・セインを非難。さらにニッキーが「私たちは対戦相手を探してるのよ」とサーシャ&ベイリーを挑発すると、ベイリーが「後悔させてやる」と言って2チームの対戦が決定した。
 試合ではアレクサがベイリーに平手打ち、ニッキーがサーシャにクロスボディを放って攻め込めば、サーシャもダブル・ニーからの平手打ちでアレクサに反撃して互角の攻防を展開。しかし、試合途中に突如レフェリーの死角でアスカがアレクサを襲撃。アスカは背後からアレクサをエプロンに叩き付けてダウンさせると、ドヤ顔のアスカは花道で試合を踊りながら見物。さらにここで1人残されたニッキーがサーシャのバンク・ステートメントに捕まってタップ負けとなり、カブキ・ウォリアーズとアレクサ&ニッキーの因縁が激化した。

◆中邑真輔がダニエル・ブライアンを襲撃して乱闘

 中邑真輔がセザーロに勝利したダニエル・ブライアン with ドリュー・グラック先生を襲撃した。ブライアンとグラックはフィラデルフィアでは闘い、999円ワールドで新日本プロレスを研究しまくって、ザック・セイバーjrの返し技を再現していたばかりだ。世界はリアルタイム配信時代なのである。

 バックステージでブライアンとセザーロが睨み合いの一触即発となると、ゲストとして解説していたトリプルHが2人の試合を決定。セザーロが得意のアッパーカットで攻め込むと、ブライアンもクローズラインからイエスキックで応戦して白熱の攻防を展開したが、最後はブライアンがスモールパッケージホールドでセザーロを丸め込んで勝利した。すると試合後に中邑が勝利したブライアンに襲い掛かかり、サミ・ゼイン、セザーロも加わって3人掛かりでブライアン&グラックに暴行。ブライアンもトペ・スイシーダで中邑に反撃して両チームが乱闘で火花を散らした。

◆KUSHIDAが205 Liveにサプライズ登場

 205 Liveでチーム205オリジナルとチームNXTの10人エリミネーション・タッグ戦が行なわれ、KUSHIDAがチームNXTとして205 Liveにサプライズ登場した。KUSHIDA対トニー・ニースで試合が始まると、KUSHIDAが得意のグラウントテクニックでニースを翻弄し、ハンドスプリング・エルボーを叩き込んだ。

 試合中盤には10人入り乱れての乱闘やチーム205オリジナルの仲間割れで次々と両チームのメンバーが脱落。最後はKUSHIDAがアイゼア”SWERVE”スコットと連携した飛び付きアームバーを最後の1人となったジャック・ギャラハーに決めてタップ勝ちを収め、チームNXTがチーム205オリジナルを撃破した。


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