プロレスラーの引退について。寿命が長いレスラーの功罪

 2020年の幕開け、1月4日と5日の新日本プロレスの東京ドーム大会には、2日間で約7万人の観客を集めた。2日続けて3万人以上の客を集めるスポーツ・イベントなんて、そうはない。
 1月4日はオカダ・カズチカがIWGP防衛、翌5日はそのオカダを内藤哲也が破って二冠王となるも、KENTAの乱入によって全てがブチ壊し。KENTAの乱入には賛否両論があったが、少なくとも注目を集めることはできた。Twitterで『KENTA』がトレンド入りしたぐらいだから、東京ドーム大会は成功と言えるだろう。

 とはいえ、世間的に最も話題となったのは、獣神サンダー・ライガーの引退試合だった。ライガーは昭和プロレス世代ではないとはいえ、1990年代におけるジュニア戦線のトップを走り続けていたのだから、知名度も抜群である。
 さらに、中西学も引退を発表。いわゆる『鶴藤長天(ジャンボ鶴田、藤波辰爾、長州力、天龍源一郎)』より下の世代の、相次ぐ引退により、寂しさを感じるオールド・ファンも多いだろう。

 しかし、ライガーも中西も、いずれも50歳過ぎ。他のスポーツなら、サッカーの三浦カズのような例外を除いて、引退して当たり前の年齢だ。年老いてリング上で醜態を晒すよりも、スパッと引退する方が潔いかもかも知れない。
 だが、一旦は引退しても、また復帰するレスラーが多いのも事実だ。プロレスラーほど、引け際が難しい職業もない。

▼引退を表明した中西学
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『過激なプロレス』を標榜したアントニオ猪木ですら55歳まで現役

「こんなプロレスをやっていたら、10年は持つ私のプロレスの寿命が5年になるかも知れませんが、こうなったらどんな相手の挑戦でも受けます!」

 そう言ったのは、1973年12月10日のアントニオ猪木だ。当時30歳。35歳で引退するかも知れない、と猪木は示唆したのである。つまり、猪木はそれだけ過激なプロレスを続けていたわけだ。あまりに激しいプロレスをしていたので、35歳ぐらいで引退するしかない、と。
 しかし猪木は、その後もトップであり続け、引退したのは1998年、即ち55歳のときだ。『10年は持つプロレスの寿命が5年』どころか、25年も持っちゃったのである。

 それまで、プロレスのイメージと言えば『他のスポーツでは有り得ない、強靭な肉体と過酷な運動量』というものだった。ジャイアント馬場は「普通のスポーツでは『ヘトヘトになるまでやった』というのが猛練習の定義だが、プロレスの練習は『ヘトヘトになってから』始まる」と語っていたぐらいである。
 ヒンズー・スクワット3千回をこなし、200kgのバーベルを持ち上げるスーパーマンがプロレスラー、そういうイメージだった。

 しかし実際には、40歳を過ぎたレスラーがメイン・エベンターとして登場し、50歳を過ぎてもリングに上がり続ける。他のスポーツでは、40歳を過ぎればロートルとして引退を余儀なくされ、たとえ現役を続行しても出場試合は激減。50歳を過ぎればプロ・スポーツとして通用しないのが常識だ。
 だが、プロレスでは50歳いや60歳を過ぎても平気でリングに上がる。「プロレスなんて、お爺ちゃんでも通用するスポーツなんだ」と思われても仕方がないだろう。プロレスの『キング・オブ・スポーツ』神話は音を立てて崩れていく。どこが『過激なスポーツ』なんだ、と。

 しかも、引退しても何度も現役復帰するプロレスラーも後を絶たない。アラフィフで引退してから数年後に現役復帰したり、7回ぐらい引退しては復帰する選手など、プロレス以外では有り得ないだろう。
 そんなロートルでも通用するスポーツ、というイメージが付いてしまうのもやむを得まい。

▼『過激なプロレス』を標榜していたアントニオ猪木ですら、55歳まで現役だっ

力道山の孫と藤波辰爾の息子が対決!

 とはいえ、選手寿命が長いプロレスには、他のスポーツにはない楽しみがある。レジェンド級のレスラー同士の対戦があるのだ。プロ野球で言えばマスターズ・リーグのようなものだが、それがプロレスでは普通の試合として行われる。

 たとえば去年の暮れ、2019年12月17日の全日本プロレス東京・後楽園ホール大会では、諏訪魔&石川修司&渕正信vs.グレート小鹿&バラモンシュウ&バラモンケイの6人タッグ・マッチが行われた。渕正信vs.グレート小鹿の対決なんて、オールド・ファンなら泣いて喜ぶだろう。
 筆者がプロレスを見始めた頃、グレート小鹿は既にベテランの域に達していたが、渕正信は若手の前座。そんな2人が、令和の時代になって同じリングで闘っているのである。渕は還暦越えの65歳(もちろん独身)、小鹿は喜寿の77歳。若い頃の12歳差はとてつもなく大きな差となるが、還暦を超えるとさほど変わらない。どちらも『お爺ちゃん』だ。

▼還暦越えの渕正信が、大先輩で喜寿のグレート小鹿を殴り付ける

 翌18日、HEAT-UPの神奈川・新百合ヶ丘大会ではTAMURA&藤波辰爾&LEONA vs.ヒロ斎藤&松田慶三&力の6人タッグ・マッチが行われた。66歳の藤波が、息子のLEONA(26歳)とタッグを組んだのである。
 相手の力(38歳)は百田光雄の息子、要するに力道山の孫だ。飛龍二世vs.力道山三世の対決が実現したのである。これもプロレスの楽しみと言えよう。

▼力道山三世の力が、飛龍二世のLEONAに対し、お爺ちゃんばりの空手チョップ

▼負けじとLEONAも、父親譲りのドラゴン・スクリューを力に仕掛ける


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’20年01月16日号BellatorRIZIN 東京ドーム大田区 WWE-AEW 全日ノアW1 JKA ラウェイ