2020年代に突入した最初の初夢! プロレス界の壮大な夢

 読者の皆様、明けましておめでとうございます。本年も『週刊ファイト』をどうぞよろしくお願い致します。

 さて、筆者も新年には人間並みに初夢なんていうものを見た。1月2日に見る夢、やはり一富士二鷹三茄子なのか? いやいや、本当に縁起がいいのはプロレスに関する夢でしょう。
 それでは、2020年代の幕開けとなる安威川敏樹の初夢をご紹介しよう。


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プロレスが東京オリンピックの正式種目に!?

 2020年は言うまでもなく東京オリンピックが開催される。そのため、日本の話題は五輪が独占して、プロレスは忘れ去られるのではないか、という危惧は昨年度も本誌で何度も警鐘を鳴らしていた。その懸念が的中すると、上向きかけたプロレス人気が、また下降してしまう。
 あまりに心配し過ぎたのだろうか、1月2日に夢を見てしまった。そう、プロレスがオリンピック種目になっている夢を。

 東京オリンピック最終日となる8月9日、場所は新・国立競技場。この日、東京で行われるはずだったマラソン競技は札幌で開催された代わりに、東京で注目されたのはプロレス競技だった。もちろん、スタンドとフィールドには10万人を超える大観衆で埋まっている。
 プロレス競技ヘビー級の金メダルを賭けて、遂に決勝戦を迎えていた。決勝に進出した日本代表は新日本プロレス、IWGPヘビー級王者のオカダ・カズチカ。アメリカ代表はWWE王者のブロック・レスナーである。
 ゴングが鳴ると、パワーで圧倒するレスナーの一方的なペースで、さしものオカダもタジタジ。レスナーのF5を食らって万事休すかと思われたが、オカダは辛うじてカウント2.99で返す。
 レスナーの猛攻を受けてグロッキーだったオカダだが、起死回生のレインメーカー3連発! 見事にレスナーを完全ピンフォールし、オカダが金メダルを獲得した。

 さらにジュニア・ヘビー級ではプロレスリング・ノアのGHCジュニア・ヘビー級王者のHAYATAが、タッグ部門では全日本プロレスの世界最強タッグ決定リーグ戦覇者チームの諏訪魔&石川修司がそれぞれ優勝、日本勢がプロレス競技3部門の金メダルを独占したのである。
 プロレス競技の視聴率はマラソンそっちのけで60%をマーク、さらにマラソンのメダリストは札幌からの飛行機が遅れて閉会式に間に合わず、金メダルを獲得した日本人レスラー4人が新・国立競技場10万人の大喝采を独占した。
 もちろん、東京五輪後は前年のラグビー・ブームを遥かに上回るプロレス・ブームが日本中に巻き起こったのは言うまでもない。なんと素晴らしい初夢であろうか。

▼オカダ・カズチカが東京オリンピックで金メダル!?

ほとんどの日本人が理解していない、スポーツの定義

 日本人が最も熱狂するスポーツ・イベントといえば、もちろんオリンピック。そのオリンピックで日本がメダルを獲れば、どんなマイナーな競技でもたちまち有名になる。その証拠に、カーリングなんて昭和時代には誰も知らなかったのに、冬季オリンピックで日本代表が活躍したのを機に、日本人なら誰もが知るスポーツになったではないか。
 それなら、競技人気を上げるためにはオリンピックで活躍するのがいちばん手っ取り早い。日本のプロレスは世界でもレベルが高いので、五輪種目にさえなればメダルが期待できる。

 なんて言っていると、何を血迷ったことをのたまってんだという声が聞こえてきそうだ。プロレスが五輪種目になるわけがないではないか、と。
 もちろん、今年の東京オリンピックで正式種目になるのは無理だ。既に行われる競技は決まっているからである。
 だが、今年の東京五輪に拘らなければ話は違う。2020年代だって、プロレスが五輪種目になるのは、決して夢物語ではない。

 今年だろうが2020年代だろうが、未来永劫プロレスが五輪種目になるなんて絶対不可能だと思う人がほとんどだろう。そもそも純粋スポーツではないプロレスは、オリンピックから最も遠い競技ではないか。
 だが、純粋スポーツって何だろう? スポーツの定義とは何なのだろうか??

 たとえば、チェスがオリンピックの正式種目に名乗り出たことがある。チェスが五輪種目など、日本人には想像もつかないことだろう。チェスなんて駒を手で動かすだけで、体を全然動かしてないじゃないか、と。
 しかし『スポーツとは体を動かすこと』なんて、誰も決めてはいない。チェスは『頭脳スポーツ』と呼ばれる、レッキとしたスポーツなのだ。
 結局、チェスを含む頭脳スポーツは、当分の間は五輪種目にはならないということになったが、あくまでも『当分の間』である。いつチェスや、囲碁あるいは将棋などがオリンピック種目になっても不思議ではない。
 さらに言えば、最近ではeスポーツなどというものもある。eスポーツなんて、要するにコンピューター・ゲームで、スポーツとは無縁だと古い人間は考えてしまう。だが現在では、eスポーツだってスポーツとして認められている。

 日本人は『スポーツ=体を鍛えること』と考えがちだ。スポーツが日本に輸入されたのは明治時代で、軍事教練に役立つ鍛錬として利用されてきたからだろう。そのため、スポーツは『体育』と訳され、日本古来の武道に通ずるものとして苦行あるいは修練の場としてきた。
 そしてスポーツは、勝たなければ意味はない。富国強兵のスローガンの下、戦争で負けると全てを失うからだ。スポーツを楽しむなど、もってのほかと考えられてきたのである。
 ところが、スポーツと『苦行・鍛錬・勝利至上主義』とは何の関係もない。スポーツ=sportの語源はラテン語のdeportareで『気晴らし』という意味だ。つまり、楽しむことがスポーツの本質である。極端に言えば野原で昼寝することだって、立派な『気晴らし=スポーツ』なのだ。

 楽しむという点で言えば、プロレスほど楽しいスポーツはないだろう。何よりも、客を楽しませることがプロレスの本質だからだ。そこには勝利至上主義などなく、楽しいことが優先される。ジャイアント馬場のモットーは『明るく楽しく激しく』だった。
 これこそ、オリンピック精神に通じるものではないか。元々オリンピックは『参加することに意義がある』がスローガンだった。ところが、1984年のロサンゼルス・オリンピックから商業主義に走り、『参加することに意義がある』は絵に描いた餅になってしまったのである。

 それまではアマチュアの大会だったオリンピックも、このロス五輪から潮流が変わり、やがてプロ参加が容認されるようになった。
 もっとも、プロ容認が悪いことだとは思わない。『参加することに意義がある』のなら、プロだって参加していいはずだ。そのおかげで、プロレスラーがオリンピックに参加しても、全然OKになったのだから。
 問題なのは、あまりにも商業主義に走り過ぎて勝利至上主義、メダル至上主義、金儲け至上主義になってしまったことである。

▼『ゴムパッチン』だって、楽しいのだから立派なスポーツだ!

プロレスの面白さを伝えるために、オリンピックを活用せよ!

 それでも、と多くの人は思うに違いない。オリンピックだってメダルを争う以上、勝利を目指すのは当然ではないか。勝敗がなければ、メダルの授与も行われないだろう、と。
 もちろん、そうである。オリンピック競技の全てが、勝敗に関して白黒を付けているのだ。
 プロレスは観客との勝負論こそあってもスポーツ芸術であると標ぼうしているのは『週刊ファイト』ではないか。そんな『ファイト』が、勝敗を付ける必要があるオリンピックに、プロレスが参加できるなどと言うのはおかしいじゃないか、と思うだろう。

 だが、勝負論は何もリング上のことだけではない。プロレスには、リング上とは別の『勝負論』がある。
 たとえば空手というと、ほとんどの格闘技ファンはフルコンタクト空手を想像するだろう。それが、空手の強弱を測るのに最も判りやすいからだ。
 しかし、オリンピックで採用される空手は『寸止め』である。つまり、ポイント制で勝敗を決めるのだ。これでは、本当の意味での『強弱』を決めることはできない。ケンカに『寸止め』などないからだ。日本の格闘技ファンは『真にケンカが強い格闘家は誰か?』に、異様に拘る。これはおそらく、大山倍達や梶原一騎の影響だろう。漫画『空手バカ一代(原作:梶原一騎、作画:つのだじろう、影丸譲也。大山倍達を主人公とした物語)』を読んで、多くの格闘家が育った。

 本誌の読者ならお判りになる通り、プロレスはケンカの強弱を示す競技ではない。かつてのプロレス・ファン(特に新日本プロレス=アントニオ猪木ファン)は『プロレスこそ最強の格闘技』と信じていたが、もはやそんなことは夢物語だ。
 だが、いくら『寸止め』とはいえ、オリンピックでの空手は勝敗を競う。『寸止め空手』が実戦的(つまりケンカ)ではないとは言い切れず、オリンピックの空手選手がケンカになったら、やはり桁外れに強いだろう。

 ところが、オリンピックの空手には『寸止め(組手競技)』だけではなく『演舞(型競技)』もある。『演舞』は相撲で言うと、実際に相撲は取らずに、横綱の土俵入りで勝敗を競うようなものだ。スケートに例えるなら、空手の『寸止め』はスピード・スケート、『演舞』はフィギュア・スケートである。フィギュア・スケートでは、審査員の採点により型の美しさを競う。
 これをオリンピックのプロレス競技に採用すると、どうなるだろう。

 つまり、オリンピックではリング上の勝敗に関係なく、プロレスの面白さが採点基準になる。オリンピックは国籍主義なので、上記の初夢とは異なり、団体に関係なく日本代表は日本人同士の試合、アメリカ代表はアメリカ人同士の試合になるのだ。
 たとえば、日本代表の試合ならば新日本プロレスのオカダ・カズチカと、WWEの中邑真輔との対戦も可能になる。逆に言えば、アメリカ人同士となるWWEのブロック・レスナーと、新日本プロレスのテヴィタ・フィフィタとの対戦も有り得るわけだ。そして、最も面白い試合を提供した国が、プロレス競技の金メダルとなる。もちろん、判定するのはプロレスに精通した審査員だ。
 世界の人々の心を打つ試合を演じることができれば、日本プロレス界の金メダルも夢ではないだろう。そうなれば、日本人ももう一度プロレスの面白さを認識するはずだ。

 ……などと考えていたら、初夢から覚めてしまった。果たしてこれが正夢になるのかは、今後のプロレス界次第である。


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