9・16 RISE WORLD SERIES幕張大会 選手インタビュー

❒田丸辰インタビュー
鈴木選手はひとつ上のチャンピオン。格上なので「食ってやろう」という感じです
9月上旬、大塚の平井道場を訪れると、すでに頬がこけた田丸辰がいた。9月16日、一階級上の王者に挑むスーパーフライ級王者は「今回は減量から意識してやっています」とキッパリ。「KOでも判定でも圧倒的な勝利を確信している」と不敵な笑みを漏らした。(聞き手◎布施鋼治)
 
──先月には平井道場の平井明道会長の郷里で毎年恒例の夏合宿を行なったと聞きました。
田丸 きつかったです。特に坂道ダッシュ。結構筋肉痛になりました。今年も行った収穫はありました。普通に楽しかったし、リフレッシュはできたんじゃないかと思います。
 
──合宿前には鈴木選手との試合の話も来ていた?
田丸 そうですね。合宿に行く前、8月10日くらいに話を聞いたと思います。「やってやろう」という気になりました。僕がファン目線で見るとしたら、楽しみでどうなるんだろうと思います。
 
──RISEでは久しぶりの現役王者対決となりました。田丸選手が10戦無敗ならば、鈴木選手は16連勝中。お互いリスクは高い。
田丸 無敗vs連勝は意識していないです。鈴木選手はひとつ上のチャンピオン。格上なので「食ってやろう」という感じです。逆にリスク的にいったら向こうの方があると思うし、僕は楽しみながら倒そうと思っています。
 
──これまでの接点は?
田丸 一緒に練習したこともなければ、喋ったこともないです。この間の会見の時、裏で少しだけ話をしただけです。
 
──鈴木選手を対戦相手として意識するようになったのはいつ?
田丸 そうですね。那須川選手とやりたいというからには、その前に倒さなければいけない相手だと思っていました。昨年良星先輩が鈴木選手に負けた時には「すごく強い選手だな。倒したい」と少し思いました。(階級も異なっていたので)まだやるまでには至らないけど、軽くそう思っていました。自分がRISEの王者になった頃には「やりたい」と思うようになりました。最短距離で那須川選手とやるためには鈴木選手との対戦は避けられないですね。
 
──良星選手との一戦はかなり参考に?
田丸 そうですね。でも、僕と先輩は闘い方が全然違う。一応ネットに上がっている鈴木選手の動画は全部見て研究しています。良星先輩からも「こういうのがあるよ」という話を聞きながら対策を練っています。ただ、先輩の話は参考にしつつ、自分の中でできそうなことを取捨選択しようと思っています。
 
──警戒している部分は?
田丸 パンチでガツガツ攻めてくるので、パンチが強いというイメージがありますね。
 
──鈴木選手は「闘って勝てると思われていることに腹が立つ」と語っています。
田丸 格闘技は個人的に強いと思われている相手を倒していく。そこにロマンがあるからこそカッコいい。鈴木選手が勝って当たり前で、KOするだろうと予想している人も多いでしょう。僕も前回の試合(初防衛戦)で、多くの人に「田丸は政所に圧倒して勝つだろう」と予想されていたけど、それは大きなプレッシャーになりました。今回はそういうプレッシャーを鈴木選手が背負うので、対照的に僕は気持ち的に楽にできます。
 
──下馬評は右から左へ受け流せる?
田丸 そうですね。まわりの意見は気にしていないです(微笑)。
 
──那須川選手は会見でシビアに3-7で鈴木選手が有利という予想を立てていました。
田丸 そうですね。しかも「僕がアドバイスすれば、田丸選手が勝てる確率が上がる」とまで発言していましたよね。与えられた試練ではないけど、これは那須川選手の僕に対する「自分で考えて、俺のところまでたどり着いてこい」という愛のムチだと解釈しています。
 
──プラス思考ですね。
田丸 目の前の敵を一人ずつ倒していけばいずれ那須川選手に近づく。そういえば、この間の会見では那須川選手と一言も喋っていないですね。でも、少しずつ認めてきてくれているのかなという思いはあります。
 
──いつになく集中している感じですね。
田丸 そうですね。試合後のことや次は誰とやりたいとか、他のことは全く考えていない。55㎏級のベルトを欲しいという気持ちより、いまは鈴木選手を倒したいです。
 
──いまは不安より期待の方が大きい?
田丸 ハイ(キッパリと)。楽しみです。

写真:田丸辰1
気持ちを高めるためだろうか、道場には何枚も鈴木真彦の写真が貼られていた 
 

❒鈴木真彦インタビュー
王者対決は夢の対決でも何でもない。普通に僕が勝ちます。
巷で話題になっている鈴木真彦vs田丸辰と現役王者対決。しかしながら鈴木にとっては、それが気に入らない。話を聞くと、対戦相手の個人名は一度も発することなく、不機嫌に「王者対決は夢の対決でも何でもない。普通に俺が勝つ」と言い放った。(聞き手◎布施鋼治)
 
──7/21RISE大阪大会では、WKN世界フライ級王者エマヌエル・テッティ・メニチェッリを相手に3回ダウンを奪いTKO勝ち。地元で自分の良さを最大限にアピールすることに成功しました。
鈴木 エマヌエル選手は体も強かった。本当に倒せてよかったけど、あの声援と熱気はヤバかったですね。
 
──病み付きになりそう?
鈴木 やっていて気持ちが良かったです。
 
──試合後は記念撮影やサイン攻めにあっていましたね。
鈴木 RISEのチャンピオンになってから、その数はメチャクチャ増えてきました。声をかけてもらえることは本当に嬉しいけど、まだまだですね。
 
──その心は?
鈴木 だって今回も相手が『鈴木とやりたい』と言っていることは聞いていたんです。ということは舐められいてる証拠じゃないですか。やってわからせてやろうと思いました。
 
──試合のオファーが来た時、ムッとした?
鈴木 そうですね。本当にムッとしました。
 
──この一戦について那須川選手は「7-3で鈴木選手が有利」と予想していました。
鈴木 ホ~ッ、そうなんですか。知らなかったです。でも、7-3ではない。10-0。そういうところも含めて「鈴木はやっぱりヤバい」と思わせたい。僕、負けず嫌いなので。
 
──大成するアスリートは負けず嫌いであることが必要最低条件だと思います。
鈴木  ハイ。僕は気持ちだけなら、どんな選手にも負けていないです。みんな同じことを言うけど、絶対僕の方が勝っていると思う。今回は圧倒的にKOすることはもちろん、相手の心を折るくらいの試合をしたいと思います。「再戦がしたい」となんて絶対言わせない。
 
──今回契約体重は54㎏。いつもの55㎏より1㎏低い設定体重です。大丈夫?
鈴木 僕、イノベーションに出ている時は53.5㎏で闘っているので、54㎏だったら普通に落とせます。全く不安はない。
 
──大阪大会に続き、今大会もビッグマッチ。最初から最後まで好カードが並んでいます。そうした中で、自分を光らせることは大変だと思います。
鈴木 そうですよね。いい試合になるかどうかは相手あってこそ。相手も那須川二世といわれているし、現役王者対決ということで楽しみにしている人も多いと思うけど、試合が終わったら「やっぱり鈴木は違うな」という感想で終わると思います。その先には那須川戦が続いていると信じたいです。
 
──現役王者同士の対戦ということで、巷では夢の対決と見る向きもありますが。
鈴木 夢の対決になんてならないですよ。確かに結構盛り上がっているようだけど、面白い内容にはならない。普通に俺が勝つという流れになると思います。
 
──何ラウンドから行く?
鈴木 行けたら、しょっぱなから行きます(語気を強めて)。
 
──ただ、先日の堀口恭司vs朝倉海を例に出すまでもなく、勝負の世界に絶対はありません。
鈴木 ハイ。だから僕も絶対油断はしないですよ。これから最終調整だけど、全体的にレベルアップさせて大阪以上の派手なKOをお見せします!
 
──標的にしている那須川選手の-58㎏トーナメント決勝の行方は気になる?
鈴木 そうですね。お客さんとして普通に見ていたい。志朗選手も強敵を倒して勝ち上がってきているので。勝負の世界は何があるかわからないですから。


❒原口健飛インタビュー
僕、昔からチャンヒョンの大ファンなんですよ
 
7/21地元大阪大会ではル・ジュンを相手に1RKO勝ちを飾った原口健飛(FASCINATE FIGHT TEAM)。その勢いで9/16RISE幕張メッセ大会ではチャンヒョン・リーと激突する。実をいうと、原口はチャンヒョンの大ファン。憧れの選手との直接対決に、原口は複雑な胸中を明かした。(聞き手◎布施鋼治)
 
──7/21RISE大阪大会の盛り上がりはすさまじいものがありました。
原口 さすが大阪という感じでしたね。想像以上の盛り上がりでした。僕が知る限り、他のどのイベントより盛り上がっていました。観客席には知っている人も多かったし、やっとRISEのことをわかってもらえると思いました。選手として、「もっと頑張らないと」と思いました。
 
──応援団はどのくらい?
原口 5~600名ほど来てくれました。今回は初めて格闘技を見に来る人も結構多かったけど、「見れてよかった」と言ってくれる人がたくさんいました。僕も勝つことができたので、余計に格闘技のことを好きになってくれたと思います。
 
──そうした中、対戦相手のル・ジュン選手は計量をオーバー。結局グローブハンディに減点を与えたうえで試合が成立することになりました。
原口 もう対戦相手を信じるしかありませんでした(苦笑)。応援団もたくさん来る予定だったので、試合ができへんことが怖かった。でもネガティブなことを思っても仕方ないので、あることだけを祈っていました。
 
──自信満々ですね。前回の1RKO勝ちの勢いで9/16幕張メッセ大会にも出場することになりました。しかも、対戦相手はRISEスーパーフェザー級王者のチャンヒョン・リーに決まりました。
原口 嬉しいけど、相手が相手なので、ちょっと怖い。もしかしたら対戦相手のことを怖いと思うのは初めてかも。
 
──そうだったんですか。
原口  僕、昔からチャンヒョンのことが大好きなんですよ。自分がデビューして彼の存在を知ってから大ファンなんです。僕の家族もそうなんですよ。
 
──憧れの選手と対戦することになったわけですね。
原口 ハイ、チャンヒョンは謙虚やし、強い。本当に見習いたい選手です。

──会話をしたり、一緒に練習したことは?
原口 話をしたことはあるけど、練習したことはないです。お互いいつかはやるんじゃないかという感じはあったので。
 
──現時点で恐怖と楽しみの割合は?
原口 半々ですね。その比率はたぶん試合当日まで変わらないと思います。それもまたいいのかな、と。多少の恐怖心がないと、気が抜けるので。チャンヒョンはパンチャー。「倒されるかも」と思いながら練習した方がいい。
 
──試合前は最悪の事態も想定する?
原口 ハイ、いつもそうです。その方が心も落ち着く。今までも「絶対勝とう」なんて思ったことがないです。これから僕は63㎏でやっていくつもりだけど、彼は60㎏級のチャンピオンなので、勝てば大きな自信になるし、負けても自信になるんじゃないですかね。
 
──今回61㎏級の世界トーナメントの決勝も行なわれます。気になる?
原口 あんまり…。ほかのことは考えないようにしているので。
 
──現時点での試合のイメージは?
原口 足を使ったら、たぶん勝てると思います。だからフットワークを駆使してスピードで勝負しようと思っています。その一方でそういう自分はイヤだという自分もいるんですよ。打ち合える時にはしっかりと打ち合いたい。そうした方が自信につながるという考えもあるからです。チャンヒョンに勝ったら、もう誰にも負けないんじゃないかと思えるほどの自信につながるでしょう。
 
──ところで、先日独立。新たに「FASCINATE FIGHT TEAM」を立ち上げたと聞きました。
原口 ハイ、会長は父親だし、自分のジムなのでモチベーションは全然違います。作戦は会長と一緒に立てています。
 
──指導者と血がつながっていると阿吽の呼吸が計れるメリットがある一方で、近すぎるがゆえに窮屈な部分もあるのでは?
原口 それはありますね。でも父だからこそケンカもできるし、言いたいことも言える。今でもたまに言い合いはしますよ。今回の試合のオファーが来た時も父は「断った方がいいんじゃないか」と言っていました。「でも、お前がやりたいならやってほしい」と言う考えだったのでやることにしました。
 
──大阪大会に続き、今大会も超満員が確実視されています。そうした中で試合ができることは?
原口 勝てば、自然に自分も名前も売れるんじゃないですかね。前回同様、三日月蹴りを狙っていきますよ。他にも狙っている攻撃があるので楽しみにしていてください。お互い1Rは見ると思うので、勝負のクライマックスは後半じゃないですかね。


❒秀樹インタビュー
嫁(いつか)からは『一番、家族を支える立場だから負けられないね』と常にプレッシャーはかけられています(笑)
2月の後楽園大会で白鳥大珠とRISEライト級王座を争ってから7か月、ついに秀樹がリングに戻ってくる。現在の心境を聞いた。
 
――2月後楽園大会での白鳥大珠選手とのライト級タイトルマッチで左スネが割れTKO負けでしたが、今回ようやく復帰戦が決まりました。
秀樹 下半身のパワーには自信があるので、今までにも蹴って当たりどころが悪いと自爆して打撲になったことはあったのですが、今回のようなスネが避けるような事態は想定外でした。出血具合は問題なかったのですが、骨が見える状態だったのでドクターもビックリしてこれ以上続けると感染症の危険もあり、そうなると足切断も可能性もあるということでドクターストップとなりました。理由はどうあれ負けは負けです。自分なりにやり切った中でああいう結果だったので、ここで負けたことは自分の人生に置いて何か意味のある負けだったと思うようにしています。今回は復帰第一戦なのでもうこれ以上負けれないですし崖っぷち状態なので、絶対に勝つしかないという気持ちで凄く気合いが入ってます。白鳥選手と再戦するために、しっかりインパクトを残す勝ち方をしないといけないとも思ってます。
 
――その白鳥選手はチャンピオンとなり、RISE WORLD SERIES 2019 -61kgトーナメントに出場。同大会で行われる決勝戦に進出するなどの活躍をしていますが、どのように見ていますか?
秀樹 自分がそのトーナメントに出て今回の幕張大会のメインを飾りたかったという想いは強くなります。今置かれている状況の中で勝ち続けて彼に近付くことだけを集中しています。
 
――いつぐらいから練習を再開したのでしょう。
秀樹 7月ぐらいまでは痛みがありましたが、徐々に慣らしていき今はだいぶ完治しています。左の蹴りが使えない期間は、コンビネーションで左の蹴りのモーションを入れるだけの練習をやっていました。今回の試合が決まるまでは常に白鳥選手のことが頭にあったので彼の弱点を研究して、彼に合った戦い方を追求してきましたね。
 
――白鳥選手が夢に出てきたことは?
秀樹 あります(笑)。リベンジに成功し、浜川(憲一)会長と抱き合って喜んでいる夢が3回ぐらいありました。ちなみに1回は延長戦で勝ち、2回はKOで勝っていたのでいいイメージができています。
 
――今回の相手、稲石選手についてはどのような印象がありますか?
秀樹 以前から知っていた選手で、変則的なスタイルですが、他の選手が打たないような体勢でありつつ、ガードは低めながらも自分ももらわない角度で蹴りやパンチを打っています。どこからでも攻撃が飛んで来るというイメージを持って、試合では常に集中して変なものをもらわないにすることが勝つことの重要なポイントだと思います。
 
――もらわない自信は?
秀樹 稲石選手は攻撃がパターン化していて、なぜそういう体勢やタイミングで打てているのかをわかっているので、こういう攻撃が来たときにどの位置にいればもらわないというイメージは頭の中で完璧に描けています。トリッキーな選手なので戦いやすくはありませんが、振りが大きいので僕の得意なカウンターを入れられるチャンスはいっぱいあると思います。
 
――今回の試合に向けて“鬼嫁”として知られるいつかさんから何かアドバイスは?
秀樹 『一番、家族を支える立場だから負けられないね』と常にプレッシャーはかけられています(笑)。休んでいる期間は、そういう時期こそ大事だと思っているのでいつ試合が決まってもいいように集中を切らさずに練習していましたし、ラントレでの800m走では自己記録を更新していたので『頑張っているね』という言葉はもらっていました。
 
――稲石戦ではどういう勝ち方をイメージしてますか?
秀樹 幕張大会という大きな舞台でほぼチケット完売という状況なのでたくさんの人が見てくれます。RISEは誰でも出られる舞台でもなく、しっかりKOで勝たないと僕の使命は果たせないと思うので、KOにこだわった勝ち方をして白鳥戦をアピールしたいと思います。
 
――ちなみに世界トーナメントでは白鳥選手に優勝してもらいたいですか?
秀樹 優勝してもらわないと話が色々とややこしくなってしまいます。白鳥選手が世界一になった時に、僕がリベンジして世界一を証明したいと思います。一度対戦した時は、僕の方が実績があり向こうは挑戦する立場でした。今度は逆な立場になるので、僕が彼のものを獲りにいく挑戦者の気持ちでやりたいですね。できれば年内での再戦を希望します。いい勝ち方をするので期待していて下さい。
 

❒稲石竜弥インタビュー
僕は、闘い方も私生活も変態。今度私生活の方の取材もお願いします 
RISE.100での郷州力戦以来、実に5年ぶりのRISE参戦となる稲石竜弥(TEAM OJ)。週に一度TEAM TEPPENへの出稽古を欠かさない男は「自分は変則といわれるけど、これからは変態ファイターを目指す」と宣言した。 (聞き手◎布施鋼治)
 
──調べてみたら、RISE参戦は郷州力戦以来、5年ぶりとなります。
稲石 あの時は100回記念大会だったけど、今回もめっちゃデカい幕張大会で、ワールドシリーズのファイナルラウンド。僕の対戦相手もいい選手なのでワクワクしています。
 
──RISEの印象は?
稲石 RISEにはジムのTURBO先輩が出ていた時から見ていたので、「自分も出てみたい」とずっと思っていました。初めて出たのが5年前で、それから5年後に再び出られるとは…。いまRISEは一番勢いのある団体じゃないですか。
 
──モチベーションは高まっているようですね。
稲石 自分の闘い方はよく変則と言われているけど、最近は変態ファイターといわれているんですよ。名付け親はTEAM TEPPENの那須川弘幸代表なんですけどね(微笑)。
 
──TEPPENにはよく出稽古に行っているようですね。
稲石 ハイ。もう4~5年お世話になっているけど、天ちゃん(那須川天心) は会うたびに強くなっています。進化のスピードがヤバい。僕は毎週土曜日にお世話になっているんですけど、数週間ぶりに会うと、メチャクチャ強くなっている感じです。
 
──年下だけど、見習うべき点も多い?
稲石 勉強になります。リスペクトです。土曜日が楽しみでしょうがない。話は飛んでしまったけど、RISEでは「この人は変態だ!」と思われる試合をしたいです。この間、那須川会長からも「稲石君、変態でいいんだ、変態で」と背中を押されてしまいました(笑)。すごいアドバイスだと思いつつ、そう言われると一層やりやすい。まあ、見れば、この人の闘い方は変態だとわかるんじゃないですか。自分だけの色を出していきます。
 
──対戦相手は7か月ぶりに復帰を果たす秀樹選手に決まりました。
稲石 TEAM OJの青木(弘行)会長から「まだ正式に決まったわけではないけど、秀樹選手とやる?」という話をいただいた時、僕はすぐ「やる」と答えました。
 
──相手が強ければ強いほど燃える。生粋のファイターですね。
稲石 意味がわからない選手や知らない選手とやるより、(秀樹のように)名前もあって、強い選手の方がモチベーションは上がります。相手がサウスポーであることを意識せず闘いたいです。
 
──この階級で秀樹選手は体が大きいことでも知られています。
稲石 本当にデカいですよね。以前、彼が60㎏で闘っている頃、僕も61㎏で闘っていたので、一緒に練習したことがあるんですけど、その時から一階級上の選手だと思っていました。
 
──その時の記憶は?
稲石 なんとなく蹴りは強いなという印象は残っています。でも、今まで相手のミドルキックで体が痛くなったことはないので大丈夫。もうすぐ31歳だけど、体力の衰えもないし、全然元気です。ターゲットは60㎏か63㎏。タイトルマッチには最短でいきたいです。
 
──サラリーマンキックボクサーの鑑も目指す?
稲石 月曜から金曜まで茨城県から東京・日本橋まで片道1時間半かけて通いながら、制服の製造をしている一般メーカーの営業をしています。大学を卒業してから6年ほど、いまのような生活をしていますね。バアちゃんの世話もあるので、地元を離れる予定はないです。あっ、仕事ぶりは変態ではないですよ(笑)。
 
── そっちも変態だったら、会社をクビになるかも(笑)。
稲石 ちなみに私生活も変態なので、今度映像チームと一緒にそっちの取材もお願いします。たぶん変態すぎて、映せないかボカしばかりになると思いますが。
 
──楽しみにしています(微笑)。


❒梅野源治インタビュー
白鳥選手はパンチで勝負してくると思うけど、僕には当たらない
「いったいどこまでRISEルールに適応できるのか」という意見をあざ笑うかのように決勝まで進出した″日本ムエタイ界の至宝″梅野源治(PHOENIX)。白鳥との大一番を控え、彼はアッと驚くスパーリングパートナーと拳を交わしていた。
 
――トーナメント決勝戦が近付いてきました。調整はいかがでしょうか。
梅野 スパーリングパートーナーとして卜部功也君とゲーオが来てくれ、うちのトレーナーも白鳥対策を凄く練っているのでかなり準備万全になってきました。功也君とはこれまで交流がなく、もともとゲーオが試合4週間前から来る予定でしたが、軍隊の仕事の関係でタイに戻っていて日本に戻るのが遅くなるというんです。それでサウスポーの対人練習ができないなと困っていた時に、僕の友人にその話をしたら功也君のお父さんと友人が同じ職場だと。功也君のお父さんが『梅野選手の決勝戦の相手はサウスポーだからうちの功也と練習してくれたらいいのにね』と言っていたというので、僕もお願いしたいことを友人に返答したら『僕で良かったらよろしくお願いします』と功也君から連絡が来てすぐに決まりました。自分の練習を削ってまで今でもジムに来てくれています。今週は功也君が来た翌日から4日連続でゲーオ、その後に功也君が来るというサイクルになります。
 
――2選手とスパーリングの成果はいかがでしょうか。
梅野 7月の準決勝のチャンヒョン・リー戦前はタイ人選手を呼んでムエタイルールではないヒジなしのキックルールでスパーリングをしてましたが、今回は二人ともサウスポーで、このルールの世界最高峰の選手です。ライト級とスーパーフェザー級の二階級を制覇した功也君、スーパーライト級を制覇していたゲーオというK-1三階級のチャンピオンがPHOENIX GYMに来てくれることは凄く心強いですし、体重も今回の試合にぴったりと合っていて、これ以上ないスパーリングパートナーですよね。功也君は白鳥選手の動画を見ていて対策も教えてくれるので、かなりいい感覚です。K-1やRISEに定期的に参戦している選手と比べると、僕はムエタイでのパンチの打ち方になっているのでそういうルールでのパンチの打ち方はそんなに詳しくはなく、功也君は自分とは違う見方で白鳥選手のことを分析しているので凄く勉強になります。もともとサウスポーが相手だと苦手意識があったのですが、やっていくうちにそれはなくなっていて、二人とも僕のことを進化していると言っているのでかなり手応えを感じています。
 
――白鳥選手は前回の準決勝で優勝候補のセクサンからパンチでダウンを奪って大差を付けて判定勝ちしました。白鳥選手のパンチをどのように見ていますか?
梅野 彼はパンチがうまいと結構言われてますが、僕はずっと疑問だったんですよ。身長はありますがパンチはあまり伸びてきませんし、セクサン戦がうまくハマっただけであって、うちのトレーナーも『うまくはない、全く怖がる必要はない』と言うんです。彼はパンチで勝負してくると思うのですが、僕には当たらないんじゃないかなと。パンチ一発の重さは功也君やゲーオの方がありますし、スピードも功也君の方があり、ゲーオはタイミングが凄くいいですから。
 
――逆に評価していることはあります?
梅野 ボクシング上がりの選手はあまり他の技を交えたコンビネーションを使わないイメージなのですが、彼は結構ローキック、ヒザ蹴りを上手くつないでいてパンチ一辺倒の攻めになっていないのはいいことだと思います。それでセクサンはガードした時に亀になっていたのでヒザ蹴りをもらってしまいましたよね。
 
――前回のチャンヒョン戦も振り返っていかがでした?
梅野 チャンヒョンはパンチでガンガン攻めてくるので、ひたすら蹴りまくる作戦がばっちりはまりました。彼の攻撃で想像以上だったことはパンチが重かったことでしたが、2R以降になったら腕がダメになりパンチを打てなくなると思っていたら、それがぴったりとはまり右のパンチは数えられる程度しか打ってこなくなりましたよね。
 
――今年、RISEルールでの3戦目でしたが、試合を重ねるたびに自身がルールに適している手応えはありますか?
梅野 RISEの伊藤(隆)代表がチャンヒョン戦前の5月に試合(イ・ギュドン戦)を組んでくれたことでRISE3連戦となり、どのタイミングでどの攻撃を出したらいい、この距離感だったらこの技がいいというのは次第に感覚が掴めてきました。次はRISEルールに適応した戦いがより出来るんじゃないかなと思っています。
 
――ご自身が世界トーナメントを制覇した姿はすでにイメージできていますか?
梅野 うちのタイ人トレーナーは『絶対に勝てる』と言っていて、向こうのタイ人トレーナーはそのトレーナーに『ムエタイルールだったら勝てないけど、RISEルールだったら勝てる可能性があるのでチャレンジさせて欲しい』と言っているそうです。僕はRISEのベルトは巻いてませんが、ルールは違えどトップ選手であることは間違いありません。向こうもそれを思っていると思うので、思わせるだけでなく今回しっかり勝って、結果で差をわからせたいなとも思っています。
 
――チャンピオンになれば定期的にRISEルールに参戦しますか?
梅野 ムエタイと並行してやっていこうと思っていますし、ヒジあり、ヒジなしの2路線を同時にやっている選手はいないからこそ価値があると思っています。2つの路線でチャンピオンになれば本物じゃないですか。自分で可能性を限定せず、どっちのルールも対策さえしっかりすればチャンピオンになれることを証明したいと思っています。
 
――ちなみに優勝賞金1,000万円の使い道は?
梅野 今までに60戦やってきて、賞金トーナメントに出たのは初めてです。車とか何かを買おうという物欲はなく、親に旅行をプレゼントしたり、トレーナーにご馳走したいと思います。
 
――会場に来てくれるファンにメッセージをお願いします。
梅野 一般的に立ち技はムエタイが最強だと見られてますが、そうではなく、梅野源治が世界で一番強いということを証明するのでリングでの戦いを楽しみにしていて下さい。


❒白鳥大珠インタビュー
倒すならパンチ。いいイメージでいけば、試合は1Rで終わる
トーナメント準決勝では“難敵”セクサンからダウンを奪った末に判定勝ち。漢をあげた白鳥大珠(TEAM TEPPEN)。その勢いで決勝では梅野源治(PHOENIX)との日本人対決に臨む。数か月前の弱気な王子はどこへ。乗りに乗る王子に話を聞いた。 (聞き手◎九島亮)
 
──激闘を乗り越えてのトーナメント決勝戦。実感はありますか?
白鳥 二つとも海外のチャンピオンに勝ち上がってこれたんで自信になっています。自分が決勝に行くと予想していた人はほとんどいなかったと思うので、周りの予想を裏切るというか、そういう部分でも楽しい。周りが何か言っていても「何とでも言っておけ」と開き直っています。
 
──梅野選手の印象は?
白鳥 日本のムエタイをここまで作り上げてきた人。そういう選手とやれることはうれしいし、自分もここまで来たなという感じがします。けど、そこで満足してはいけない。自分がもっと大きくなるためには、そういう選手を超えることも大事じゃないですか。
 
──相性は?
白鳥 メッチャいいと思いますね。自分の闘い方がばっちりハマるでしょう。過去何試合か梅野選手のvsサウスポーの試合を観たけれど、反応が鈍いですよね。相手の蹴りが強いということを想定したとしても、僕のパンチは十分届く。そもそも誰に対してもパンチは結構当たるんで、反応しづらい何かかがあるんだと思います。
 
──やっぱりボクシングをしっかりとやっていたから?
白鳥 打ち方を変えているというのもあるけど、タイミングもそう。もちろん梅野選手のスタイルを見ていてやりにくそうというのもありますけど。仮に梅野選手がサウスポーに苦手意識を持っていて対策をとって来たとしても、1か月程度の期間では無理。そんな簡単に対策を実行できるわけがないですよ。
 
──決勝戦ということで高額な賞金もかかっています。そうした中、もし梅野選手が勝ちに徹した闘い方をしてきたら?
白鳥 いや、自分は変わらないです。気持ちも変わらない。相手が勝ちに徹しようと、自分のやることも変わらないし、そこで変に焦る必要もないでしょう。ただ自分がやるべきことをやるだけです。相手が勝ちに徹するのは別に怖いものでもないし。
 
──ボクシングからUターン後、無傷の8連勝。何が大きく変わったのでしょうか?
白鳥 2本の腕だけで闘うことで攻撃面だけではなく、ディフェンス面も向上したんだと思います。久々にキックのスパーリングした時、キックの選手相手だとすごくやりやすい。ボクサーとやるとほとんどパンチは当たらないけど、キックボクサーが相手だと当たる。だから、すごいやりやすい。相手が前に来ても見えるし。最近は相手のパンチをもらう気がしないですね。大晦日にポカを犯した以外、クリーンヒットは一発ももらっていないです。
 
──蹴りがあってなおかつパンチもある。さらに身長もあるというのは大きな武器ですね。
白鳥 そこも自分のアドバンテージだと思います。ただひとつだけ懸念材料があるとしたら、相手の身長がほぼほぼ一緒くらいなんですよね。今までそういう相手とはやったことがないんで。
 
──先日、永末“ニック”貴之トレーナー主宰の白馬での合宿にも参加していました。収穫は?
白鳥 今フィジカルトレーニングを週2回やっているけど、何か質問がある時にニックさんはしっかりと答えてくれるんです。だからその練習の理屈を把握したうえで練習できていると思います。
 
──最後に決勝のイメージはありますか?
白鳥 なんとなく自分の中でいいイメージと悪いイメージを考えたことはあります。倒すならパンチ。いいイメージで行けば、1Rで終わる。蹴りの対応力は向こうの方が上手だと思うんで。でも僕だってパンチだけではないので、蹴りも使うし、梅野選手の蹴りが強いからといって別に蹴りで勝負しないというわけではない。1Rが大事になってくると思います。
 

対戦カード・大会概要

9・16 RISE WORLD SERIES幕張大会 選手インタビュー

天心と決勝を争う志朗が必勝を期して長野県白馬村でトレーニングキャンプ!