ハイキック一閃シェフチェンコ防衛!セフード2階級制覇:UFC238シカゴ


“ザ・ナイトメア”ディエゴ・サンチェスとクレイ・グイダのボコボコの打撃戦、2009年6月20日のアルティメット・ファイター「米国vs.英国」大会の激闘が、‘Fight Wing’(名勝負)部門としてUFC殿堂入りした。なんでも最初のシーズン1が記憶に残るものだが、そこで優勝した”悪夢” サンチェスと、元ストライクフォース王者にして、珍しい長髪のまま試合する野生的なグイダのスリリングな攻防こそ、総合格闘技UFCがお茶の間に浸透して、大衆が「UFCが面白い!」と職場から学校まで世間に話題にされるようになった契機のカードであった。

 シカゴの客はプロレス大会でもブーイングや野次がやかましいが、トニー・ファーガソンが終了ブザー直後に一発ドナルド・セラーニに入れたことでヒールに。但し、それが原因ということではなく、セラーニはやってはいけない鼻をかむことをしてしまい、鼻が折れている時にこれをやると空気が入ってみるみる右目が膨れ上がり塞がってしまった。これでは続行は無理。ジョー・ローガンは最初にマイクをファーガソンに向けたが、ヒールになっていることを自覚しているのかあっさりセラー二に先に話させるよう仕向け、本人も自身のミスと認める。最後はわだかまりもなく、お互いが抱き合っていたのが印象的だった。

▼Fight of The Night当然!

 オハイオ州出身のジェシカ”Evil”アイはホワイトスネイクの♪Here I Go again入場曲が、明らかに他の選手より長く会場に流れる。世代が変わっても受け継がれているということになろう。
 ヴァレンティーナ”Bullet”シェフチェンコは昨年末12月8日、『UFC 231』のUFC世界女子フライ級王座決定戦でヨアナ・イェンジェイチックを下し王座戴冠。母国キルギスへの凱旋には大統領からメダルも貰う歓迎だったというが、現在はぺルーのリマ在住だ。1Rは終了間際にV1アームロックが極まりかかったが、女子特有の柔らかさもあって逃げられたものの、2Rに左のハイキック一閃。「フライ級がUFCの未来」と英語で述べたあと、ロシア語と、ペルーなのでスペイン語でもなんか言っていた。

 トリを締めたのはバンタム級王座決定戦。ヘンリー・セフードは北京オリンピック男子フリースタイル55kg級金メダリストだ。マルロン・モラエスを仕留めるとフライ級王座ベルト、五輪メダルも掲げて「トリプルクラウン」と「ヘビー級にも負けてないからギャラアップ!」をアピールしていた。

 日本はWOWOW中継だが、肝心の米国ではESPN+経由のみのストリーミング視聴有料購入になり、PPV市場から撤退してしまったUFCである。親会社の株式上場を控え、回ごとに上がったり下がったりに一喜一憂するよりも、固定でがっぽり安定収益を確保するほうが、株価形成にはメリット大と判断された経緯になるが、一時の日本のK-1が、一般人には「もうなくなったんでしょ?」と思われてしまったのと一緒で、現在米国ではハードコア層はともかく、ロンダ・ラウジーの名前がお茶の間で飛び交った時代からしたら、同じく「終わった、なくなった」との認識になっている現実がある。せっかく内容充実の大会だったのに、数字的にはあまり多くには見られてないということだ。
 これが選手にとって何を意味するかとなると、もう「PPV収益の%を寄こせ」とかの契約交渉が使えなくなったことを意味する。コナー・マクレガーも実質引退状態だし、WWEのブロック・レスナーも、ダニエル・コーミエ戦の条件提示はまったく採算ベースにないと蹴られ、ディナ・ホワイトから「レスナーはMMA引退した」と言いふらされる始末なのだ。

■ UFC 238
日時:6月8日(現地時間)
会場:イリノイ州シカゴ ユナイテッド・センター

<UFC世界バンタム級王座統一戦 5分5R>
○ヘンリー・セフード(米国)
 3R 4分51秒 ヒジ⇒鉄槌TKO
●マルロン・モラエス(ブラジル)

 空席となっていたバンタム級王座決定戦。メインイベントでタイトルに挑んだのはフライ級王者ヘンリー・セフードとマルロン・モラエスだ。モラエスは序盤からローキックで王者セフードを攻め立てる。第1ラウンド中盤にかけてモラエスは自身の持ち味であるスピードを駆使しながらセフードを惑わせ、コンビネーション技などを使って着実にダメージを与えることに成功しており、一方のセフードはスタンスを変えるなどしてキックによるダメージをカバーしつつ、少しずつ相手との距離を図っていく。その後、第3ラウンドでモラエスをグラウンドに持ち込んだセフードが一気にパンディングで攻め込み、エルボーをきっかけに緩んだガードの間からパンチを連発させると、ラウンド時間10秒ほどを残してTKO勝利を決めた。フライ級に続き、バンタム級王者にも輝いたセフードはUFC史上4人目の2階級同時制覇を達成している。

ヘンリー・セフード

「マルロンは戦士だ。“ファイト・オブ・ザ・ナイト(敢闘試合賞)”のボーナスだって間違いないはずさ。自分はダブルチャンピオンじゃない。トリプルチャンピオンだ。オリンピック王者にフライ級王者、そしてこれでUFCバンタム級王者だ。このタイトルを手に入れたのは世界中でオレ一人。他の誰にもなし得ていない。俺のことが嫌いだろうと好いてくれていようと、俺こそがパウンド・フォー・パウンドのキングだ。チームのことを信じている。俺がここにいるのは彼らのおかげだ。今は休んで、今年末の試合に備えたい。“セフードの”階級で試合する。フライ級でもバンタム級でも、フェザー級でだって戦えるぞ。どの階級でもかかってこい」

<UFC世界女子フライ級選手権試合 5分5R>
○ヴァレンチーナ・シェフチェンコ(キルギス/ペルー)
 2R 0分26秒 左ハイキックKO
●ジェシカ・アイ(米国)

 セミメインイベントで実現した女王ワレンチナ・シェフチェンコと挑戦者ジェシカ・アイによる、同じく空位になっていた女子フライ級王座決定戦はシェフチェンコが第2ラウンド中盤に左ハイキックをクリーンヒットさせ、衝撃で意識を失ったアイがダウン、シェフチェンコがKO勝利で初防衛を成し遂げた。

ワレンチナ・シェフチェンコ

「私は完璧なMMAファイターだってみんなに言ってきたわ。もし自分がチャンピオンになって、王座を維持したければ、すべてにおいて上回る必要があるとずっと思ってきた。まさにそれをやっているところよ。このスポーツで一番になるためにトレーニングしている。それを今日、披露できて本当にうれしい。女子フライ級のランキング1位につけている人なら誰でもベルトをかけて戦うチャンスを得るべきだと思っているけど、誰にも奪われるつもりはないわ。チョケイジアンとジョジョ(ジョアン・コールダウッド)の試合はあまり見ていない。それに今は次の対戦相手のことなんて考えたくないわ。今日は初防衛を祝いたい」

<ライト級 5分3R>
○トニー・ファーガソン(米国)
 2R 5分00秒 インターバル中にみるみる目が塞がり続行不能TKO
●ドナルド・セラーニ(米国)

 2大タイトルマッチに匹敵するほどの注目を集めていたトニー・ファーガソンとドナルド・セラーニのライト級マッチは、トップコンテンダーの両者が互いの力をいかんなく発揮する大激闘が繰り広げられるも、2ラウンド終了間際にセラーニが右目を負傷してドクターストップとなり、ファーガソンの連勝記録が12に伸びている。

トニー・ファーガソン

「こんな形で勝ちたかったわけじゃない。ものすごく大きな旅路だったし、誰も俺が経験しなきゃならなかったようなことを経験する必要なんてないと思うくらいだ。第2ラウンドで相手の手が下がり始めて、こっちの左はかなり決まるようになったし、向こうはケリを入れてもあまり応えなくなったから、自信が失われ始めたんだろうと思った。そのラウンドの最後に、気持ちがかなり高まって、一発やってやろうと思ったから、ホーンのタイミングでパンチを一発入れたんだ。ホーンの鳴るときにヒットさせたと思うけど、俺が当てようと思っていたのと逆の顔面に当たっちまった。鼻がほぼ折れかけていたと思うし、鼻がやられると目もダメになり始めるんだ。第3ラウンドをファンに見せられなくて残念だし、それについては自分をふがいなく思う。あいつもきっとやりたっただろうから。もし彼がまたやりたいと言うのならできるはずだ。もしカウボーイと俺の再戦でなければ、タイトルに挑戦させてくれ。一度は取ったタイトルだ。なんでこんなにもジェットコースターに乗っているような気持ちになるんだろうな。今回の試合で自分の価値を上げられたと思う。ポワリエがダメになったら、俺がアブダビにいってやってやる。マクレガーが俺と踊りたいと言うのなら、あいつにだって合わせてやるさ。誰だろうとかかってこい」

<バンタム級 5分3R>
○ピョートル・ヤン(ロシア)
 判定3-0(30-27/29-28/29-28)
●ジミー・リベラ(米国)

ピョートル・ヤン

「かなりタフな試合になると予想していたし、ジミーが放ってくるすべての攻撃もプレッシャーもケリも左フックも、全部備えていた。ラウンドの終盤はコントロールをとっておくことが重要で、力強く締めくくることが大事だった。スターリングの試合を見ていたんだ。心から尊敬はしているけど、全然刺激を受けなかった。俺が彼を倒してみせるし、いつかはチャンピオンも倒してやる」

<ヘビー級 5分3R>
○ブラゴイ・イワノフ(ブルガリア)
 判定3-0(30-27/30-27/29-28)
●タイ・トゥイバサ(ニュージーランド)

ブラゴイ・イワノフ

「今回の試合は悪くなかったし、相手が強かったから仕事を果たせてうれしい。3ラウンドの準備はしていたんだ。タイのエルボーはこれまで顔面に受けた中で最大級にヘビーだったから、うまくやれたんだと思っている。次は、UFCに考えてもらうよ。今回の勝利が俺にとっては最大の勝ちのひとつだ。しかも最大のMMAイベントで実現させた。目標はトップ5に入ること」

【プレリム】
<女子ストロー級マッチ 5分3ラウンド>
○タティアナ・スアレス
 判定3-0(29-28/29-28/29-28)
●ニーナ・アンサロフ

タティアナ・スアレス

「自分のベストパフォーマンスではなかったけど、仕事は果たしたわ。最初のラウンドで首を痛めてしまって、とにかくベストを尽くそうとしたの。首を使わずにレスリングを仕掛けたけれど、それじゃ難しくて。ニーナはタフな相手だし、何もかも上手にやってくるけど、この瞬間を私から奪える人がいるとは思わなかった。私を応援するためにたくさんの人が来てくれているの。歩いてくる私の姿を見て本当にうれしそうだったから、もうちょっとで泣きそうだった。そういうすべてが私を後押ししてくれたわ。私がタフなのはみんなが知っていると思うけど、さっきも言ったようにとにかく勝ちたかった。ジェシカ・アンドラージがローズ(ナマユナス)にリマッチのチャンスを与えるならそれでいい、彼女がチャンピオンだからね。私は他の誰かと戦ってまた自分のスポットを得てみせる。でも、リマッチを望んでいないのなら、私が絶対にその試合を取りに行くわ」

<バンタム級マッチ 5分3ラウンド>
○アルジャメイン・スターリング
 判定3-0(30-27/30-27/30-27)
●ペドロ・ムニョス

アルジャメイン・スターリング

「コーチに、俺たちの試合が今日の敢闘試合賞(ファイト・オブ・ザ・ナイト)になると思うかって聞いてたんだ。ペドロ・ムニョスはタフなヤツだし、ノンストップでプレッシャーをかけてくる。その力を見た。お互いに打ち合っていたから、向こうがボリュームをスローダウンさせようとしていたけど、とにかく相手が前に出続けてくるんだ。一発が決まってダウンさせられたらと思ったんだけどね。強かったよ。最高の試合だったと思うし、次に世界タイトルに挑戦するヤツが俺だってことをUFCに知らしめるに十分であることを願うよ。俺は準備バッチリだ。あんなにこっぴどくノックアウト負けを喫したあとだから、埋め合わせられたと思っている。こんなふうに復活するヤツはそう多くないし、俺が活躍する番がきたんだ。ちょっと癒やす時間を取って、試合を振り返って、改善できるところを見つけていかないと。試合から常に学んでいる。今後が楽しみでしょうがないよ」

<女子ストロー級マッチ 5分3ラウンド>
●カロリーナ・コバルケビッチ
 判定3-0(27-30/27-30/27-30)
○アレクサ・グラッソ

アレクサ・グラッソ

「今日は心をあそこに置いてきたわ。最高のキャンプだったし、素晴らしい減量ができた。電話を放っておいて、これまで以上に今回の試合に集中したの。これまで他の国で戦ったことがないかのように今回のキャンプを過ごして、完全に専念してきた。カロリーナは本当に強くて、何発か食らったし、落ち着いて相手に自分は大丈夫だって見せないといけなかった。私のメキシコの心がついていてくれたから、どんなチャレンジも乗り越えている。ストロー級のランキングを駆け上がっていきたい。次の試合はぜひ母国で、9月にやりたいわ」

<フェザー級マッチ 5分3ラウンド>
●リカルド・ラマス
 1ラウンド(4分06秒)KO
○カルヴィン・ケーター

カルヴィン・ケーター

「今回の試合に向けてトレーニングで調整してきたし、今回の勝利で、次に誰を当てられてもいける気がしている。ビジュアル化して現実にできたことが最高だ。自分に向けられてないことが分かっていても、観客の声援はとても楽しかった。エネルギーがあれくらい高いのがいい。何も怖いものはないし、ファンのためにショーを見せられたことが楽しかった。次はトップ15の誰かとやりたい」

【アーリープレリム】
<女子ストロー級マッチ 5分3ラウンド>
○ヤン・シャオナン
 判定3-0(29-28/29-28/29-28)
●アンジェラ・ヒル

ヤン・シャオナン

「アンジェラ・ヒルはとても強い相手だし、彼女を相手にする今回の試合はかなりスマートにならないといけなかった。あのポジションを与えてしまったのは私のミス。あれは予想していなかった。でも、試合が終わったとは思っていなかったし、だからこそ、彼女も私にタップアウトさせなかった。次はランカーと戦うべきだと思う。誰かを指名するつもりはないけれど、トップ10に入れるようにしたい」

<ミドル級マッチ 5分3ラウンド>
●ベヴォン・ルイス
 判定3-0(28-29/28-29/27-30)
○ダレン・スチュワート

ダレン・スチュワート

「前回の試合でスプリット判定負けしたから、今回勝てて最高の気分だ。ベヴォンが俺のパワーを感じれば後退するのは分かっていたし、実際にそうなった。昔のダレンなら観客の反応にこたえてタップアウトやノックアウトを狙ってアホなこともやっただろうけど、今回は落ち着いていた。この後は家族と時間を過ごしながら休んで、新しい契約もまとめて、トレーニングに戻りたいと思っている」

<バンタム級マッチ 5分3ラウンド>
○エディ・ワインランド
 2ラウンド(4分47秒)KO
●グリゴリー・ポポフ

エディ・ワインランド

「ギロチンでフィニッシュできないと分かってからは、トライしても無駄だと思った。チームメイトにいつも言っているんだ。相手が傷ついて、自分もそれが分かっているなら、バックアップさせてフィニッシュする、ってね。向こうが負傷したのは分かっていたから、相手にきっかけを作らせて、仕留めたってわけさ。フライ級よりもバンタム級の方がいい感じだ。試合を続けたい。ファイターの心があるからね。ケージに戻って暴れ続けるさ」

<女子フライ級マッチ 5分3ラウンド>
○ケイトリン・チョケイジアン
 判定3-0(30-27、29-28、29-28)
●ジョアン・コールダウッド

ケイトリン・チョケイジアン

「ジョアンに驚かされたところはまったくなかったわ。もっとガス欠になるかと思ったし、向こうのカーディオはあまり良くなかった。正直、思っていたよりも少し楽だったかな。もっとクリンチを仕掛けてくるかと思っていたけど、でも彼女はそうしなかった。私はランキング2位だし、1勝を追加したところ。この後、タイトルに挑むジェシカ・アイにはスプリット判定で負けただけ。言い訳できないことは分かっているけれど、ジェシカとの試合は本当に最悪だったし、今まで戦ってきた中で一番悪かった。今日の勝者とやれると思っているわ。私はワレンチナになるんじゃないかと思っている」


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