11・5六本木ヒルズでの会見から始まり、大山鳴動したメイウェザー狂想曲。我々メディアも踊らされ、さいたまスーパーアリーナを出られたのは年も明けた元旦午前3:00近くだった。
大晦日フジテレビ地上波という制約が無ければこんなに足元を見られる事もないだろうというぐらいに何もかも譲歩して挑んだ神童・那須川天心だったが、結果はご存知の通り。
そして肝心要の同時間帯フジ地上波視聴率は昨年から微増の7.5%。民放でトップの日テレ『笑ってはいけない〜』に次いで2位は、キー局4位が定位置で「振り向けばテレビ東京」と揶揄される現在のフジテレビとしては善戦とも言えるが、その日テレが減らした3.5%をNHK紅白が奪って40%の大台を回復している。
神童の登場直前、NHKは若者中心に人気の米津玄師を地元徳島から生中継で出演させて、テレビ生歌唱を初披露。歩くのもままならない北島三郎御大を担ぎ出し、サザンオールスターズと松任谷由実のコラボに雪崩れ込ませる老若男女シフトで「皆さまのNHK」の面目躍如、大晦日視聴率戦争は圧勝だった。
結果、フジテレビとしては評価に困る数字が残ったと言えるが、RIZIN=榊原実行委員長は会見で、今後に繋がる闘いになったと胸を張っていた。その後の海外メディアの酷評ぶりはおとそ気分が吹っ飛ぶところだろう。
さて、那須川天心vs.メイウェザー戦が海外メディアで「残酷なKOショー」と酷評されているのは既報の通りだが、「八百長説」まで飛び交いはじめているのはさすがに看過できないところ。
プロレスラーでもない神童が、倒された絶妙のタイミングで人目をはばからず泣ける筈もない。
「最初のダウンはスリップ気味だったのに、頭がぐわんぐわんして立っていられなかった」
との神童の振り返っての言葉通り、2度目3度目のダウンの時は、メイウェザーでなくとも倒せる様な状況に陥っていたが故のリアクションになったと見るべきであろう。
最初に神童が倒された時、インタビュールームにいたメディア陣からは、一様に信じられないといった空気が洩れた。
それは本誌も召還に荷担した「9分間逃げ回るメイウェザー」という虚像を、プロの記者陣一様に共通認識として持っていたからに他ならない。
メイウェザーは確かに引退した41歳のロートルだという認識も正しいが、同時に、「メイウェザーが勝てる相手と踏んだからやる」「圧倒的体格差」を考えれば、当然予想すべき結末でもあった。
神童は減量せずに当日62.1kgという、ボクシングでいえばスーパーライト級の体重で登場、66.7kgのスーパーウェルター級のウェートだったメイウェザーは2つ上の階級だった。だが、神童がベルトを所持したバンタム級なら7階級、スーパーフェザー級なら5階級上という体格差は動かしがたい事実。
「はじめて効いたパンチをもらった」
と、負けてもさすがと唸らされる非凡なコメントを発する神童といえども、悲しいかな人の子であって、蹴りを封じられては最初から必敗の大一番ではあった。
それより問題は、答案用紙にデカデカと回答が載ったテストに間違った答えを書き込んでしまった側にある。
「メイウェザーは逃げ回るだろう」
との予断がそもそも見当外れなのだから、敵地に乗り込んでボクシングの特訓をするという対策も大間違いだった。
「ボクサーに転向してもやっていける」
との評価がリップサービスだったとも思わないが、メイウェザーに自らの拳の威力が筒抜けになった可能性もある。
神童が負けて、お通夜の様な空気になったインタビュールームで入り口付近に陣取っていた筆者含む数名は、RIZIN関係者に
「選手のガードが来るから」
と、反対側へ移動させられた。
そこへメイウェザーが意気揚々と登場し、関係者なのか取り巻きなのか解らない
「マネー軍団」
が雪崩れ込んできた。
メイウェザーは質問を拒否するように蕩々とまくし立て、カウントダウンに合わせて
「Happy New Year」
と、喪中の様な空気を読まずに新年を祝うと、さっさと帰って行った。
一方その後、敗者・那須川天心がインタビュールームに登場した時、付き添ってきたのはRISEで広報を担当する淵脇氏のみ。
無論、自立した人格者なのは神童・那須川天心だろうと思う。だが、かつてのアリ軍団を想像させるような取り巻きが十重二十重にガッチリ守った“マネー軍団”の前には、その姿勢は余りにも真っ正直過ぎた。
あの大一番は、那須川天心 vs.メイウェザーではなく、TEAM TEPPEN vs. マネー軍団であるべきだった。そうならなかった時点で、神童は負けていたのだ。
結局、フジテレビもRIZINも神童も傷つき、遺ったのは焼け野原だけとも思える。
唯一希望があるとすれば、
かつて
「倒れた奴はまた倒れる」
「負けから学ぶ事は何も無い」
と言い放ってきた神童が始めて味わった敗戦の後にインタビューで宣言した
「今日の事は2度と忘れない」
との決意表明であろう。
捲土重来を期す神童・2019年の巻き返しに大いに期待したい。
無謀だと言われた挑戦でした。
結果は倒されてしまいましたが後悔はしてません
自分の20年間でもメイウェザー選手に届かなかった
けれど勇気を持って前に出続けました
メイウェザー選手、応援してくれた皆さん、ありがとうございました
思いは形に出来なかったけれど
僕はこれからも挑戦し続けます。 pic.twitter.com/YqDT1z3aZX— 那須川 天心 (@TeppenTenshin) 2018年12月31日
ダリオン・コールドウェルは立ったままでインタビューに挑み、
「今度は北米でケージの中で堀口恭司と闘いたい」
と再三発言。
「フィニッシュのギロチンは予想していなかったのか?」
との質問にブチ切れて途中退席となった。
「ベルトが壊れてるのでRIZINさんが修理すると持っていきました」
と笑いを誘った堀口恭司はトロフィーを持ってのフォトセッション。
ギロチンチョークはダリオン・コールドウェルが唯一負けた時の技だったので、狙っていたとの事。
勝っても負けても涙の印象となった浅倉カンナ。
「世界のレベルを実感した」
と言葉少な。
長野美香も同じく言葉少なに敗戦の弁。終始うつむき加減だった。
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