”柔術マジシャン”ノゲイラ、桜庭とディナー

かつてリングス、PRIDEで王者になり、UFCでもヘビー級暫定王者になった“柔術マジシャン”ことアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ。

現在はUFCの役員としてブラジルの新人選手発掘や育成、ブラジルでのUFC大会のチェック、そして世界各国を“UFCアンバサダー”として回り、UFCの普及に忙しい日々を送っているノゲイラだが、9月22日行われたUFCファイトナイト・ジャパンにも来日し、記者会見にも出席した。

その際には、ノゲイラのドキュメンタリーを撮影するブラジルの撮影班も一緒に来日し、筆者もノゲイラ本人から「私のことを最もよく知っている日本人記者」として指名され、インタビューを受けた。この撮影班は、かつてリングスでノゲイラと引き分けたことのある髙阪剛のジムも訪れ、髙阪にもインタビューした。

ノゲイラのドキュメンタリー撮影班と髙阪剛氏(後列中央)。髙阪氏の隣が監督、その隣は筆者。髙阪道場=アライアンス・スクエアにて。
髙阪氏の道場、アライアンス・スクエアでノゲイラ・ドキュメンタリー撮影班からインタビューを受けた筆者

筆者が訊かれた質問の1つは、「ノゲイラのどの試合が最も強く印象に残っているか?」というものだ。

それに対して筆者は2試合を上げた。2002年8月に国立競技場で開催されたDynamite! SUMMER NIGHT FEVER in 国立でのボブ・サップ戦だ。

9万人超と呼ばれる大観衆を集めて行われたこの大会で、ノゲイラは飛ぶ鳥を落とす勢いだったボブ・サップと対戦した。

サップはK-1で王者アーネスト・ホーストを1RKOし、PRIDEでは山本宜久や田村潔司らリングス出身の日本人スターをやはり1RKOして、当時はまさに無敵の超獣ぶりを発揮していたのだ。

ノゲイラは、そのサップにパワーボムでマットに叩きつけられて腰椎がズレる重傷を負いながらも、2R 4分3秒、腕ひしぎ十字固めで逆転一本勝ちし、大観衆を熱狂の渦に巻き込んだのだ。普段は比較的クールな日本人記者たちも、このノゲイラの勝利には思わず立ち上がって拍手したほどだった。

筆者が選んだもう1試合は、ミルコ・クロコップ戦だ。
2003年11月のこの試合では、ミルコの必殺のハイキックを食らいながらも、2R 1分45秒、腕ひしぎ十字固めで逆転勝利している。

日本人が好む、大逆転劇が多い選手だった。

ただ、この撮影班のインタビューを終えて帰宅してから、もう一言、言い忘れたことがあったのに気がついた。

それはヒョードルとの試合である。

ノゲイラやヒョードルと3度戦い、2度判定で敗れたが、1度はヒョードルがカットして出血し続行不可能となったため、ノーコンテストとなった。

だが、ヒョードルがノゲイラに勝った試合は3月と12月で、いずれも寒い時期だった。この時期、ノゲイラの住むブラジルのリオは夏で、40度近い気温だが、そこから0度近いさいたまスーパーアリーナに来て戦った。(一度は雪まで降っていた。)
それほど気温差があれば、体の動きが少し悪くなる。

一方、ヒョードルの住むロシアはその時期、マイナス20度以下なので、日本に来たら温かく感じ、体もよく動く。

両者の実力は非常に拮抗していたので、そうした気候の違いが勝敗に影響したと考えていいだろう。

そして、ノーコンテストになった試合が行われたのは8月だった。ヒョードルは日本の真夏の暑さでスタミナを削られたのか、他の2戦より動きが悪い。この試合では、ノゲイラの方が優勢に見えた。

だから、2度、寒い時期にやったので、もう一度、今度は夏に対戦すべきだと筆者は思っていたのだ。

もしノゲイラが復活するようなことがあれば、ぜひヒョードルとの4度目の試合を見てみたいものだ。

桜庭と再会し、夕食を共にしたノゲイラ

さて、今回の来日中、ノゲイラは桜庭とディナーを共にし、Instagramに写真をアップしている。

桜庭とは、同じ時期にPRIDEのスターとして活躍した仲間であり、ノゲイラも桜庭も、ともに「UFCの名誉の殿堂入り」している。

また、ノゲイラの弟、ホジェリオは桜庭とPRIDEで戦い、判定勝ちしたこともある。

ノゲイラは、「親友の桜庭と東京でディナー!」と書いている。

10月15日に桜庭はRIZIN福岡大会でダン・ヘンダーソンとグラップリング・マッチで対戦するが、もしノゲイラが桜庭のセコンドに付いたりすると非常に面白いだろう。

UFCファイトナイト・ジャパン記者会見でのノゲイラ。「ジェシカとクラウディアの試合が楽しみだ」と語っていたが、まさにその通りの激闘で大会ベスト・ファイトになった。

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