ディック・スレーター追悼:2005年シャーロットでの思い出

 1996年に背骨を負傷して引退、2003年にはその痛みを押さえる為に薬物を服用し始め、交際中の女性に傷害罪を犯し逮捕されてしまい、1年の自宅軟禁と2年の保護観察処分で精神的ダメージを受けていた頃の2005年。シャーロットで開催されたNWAレジェンドショーに、忽然とディック・スレーターは姿を現した。重々噂でスレーターの現状は察していたが、私にとっても久しぶりに御会いできた嬉しさで感動さえ覚えた。

 ただその姿は現役当時よりかなり重量感が増し、顔も飲酒のせいも手伝ってか、かなりふっくらとしていた印象が深い。
 会場にはかつてのファンク一家だった兄貴分のドリー&テリーのザ・ファンクスも参加していて、特に会場でディッキーと再会したテリーの喜びようは尋常ではなかった。
 また、その会場に参加していたジャック・ブリスコやスタン・ハンセンらも、かわるがわるディッキーに声をかけ懐かしく話しこんでいた。
 その夜はホテルのカウンターバーでテリーとディッキーは久々の再会で、じっくりとお酒を傾けながら明け方まで話しこんでいた姿が印象深い。

 私世代においては、1974年”右利きのテリー”が初来日してからあっという間にエネルギッシュなファイトぶりから日本のファン(特に女性ファンが多かった)の心を掴み、1986年のチャンピオンカーニバルでブッチャーの火炎攻撃にもめげず、包帯を捲いてジャンボ鶴田と決勝を争った姿を思い出す。
 テリー・ファンクにおいては、同世代の戦友達が次々と亡くなって行く現状に、どんなに悲しくそして寂しくなっているものかと彼の心情を察する。

 昭和の名レスラーがまた、亡くなってしまったなぁ・・心からご冥福をお祈りします。


藤井 敏之

全盛期はジャンボ鶴田らと激闘を繰り広げた”喧嘩番長”ディック・スレーターさん亡くなる