武藤敬司“ラストムーンサルト”に教え子たちが集結!「俺が武藤さんに勝って、ピンフォールを獲って、手術に送り出したい」師であり憧れの存在に最大限のエールを!KAIインタビュー(フリー)
3月14日(水)に開催される後楽園ホール大会。武藤敬司が人工関節を入れる手術をする前の最後の試合を行なう。そこに集うのはかつて武藤の元で薫陶を受けてきた教え子たち。一昨年までWRESTLE-1に所属していたKAIもその一人だ。W-1時代には武藤からW-1チャンピオンシップを奪った実績を持つKAIだが、久々の師匠との対戦にどのような思いを抱いているのか? 話を聞いてみた。
──まず久々にW-1に参戦するということになったんですが、どのようなお気持ちですか?
KAI まあW-1に参戦するというのも感慨深いものがありますけど、今回はやっぱり武藤さんのためにという意味合いが強いですよね。自分にとっては武藤敬司のためにというのが参戦を決めた一番の理由ですからね。
──武藤選手が3月末に人工関節の手術をすることになりまして、その手術前の最後の試合となるんですが、このことを最初に聞いた時はどのように思われましたか?
KAI 正直、びっくりしましたね。最初は本人からじゃないところからその情報が耳に入ってきて、本当なのかなって思ったんですけど。
──人工関節を入れる決断をしたというのはにわかには信じがたい情報ですよね。
KAI でも、自分がW-1を辞めてからも、違う団体で会ったりするんですよ。その時に実際に武藤さんの姿を見ていてヒザは相当悪いんだな、キツイんだなとは思っていました。ただ、人工関節を入れる手術って、簡単に決断できることではないですからね。
──その後どうなってしまうのか、ちょっと想像がつきづらいですよね。
KAI いや、ベイダーさんがしていたというのは聞いていたし、武藤さんも「したほうがいい」と言われていたみたいなんで、聞いたことがないような話ではなかったんですけどね。それでもっていうのはありましたけど。
──今、KAI選手は全日本プロレスを主戦場にされていますけど、武藤選手も昨年から2回上がっているじゃないですか? 昔を知っているKAI選手にしてみれば、現在の姿を見ていると、そのつらさや症状のひどさもわかりますよね。
KAI そうですね。昔から、普段の私生活もつらそうだったし、そのひどさもわかるんですけど、リングに上がればそれが「ウソじゃないか?」っていうぐらい動けていたという印象があったんですよ。ただ、昨年から今年に入ってのリング上の様子を見ていると、「あれ?」と思ったのが正直な感想ですね。元々悪いんでしょうけど、今は相当悪いだろうなって思いましたね。
──むしろ普段の生活を見ていると、よくリングでプロレスやっているなって思うぐらいの歩き方をしていますもんね。
KAI そうなんですよ。
──そして今回、こういう形で武藤選手から声がかかったわけですけど、率直にどのようなお気持ちですか?
KAI ご本人も言ってますけど、またリングに帰ってくるための手術をするわけですからね。そのために自分は生意気かもしれないですけど、エールを送りたいなと。そういう意味で3月14日はリングに上がらせてもらおうと思っています。
──大手術に臨む前のエールを送りたいと。改めてKAI選手にとって武藤敬司とはどのような存在ですか?
KAI これはずっと変わりませんね。自分が憧れた人であり、師匠なんですよ。武藤敬司がいなければ今のKAIというレスラーが存在しないのは間違いない事実ですからね。自分は武藤塾で武藤さんに拾ってもらったようなもんですからね。
──武藤塾の中で行なわれていた公開オーディションに受かって、KAI選手は全日本に入団したんですよね。しかも、その第1回目ですもんね。
KAI 武藤塾以前のオーディションで受かった河野さんとかもいましたけど、公開オーディションとなってからは俺らが初めてだったんで、あのオーディションで拾ってもらえなかったら今のKAIはないですよ。しかも、なんと言っても、俺が初めてプロレスを生で見た大会のメインイベントで闘っていた人ですから。
──一番最初に憧れた存在であり、師匠であることはW-1を離れてからも変わりないということですね。
KAI それは変わらないですね。武藤さんも以前と変わらず接してくれますし、こっちも何か仲違いして、ケンカわかれしたという気もないので。こっちが勝手に思っているだけかな?(笑)。
──でも武藤選手も団体を辞めて独立した経験がありますし、そこもある意味武藤イズムだから理解してくれてるんじゃないですか?
KAI ハハハハハ!
──そして今回の試合では武藤全日本時代の仲間が集まるわけですけど、今はなかなかリング上で会う機会のない選手も多いですよね。
KAI だから、ある意味、凄く新鮮ですよね。懐かしいメンバーなんですけど、とても新鮮に感じます。そういう部分で今回の試合は凄く楽しみですね。
──しかも、昔タッグを組んでいた大和選手も今回の試合で復帰しますし。
KAI そういう巡り合わせの時に呼んでもらえたことはありがたいことだと思っていますね。
──KAI選手は河野選手、大和選手、中之上選手と組んで、武藤選手&SUSHI選手&宮本選手&浜選手と対戦することになりました。武藤選手とは対戦するという形になったわけですけど、どのようなお気持ちですか?
KAI もちろん味わいにいきますよ。もしかしたら、進化する前の武藤敬司を味わうのは今しかないじゃないですか?
──進化する?
KAI なんか仮面ライダーに生まれ変わるとか言ってたじゃないですか?
──今回の手術はある意味改造手術だから、子供の頃に憧れた仮面ライダーになれるとか言ってましたね。
KAI だから、その前の最後の武藤さんですからね。じっくりと味わいたいですね。
──でも、武藤選手にシングルで勝った人とかベルトを獲った人って限られているじゃないですか? ましてやこのKAI選手の世代では誰もいないですからね。
KAI そんなこともありましたね(笑)。頭を打ちすぎて、すっかり忘れてましたよ。まあ過去は過去じゃないですか? 俺は全然なんとも思ってないというか、「俺は武藤敬司に勝ったんだ!」なんて思って生きてないですからね。むしろ勝ったとは思ってないんで。まだまだ武藤敬司の存在に勝てたわけじゃないし。
──改めて存在の大きさを知ったということですか?
KAI まあ、師匠は師匠ですからね。大きな存在ですよ。
──なるほど。あと、武藤選手の代名詞とも言えるムーンサルトプレスは人工関節を入れたらもうできないということで、今回の試合を最後に封印するということです。これについてはどのように思われますか?
KAI これはしょうがないですよね。人工関節にして壊れちゃったら元も子もないですからね。でも、自分が最初に見たメインの試合は、武藤敬司がドン・フライにムーンサルトからの腕ひしぎで勝った試合なんですよ。それは今でも目に焼き付いていますから。
──1999年4月10日の新日本プロレス東京ドーム大会ですよね。
KAI 思い出の技だし、俺の中ではある意味、ムーンサルト=武藤敬司なんですよ。そういう部分では寂しさはありますけどね。ただ、それほどプロレスにヒザを捧げたのはカッコいいなと思いますね。
──わかりました。では、今回の試合の中でどういうKAIを武藤選手やファンの方に見せたいですか?
KAI いや、俺にできる限りの最大限のエールで、武藤さんを手術へ送り出します。俺が武藤さんに勝って、ピンフォールを獲って、送り出したいですね。
──心置きなく手術に行けるように。最後に武藤選手に何かメッセージはありますか?
KAI お見舞いに行きます(笑)。
──ありがとうございました。当日楽しみにしています!
「命をかけてプロレスをやらせてもらいます」止まっていた時計の針を動かせ!ワイルド、ついに覚醒!!征矢学インタビュー
ついにこの男が目を覚ました。昨年後半は『W-1 TAG LEAGUE』全敗という屈辱的な結果を残しながらも、「気楽にやろうぜ」などと言っていた征矢学が、かつての同志であるAKIRAやタナカ岩石の叱咤激励を受け、本来の闘争心を取り戻し、芦野祥太郎の持つW-1チャンピオンシップに挑戦することを自ら表明した。苦悩の中から立ち上がったその心境、そして3月14日の後楽園大会に向けての意気込みを語ってくれた。
──去年の5月の後楽園大会以来、久々のW-1チャンピオンシップへの挑戦が決まりました。昨年の芦野選手とのタイトルマッチ後はどのようなモチベーションでプロレスをやっていたんですか?
征矢 去年の5月というか、芦野とのタイトルマッチが決まる前から……一昨年の横浜文体からの話になるんですよ。
──本来ならそこでKAI選手のベルトに挑戦するはずが、ケガで出られなかった大会ですよね。
征矢 はい。僕の中では『W-1 GP』に優勝して文体でのタイトルマッチが決まったのに、ケガをして出られなかったことで会社に迷惑をかけてしまったんですけど、そこから時計の針を進められてないのかなと。その後も河野さんがベルトを持っている時に挑戦したり、芦野に挑戦したりしたんですけど、結局時計の針のボタンを押すところまではいっているんですけど、実際は押せてない。要するに結果が出てないということですよね。
──昨年の『W-1 GP』の前にもそういうことを言ってましたよね。優勝して、文体で挑戦して、時計の針を動かしたいと。結局、動かせないまま現在に至ってしまったということですね。
征矢 そう簡単にベルトに挑戦ってできないんですよ。タイミングだったり、それなりの資格があって、初めて挑戦ができる。今回は挑戦するための結果みたいなものは別に出してないんですけど、王者も挑戦者不在ということで、向こうは向こうで燻っていた部分もあると思うんですよね。そういう中でこっちは周りの環境に刺激を受けたり、AKIRAさんや岩石からの熱意もあって、それに応える意味でも挑戦しようという気持ちになったんですよ。だから準備は整っているし、あとは時計の針のスイッチを押すだけですね。
──結果を出すだけだ、と。去年の後半は岩石選手とタッグを組んで、タッグリーグにも出て全敗に終わって、それでも「楽しくやろうぜ〜」みたいなノリでやっていたじゃないですか? あれはどういう心境だったんですか?
征矢 プロレスって奥が深いもので、数学みたいに答えが1+1=2だけではない。何が正解なのかわからないし、人生と似たようなところがあると思うんですよ。その人の生きてきた人生が必ずしも正解とは限らないじゃないですか? あの時期は「これでよかった」と思えるような最終的な答えを探していたというか、プロレスを楽しむことも必要なのかなと思っていたんですよね。
──ただ、周りからは迷走しているとか、迷いがあるとか言われていたじゃないですか? 岩石選手からも、「昔の強い征矢学に戻ってくれ」という訴えが再三ありました。自分の中でも何かに迷っている感覚はあったんですか?
征矢 迷っているというよりは自信がなかったんでしょうね。プロレスラー・征矢学として100%出せていたかというと、その自信はなかったです。正直なところ、将来に向かって突き進むための道というのがあるんですけど、その道自体が俺には見えてなかった。遠くにその目標がかすかに見えるんですけど、そこにたどり着くための道が見えてませんでしたね。
──デビューして10年という節目の年に、道筋が見えなくなってしまったんですね。
征矢 去年は大量離脱されて、急に先輩扱いになっちゃったというのもあるんですよ。今まではどちらかというといち若手という立場だったし、10年プロレスやってるって言っても、まだ10歳ですよ、レスラーとしては。武藤さんやAKIRAさんみたいに30年以上もやっていれば立派な大人ですけど、10年なんて子どもですよ。それなのに立ち位置的には上から数えたほうが早くなってしまったし、方向性などの部分でどうしたらいいのかっていうのがありましたね。
──自分では若手だと思っていたら、急にベテランと呼ばれる立場になってしまったということですよね。
征矢 ベテランでもなんでもないんですよ。勝手にベテランチームになっていますけど、プロレスラーとしては少年なんで。10歳ですよ。小学生ですよ。
──でも、征矢選手が10歳の少年だとすると、今のW-1は3〜4歳の幼稚園に入る前ぐらいの年齢の子どもたちが中心になっていたりするわけじゃないですか? そういうW-1の現状をどう思っているんですか?
征矢 やっぱり限界があるのかなって思いますね。自分がキャリア3年の時に何ができたのかって考えても、結局周りの先輩のほうが話題になったりするし、いくらがんばってもそこには勝てないですよね。未だに武藤さんの存在は大きいじゃないですか?
──大きいですけど、現実としてそういう若者たちがチャンピオンになったり、中心に立っているわけですよ。
征矢 彼らは彼らなりにがんばっているとは思うんですけど、やっぱりその年齢に応じた感じですよね。発言にしても重みがない。そうなってくると社長や副社長、河野さんにしろ俺にしろ、プロレスと違う仕事をしつつも、発言の重さ、行動力、自己アピールには差があるなと思いますね。
──ということは、W-1を今よりも大きくして、さらに盛り上げていくには、やはり自分たちが先頭に立っていかなきゃいけないということですか?
征矢 自分たちというよりは一人ひとりですよ。若手やベテラン関係なく、個々が力を持てば団体も大きくなっていきますよ。だから、NEW ERAがやっていることはあながち間違いだとは思わないんですよ。
──チームとしてまとまるというより、個々がそれぞれの目標に向かって進んでいるのがNEW ERAですよね。
征矢 ただ、稲葉以外のメンバーに「俺がリーダーだ」っていう気持ちがないんじゃないですかね? そういう主張を個々が持てれば、さらに大きくなると思うんですよね。まあ、自分もいっぱいいっぱいで人のことを言える状況ではなかったし、それは感じつつもあえて触れるということはなかったんですけど。
──今回挑戦しようと立ち上がったのはそういうNEW ERAたち若手に対して、お手本になろうという気持ちもあったりするんですか?
征矢 それもないことはないんですけど、やっぱりタイミングですよね。それこそAKIRAさんや岩石の叱咤激励もあったし、あとは2月に全日本プロレスでKAIが三冠に挑戦して、新日本プロレスでSANADAがIWGPに挑戦して、この間、中之上が大日本のBJWに挑戦した。中之上の試合は凄く評判いいですよ。彼らとは道は分かれましたけど、俺は今でもライバルであり仲間だと思っているし、そういう奴らがプロレス界を盛り上げている。しかも、みんな2月でタイミングも重なったし、それも自分の背中を押してくれた原動力の一つですよね。
──あいつらががんばっているんだから、俺もがんばらないと、という気持ちになったということですね。
征矢 何やってるんだろうという気持ちにはなりましたね。
──だからこそ、それまで突っぱねていたAKIRAさんや岩石選手の言葉を素直に受けいられるようになったと。
征矢 だから、AKIRAさんと岩石が閉まっていた扉の鍵を開けてくれたんですよね。あとは自分で扉を押す。それだけですね。
──でも、そこまでいくには髭を切られたり、Enfants Terriblesからの強烈な攻撃がありましたよね。
征矢 彼らに対しては腹立たしい部分もあるんですけど、善い悪いは別にして何かしら自分たちの主張をしていますよね。ちゃんとプロレスをしているなと思います。
──それを率いている芦野選手に関しては、現在どのような評価をされているんですか?
征矢 キャリア3年であれだけ確立されたプロレスラーはなかなかいないと思います。言っていることは腹が立つし、生意気なクソガキですけど、あいつなりの表現の仕方で、自分のいい部分を見せているのはたいしたものだと思っていますね。
──5月に挑戦してから約10カ月経ちますけど、あれからチャンピオンの力は増しているなと感じることはありますか?
征矢 力は増していると思いますけど、芦野自体もプレッシャーに負けてきているのかなと思いますね。
──毎回のように後楽園でメインを務めていて、常にプレッシャーにさらされる状況にはいるわけですけど、ちょっとそれに押されてるという感じが見受けられるということですか?
征矢 それでもたいしたもんですよね。あれだけ挑戦者が名乗り出てくる状況の中で勝ち続けているわけですからね。あいつは最近負けたことないでしょう?
──ないですね。もう1年ぐらいは3カウントもギブアップもしたことがないですね。
征矢 だから、あいつは得たモノも少ないのかもしれないですよね。
──征矢選手があれぐらいのキャリアの頃は負けることが多かったと思うんですけど、そこから得たものが現在血となり肉となっているということですか。
征矢 もちろんです。多分俺は勝った試合より負けた試合のほうが多いと思うんですよね。でも、それが糧となっている。負けて得ることは実に多いんですよ。
──ただ、芦野選手の敗戦の中で、一昨年のグランプリで征矢選手に負けていますよね? ケガをした中での試合だったけど、征矢選手がきっちり叩き潰してくれた、と。それがターニングポイントにもなっていると、この前取材した時には話していました。
征矢 リングに上がった以上はあいつの気持ちを買って、気を使うぐらいだったら叩き潰してやろうと思ったんですよ。
──では、今回はどのような気持ちでその芦野祥太郎と向かい合うんですか?
征矢 1度挑戦して負けてますから、そこは素直に認めて、正々堂々と挑戦しますよ。ベルトを巻いて実現したかったことがいろいろあるんですよ。それがまだできてないし、そこに向かうためにベルトは不可欠ですからね。正々堂々と挑戦して、ベルトを獲ります。
──先程、かつての仲間ががんばっているというお話がありましたけど、当日は武藤選手の試合のために、その武藤全日本時代からの仲間たちが集まります。同じキャリアの大和選手も復帰します。その中で征矢選手がチャンピオンシップに挑戦するわけですけど、やはり彼らが当日同じリングに立つということは力になりますか?
征矢 それも含めて、タイトルマッチに挑戦するタイミングだったのかなと改めて思いますね。ただ、武藤さんの手術前ということもあり、ラストムーンサルトということが話題として一番強くなっているじゃないですか? それじゃいけないですよね。やっぱり個々の力が弱いのかなと思いますね。
──当日はそれを覆すような内容や結果を出さなきゃいけないですよね。
征矢 メインイベントですからね。命をかけてプロレスをやらせてもらいますよ。
──では、応援してくれるファンの方に何かメッセージをいただければと思います。
征矢 俺がどうこうというよりは、やっぱりW-1という団体がプロレスの業界の中で話題が表に出ないし、これから10年後、15年後の成長、そしてW-1の歴史を一緒に見届けてもらいたいなと強く思います。親が子どもの成長を見守るのと同じ気持ちで、見届けてほしいですね。
「『やりたい人間としかやらない』って言って、ただ待っているだけだったら意味がない。自分で壁を作ったっていう感じです」征矢を倒して、さらなる高みへ!見据えるのは二桁防衛!!芦野祥太郎インタビュー
昨年の3月の後楽園大会で河野真幸からWRESTLE-1チャンピオンシップを奪ってから約1年の間、7度の防衛を重ね、盤石の政権を築いてきた芦野祥太郎。もはや挑戦者不在という状況に陥りつつあったが、ここで征矢学が挑戦者として名乗りを上げてきた。二桁防衛を見据え、さらなる高みへと登るためにも芦野が欲しているのは高い壁となりうる相手。覚醒した征矢は、それに足る存在となるのだろうか? 3月14日(水)の後楽園大会で8度目の防衛を目指す芦野に話を聞いてみた。
──去年はチャンピオンシップを毎月のようにやっていたのが、12月の伊藤戦以降はやらなかったと。それが3月14日の後楽園大会で久しぶりにやることになったんですけど、どのような心境ですか?
芦野 去年の下半期は全部NEW ERA相手の防衛戦だったじゃないですか? 本当はベテランとやりたかったんですよ。NEW ERAとやったところで僕のスキルアップにならないんですからね。キャリアは向こうの人たちのほうが少しぐらいは上だと思うんですけど、去年1年間W-1を引っ張ってきたのは自分だと思っているし、対後輩みたいな感じしかしなかったんですよね。
──後輩を相手に胸を貸すという状態ですか。
芦野 先輩を相手にしている感じはなかったですね。それも不満だったし、試合が終わって「挑戦したい」「はい、どうぞ」という流れが嫌だったというのもあるし。それじゃあお客さんもノってこないじゃないですか? 去年の文体の防衛戦のあと、稲葉さんが出てきたけど、捨てられた小犬みたいになってたんで。そんなんじゃお客さんも応援しないでしょう?
──捨てられた小犬にはノレないですよね。
芦野 そういう会社の体質を変えたいなと思って、伊藤を最後にやめようと。だから、やりたい人としかやらないって言ったんですよ。
──やりたい人っていうのは芦野選手が防衛戦をやりたい選手っていうことですよね?
芦野 そうです。でも、なんだかんだで挑戦したいっていう人がいなかったですからね。だから、結局、NEW ERAは口だけなんですよ。「盛り上げたい」とか「引っ張っていきたい」とか言うんだったら、しつこくチャンピオンシップに挑戦してこないとダメなわけじゃないですか? それが副社長が今言っている「主張がない」っていうことにつながってきているのかなって思うんですよね。稲葉さんのインタビュー読んだら、「俺は主張している」って言ってましたけど、それが人に伝わってないと意味がないですからね。
──人に伝わってないと主張にならないということですよね。
芦野 ならないですよ。だって、なんか悪いことをして「ごめんなさい」って言ったのに、相手に聞こえてなかったら謝ったことにならないじゃないですか? 結局、彼らは現状に満足しちゃっている。そこはNEW ERAだけじゃなく、W-1の問題でもありますよね。ベテラン勢もなんか一歩踏み出してない。特に征矢学は一番ダメでしたね。若手ががんばっていこうという中で、過去にチャンピオンシップのベルトを巻いていて、『W-1 GP』も2連覇しているという実績の持ち主が何をやっているんだって話ですよ。
──なるほど。ただ、征矢選手だけじゃなく、ベテラン勢はタイトル戦線、特にW-1チャンピオンシップ戦線においては、蚊帳の外という雰囲気がありましたよね。
芦野 蚊帳の外というよりはあえて一歩引いているなっていう感じに見受けられましたね。若手にスポットライトを当ててあげてるみたいな。でも、2月の後楽園でもNEW ERAとやって、副社長が言ってましたよね、「役者が違う」って。
──あと、「今が全盛期だ」って言ってましたね。
芦野 だから、8人タッグマッチでNEW ERAが食われちゃったわけじゃないですか? そういう力があるのに一歩引いているっていうのはW-1にとってもよくないことですよ。だから、征矢学にももう一回奮起してほしかった。だって、これで勝てば防衛は8回になるし、次は二桁という大台も見えてきますからね。
──芦野選手はデビューしてまだ4年目ですよね?
芦野 4年目ですね。
──その4年目の選手に二桁防衛されてしまうというのは問題があるかもしれないですね。
芦野 そうなんですよ。でも、しちゃうと思うんですよね、現状のままなら。今のようにベテランが若手に譲っているみたいな状況だと、二桁防衛しちゃいますよ。たしかに若い力で盛り上げてきましたよ。ただ、そこにベテランの人たちの怖さや強さが壁となってくれれば、さらに盛り上がると思うんですよね。NEW ERAとだけやり続けるのは、まあ……しんどかったですよ。
──芦野選手が挑むというシチュエーションが後半はなかったですよね。
芦野 それが一番おもしろくない。特に伊藤なんかは4割ぐらいしか力を出してないですからね。頭を使う必要がねえなっていう。上の人たちとやる時はやっぱり違ったんですよ。頭も使うし、身体も使う。試合前から何をやったらいいのかって、頭の中で緻密に作り上げていくわけですよ。でも、それが対NEW ERAではなかったですね。あったのはイケメンぐらいですよ。あとは受けてやればまず勝てるだろうって感じだったんで。
──負けることはまずないから、と。
芦野 まずない。イケメンはああいう感じなんでクルッといくこともあるし、華もあるんでね。
──だからベテランとやりたいと。征矢選手と対戦する時はことさら厳しい言葉を投げかけたりしてましたよね。
芦野 征矢学の場合は逃げているっていう感じでしたね。トップ戦線から逃げている。自信がなかったんじゃないですか? 若手が盛り上げている中、割り込んでいったら邪魔しちゃうみたいな。ギラツキがまったく感じられなかったですよ。楽しくやっててもいいけど、チャンピオンシップを獲りに来いよって。楽しくやっているだけじゃ、それは違うでしょうってことですよ。
──それはW-1のためにもならないよっていうことですよね。
芦野 ならないし、自分が楽しいだけじゃないですか? ファンも楽しいかもしれないけど、本当にそれが見たいのかって。
──AKIRA選手じゃないですけど、チャンピオンシップに挑戦する征矢選手を待ち焦がれていたファンの方もいたと思いますよ。
芦野 ところがお客さんも妥協しちゃっていたと思うんですよね。征矢さんが楽しければいいやって。本当は征矢学ってポテンシャルの塊だと思うんですよ。僕は身体が大きくならないですから。あれだけの身体のでかさでパワーは日本プロレス界でもトップクラスだし、それを活かしきれてないですよね。って、僕が言うのもなんなんですけどね。後輩ですから。後輩にハッパをかけられて、AKIRAさんや岩石に「がんばれ、がんばれ!」って言われてやっと目を覚ましましたけど、それじゃあ遅いんですよ。苦悩しているところなんて見せなくていいんですよ。苦悩していてもリングに上がったらシャキッとやるのがプロじゃないですか? ジョン・シナだって悩んでいるのかもしれない。でも、リング上ではまったく見えないじゃないですか? そうあってほしいですよね、W-1のレスラーにも。特に征矢さんなんて僕にしてみれば、壁になってほしい世代の人だし、それが壁にならないっていうのも気に食わないですよ。壁を俺に任せるなって。
──乗り越える壁がない、あるいはそれが低い状態だと、チャンピオンになっても価値が上がらないですよね。
芦野 そうなんですよ。ただ、今回はこういう感じで防衛戦が決まりましたけど、実際は楽しみではあるんですよ。もう一度征矢学とガッチリできるんで。
──征矢選手とは去年の5月にも防衛戦をやっているわけじゃないですか? その時にはギラツキは感じられたんですか?
芦野 感じられましたよ。ちょっと笑いに走りつつも、目は本当にギラッとしていたんで。あの人は、僕がヒザをケガしてトーナメントに出た時に叩き潰してくれたんですよ。
──2016年の『W-1 GP』の時ですよね。
芦野 僕はそれで強くなったっていうのあるんですよ、精神も肉体もね。そういう意味ではやっぱり征矢学なんですよね。だからこそ、いろいろと言い続けてきたわけだし。
──では、芦野選手のターニングポイントになったのがそのトーナメントでのケガと征矢選手との闘いだったということですかね?
芦野 そうかもしれないですね。考え方も変わったし、あれがあったからこそ常にハングリーでいられるっていうのがあるかもしれないです。相手をするほうも嫌だったと思いますよ。下手すりゃ手術して、1年ぐらいは棒に振らなきゃいけないようなケガだったんで。でも、あの人はガッチリ潰してくれましたからね。あの時も涙を浮かべながらやってくれたんですよ。それだけ情に厚い人だし、やっぱりW-1をよくするためには必要不可欠な存在なんですよね。若手だけじゃないですからね、W-1は。若手の団体って言われますけど、ベテランだって大事な存在なんですよ。
──なるほど。でも、今回はある程度、芦野選手の目論見通りに事は運んでいるということですよね。
芦野 今、奮起した征矢学に勝てば、もう一段上にいけるし、二桁防衛も見えてきますからね。そうなれば、もうちょっと広い景色が見えてくると思うんですよ。さらに自分が次のステップに進むためのね。そういう意味では今回の防衛戦は何よりも大事ですね。
──ただ、これまでの防衛戦は出てきた人たちを相手に挑戦を受けてきたというのはありますけど、今回は自分から作ったというか、仕向けた的なところはありますよね。
芦野 そうですね。自分で「やりたい人間としかやらない」って言って、ただ待っているだけだったら意味がないですからね。自分からふっかけていって、自分で壁を作ったっていう感じですよ。
──逆に言うと、今の自分には高い壁が必要だということでもありますよね。
芦野 そうなんですよ。それはNEW ERAじゃないし、あれは段差ですからね。
──段差(笑)。
芦野 つまづくかつまづかないかっていうだけしかないし、僕が欲しいと思っている壁ではないです。
──わかりました。では、今回の征矢学は逃げていた時期に比べて、手応えはありそうですか?
芦野 今はまだ元に戻ってきているなぐらいですね。5月の時を超えてないんで、今度の九州ツアーの4連戦でどうなるかですね。
──3月8日から3月11日までの九州ツアーでは4大会連続で前哨戦を行ないますよね。
芦野 まあ、この4連戦とタイトルマッチを合わせて5連勝する気満々ですけどね。全部タップさせようと思っています。
──では、3月14日の後楽園ではどういう芦野祥太郎が見られますか?
芦野 今まで通りの盤石ぶりを見せますよ。目を覚ました征矢学の技を受けた上で、アンクルロックでタップさせて、さらなる高みに上がっていきたいと思っています。
「クルーザーは第2代のチャンピオンだったのが悔しかった」栄えある第1回の『CRUISER FES』優勝で雪辱へ!アンディ・ウーインタビュー
元クルーザーディビジョン王者であり、今回の『WRESTLE-1 CRUISER FES 2018』の優勝候補の一人でもあったアンディ・ウー。順当に決勝戦まで駒を進めることができた。対戦相手は1月8日の後楽園大会で自身の窮地を救ってくれたアレハンドロ。マスクマン対決となったこの記念すべき第1回の決勝戦に向けて、アンディはどのような気持ちで臨もうとしているのか? 話を聞いてみた。
──初めて開催されたクルーザーの祭典『CRUISER FES』において、アンディ選手は元王者ということもあり、本命という見方をされていたと思うんですが、決勝戦まで進んだという結果に関してはどのように思われていますか?
アンディ そのつもりで参戦していますからね。決勝戦まで来て、初めて『CRUISER FES』ですから。
──ここからがようやく本番だということですね。ここまでの試合を振り返ると、1回戦は因縁のドランク・アンディでした。とりあえずこれまでの抗争に関して、ケリをつけられたんですかね?
アンディ いや、結構ダメージを負わされたので、悔しい気持ちは残ってますね。しかも、ヒザをやられたんですけど、ヒザが痛すぎて、マスクを取り返すのを忘れてしまったんですよ。
──奪われていたマスクはあと1枚残ってましたもんね。
アンディ そうなんですよ。終わったあとに、「そういえばあいつがマスクを持ったままだな」と気付いて。
──では、宿題が残ってしまったという感じですね。
アンディ そうです。うっかりしてました。だから、この決着は持ち越しですね。
──まだまだ続行だということですね。そして準決勝はタイトルマッチをやったこともあるMAZADA選手でしたね。
アンディ 全日本プロレス時代から何十回、何百回とやってきている相手ですけど、体力的に疲れたというよりは読み合いで疲れたという感じですね。
──2月18日の清水大会での試合をしたわけですけど、場外に出て撹乱されたりと、相変わらずのインサイドワークに長けた部分を見せつけていましたね。
アンディ 想像してたんですけど、未だにどうくるかわからない部分が多いんですよ、MAZADA選手に関しては。
──シングルマッチだけでも結構やっているので、それなりに手の内はわかっているのに、すべてを読みきれないという感じですか?
アンディ そうなんですよね。反則とかしてくるなと思ったらクリーンにやってくるし、今日はクリーンに試合してくるのかなと思ったら、反則してくる。でも、試合をしていても楽しいですね。
──それは同じ反則をしてくるにしても、ドランクとは違うと。
アンディ ドランクを含めてEnfants Terriblesの連中は欲の塊ですよね。人を引きずり下ろしてやろうっていう私情を絡めてやってくるから、MAZADA選手のそれとは種類が違いますね。MAZADA選手の場合はテクニックですからね。だから、金的攻撃をされながらも「うまいな〜」とか思っちゃったりすることがあるんですよ。そこでくるかっていうタイミングでやってきますからね。
──レフェリーのブラインドをついての反則も立派なテクニックですからね。
アンディ そういうことですね。
──そして、決勝戦の相手はアレハンドロ選手になりましたけど、これはアンディ選手的には予想していた相手ですか?
アンディ 予想もしてましたし、この顔合わせになったらおもしろいなという思いもありました。第1回目の『CRUISER FES』の決勝が……まあアレハンドロが若いかどうかはわからないですけど(笑)、おそらく若い者同士の対戦になったし、NEW ERA同士でやることになったんで、結果的にこの組み合わせになってよかったと思います。NEW ERAについては近藤さんがいろいろ言ってますからね。
──NEW ERA批判を展開していますよね。
アンディ いろいろ言っていますけど、ベテラン軍はベルトは持ってませんから。結果として今回だってNEW ERAで決勝戦をやるわけですからね。
──ここらでNEW ERAの力を見せてやりたいというところですね。
アンディ いや、見せたいのは自分の力ですね。僕はNEW ERAとイコールなんで。
──NEW ERA=アンディ・ウーということですか?
アンディ いやいや、自分のために力を尽くしますけど、それが結果的にNEW ERAのためになればという考え方ですね。NEW ERAのため、というのはなんか違う気がするんですよね。結局、自分がいなかったらプロレスも何もないわけで。人のためにとか考えるよりは、自分のためにしていることが人のためになっている、それが僕の中ではパーフェクトなんですよ。
──結果的にアレハンドロとの試合がいい試合になって、それがNEW ERAの力を示すことになれば、それでいいと。
アンディ それでいいです。もちろん勝つのは僕ですけどね。
──なるほど。アレハンドロ選手とはタッグを組む機会が多かったですけど、間近でその闘いぶりを見ていて、実力的な部分ではどのように感じていらっしゃったんですか?
アンディ 十分にあるんじゃないですかね。決勝まで来るかなと思ったんですけど、やっぱり来ましたし。特にあのDDTには気をつけないといけないですね。体力があってもあの一発を食らったらキツイでしょうから。勢いもありますし、決勝戦で対戦するのが楽しみですよ。
──ルチャのベースを持っている選手ですけど、どういう印象を持たれていますか?
アンディ ザ・ルチャドールという感じですね。僕もメキシコでルチャは習得してきましたけど、その概念を捨てたいなという感じでやっているので。
──ルチャの概念を捨てたい? アンディ選手の中でルチャというのはどういう位置づけなんですか? もちろん一番の基礎にあるベースは中国拳法なんでしょうけど、ルチャもアンディ・ウーというレスラーを構成する大事な要素の一つですよね。
アンディ そうですね。中国拳法に融合できるように、いろいろなものを取り入れているんですよ。ルチャ、アメリカのプロレス、日本のプロレス、それぞれを取り入れつつ融合させる。だからこそ、それぞれの概念自体は捨てていかなきゃいけないんです。
──そこが100%ルチャベースであるアレハンドロ選手との違いですね。
アンディ ルチャは僕の中では自己表現をするツールの一つなんで、そこまでこだわる必要性は感じていません。ただ、あのDDTは危険でしょうね。僕もまだ食らったことがないんですけど。
──あの技で助けてもらったことはありますけどね。
アンディ あの時はありがたいなと思ったんですけど、今となってはそんな技を使うんじゃねえっていう感じですね(笑)。ただ、第1回目の『CRUISER FES』ですから、優勝します。
──やっぱり第1回に優勝すれば歴史に名を刻めますもんね。
アンディ 前にやったクルーザーの初代王者を決めるトーナメントでは1回戦で負けてしまったんですよ。クルーザーは第2代のチャンピオンだったのが悔しくて。どうせなら初代が欲しかったというのがありますよね。だから、今回の第1回の『CRUISER FES』は絶対に優勝したいです。
──あと、MAZADA選手から問題提起があった試合順の問題ですけど、アンディ選手はどのように考えていらっしゃるんですか?
アンディ それは僕らにも責任があるかなとは思っています。会社にそこの位置に組ませた責任があるなと思います。
──では、今回の決勝戦で、来年からは会社が安心してメインや後半の試合で組めるような試合を見せたいということですね。
アンディ そうです。だから、ファンの方もアンディ・ウーvsアレハンドロの決勝戦をまばたきしないようにして見ていてください。
対戦カード・大会概要
3・14『「WRESTLE-1』後楽園ホール大会 全対戦カード決定!スカルリーパーA-ji&2代目上田馬之助インタビュー
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