[週刊ファイト2月1月号]収録 [ファイトクラブ]公開中
▼タニマチのスケールでも猪木がダントツ
by 井上 譲二
最近の角界のタニマチ事情は知らないが、マット界ではその言葉すらほとんど聞かなくなった。スポンサーという言い方をしているのかもしれないが、せいぜい選手からチケットを買ったり食事に招待する程度だろう。力士たちはそんな人を「タニマチ」とは言わない。ただ、昔も太っ腹なタニマチを持つのは一部のスター選手だけだった。
昭和のレスラーが日常会話の中でよく口にしていた「タニマチ」(後援者)、「金星」(美人女性)、「首投げ」(セックス)、「お米」(カネ)は、もともと角界で使われていた言葉。日本プロレスには力道山、豊登、芳の里など大相撲出身者が多かったため元力士ではないレスラーにも必然的に広まっていったのだ。
だが、力士とレスラーのタニマチを比較した場合、接待のスケールが違い過ぎる。
例えば、46年前にアルバイト先の会社社長から聞かされた話。
その社長さん、同じ近畿大学出身ということもあって横綱・玉の海をひいきにしていたのだが、大阪場所開催中には最低でも1回、北新地の料亭や高級クラブで飲み食いさせ、別れ際には現金50万円を渡していたという。
また、80年代のバブル期には相撲記者から「タニマチが横綱クラスの力士に渡す祝儀や小遣いは100万円を下らない」という話を聞いた。花形力士になると、そんな太っ腹のタニマチを日本全国に10人以上もっているのだから給料、懸賞金を合わせると年棒5000万円は軽く超えるはず。
さて、プロレス界のタニマチに話を移すと、横綱クラスのタニマチを持ったレスラーは過去に2人しかいない。力道山とアントニオ猪木である。