[ファイトクラブ]『大阪野郎は育たない』は本当か!?大阪出身レスラーが少ない理由

[週刊ファイト1月25日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼ 『大阪野郎は育たない』は本当か!?大阪出身レスラーが少ない理由
 by 安威川敏樹
・大阪兵は根性なし?
・「デッカイ穴ぼこがおまっせ」
・相撲取りにも少ない大阪出身者
・今こそプロレス界は、大阪から青田買いを!


 東大阪市花園ラグビー場で行われた今年度の全国高校ラグビーフットボール大会は、東海大仰星vs大阪桐蔭という大阪勢同士の決勝戦となり、東海大仰星が5回目の全国制覇を果たした。ちなみに、大阪勢同士の決勝戦となったのは2度目である。

 今年度でいえば、高校野球の春のセンバツ(2017年)でも大阪桐蔭vs履正社という大阪勢同士の決勝となっており(大阪桐蔭が2回目の優勝)、1年の間に高校全国大会で2回も大阪勢同士の決勝が行われたことになる。さらに女子バスケットボールでも大阪桐蔭が優勝しているので、同校は1年間に全国優勝2回、準優勝1回を成し遂げたわけだ。

 実際に、野球やラグビーでの大阪のレベルは驚くほど高い。プロ野球選手やラグビーのトップリーガーでは、大阪出身者がダントツで多いのである。
 反面、大阪府は全国的に偏差値は非常に低く、早い話が体が丈夫の割りはアホだということだ。そのため、大阪ではデキが悪くて運動神経も鈍い子供は、
「勉強はアカン、スポーツでも稼がれへんのやったら、吉本興業か松竹芸能へ行きや!」
などと母親から怒鳴られるのである。

 これだけスポーツが盛んな大阪だったら、有名プロレスラーも多く輩出しているのだろうと思うと、意外なほど少ない。前田日明や秋山準などのスーパースターはいるが、西日本一の大都会の割には、人口比率でいうとメジャー団体で活躍する大阪出身レスラーはさほど多くないのである。
 逆に、山口出身のプロレスラーは、人口比率に対して多い。長州力と佐山聡(初代タイガーマスク)の両巨頭に、大谷晋二郎や山本宜久など実に多士済々。おっと忘れていた。昨年は本紙『鷹の爪大賞』で新人賞に輝いたターザン山本も山口出身だ。

 大阪と山口、この比率に似ている世界がプロレス界以外にもある。政界だ。大阪出身の内閣総理大臣は非常に少ないが、山口出身は実に多い。初代内閣総理大臣は長州出身の伊藤博文だし、現首相も東京出身とはいえ選挙区は山口である。

 政界はともかく、プロレスラーに大阪出身者が少ないのはなぜだろう。大阪はプロレスが不人気なのかといえば、そんなことは決してない。プロレス興行を行って、最もヒートアップするのは大阪の会場だと言われる。
 それに大阪プロレスという団体もある。決してプロレス熱が冷めているわけではないのだ。

 だが、プロレス界には昔から『大阪野郎は育たない』というジンクスがある。それもあながち迷信というわけでもなさそうだ。
 なぜ大阪出身レスラーが少ないのか、その理由を探ってみよう。

▼大阪出身のスーパースター、前田日明(左)

大阪兵は根性なし?

 プロレスラーになるためには、1に根性2に根性、3,4がなくて5に根性と言われる。大阪人には根性がないので、プロレスラーには向いていないのでは? とも推察されるのだ。
 大阪人に根性がない? いやいや、あるでしょ。金がかかったときの大阪人の根性はハンパではない。

 だがそれは、あくまでも金がかかったときだけのこと。1銭にもならないことには、大阪人は見向きもしないのである。
 そんなことはないぞ! と大阪人である筆者は声を大にして言いたいが、あながち間違っているわけではないので、口をつぐむ以外にはない。

 そんな大阪人気質がよく表れていたのが軍隊だ。明治時代に大日本帝国では軍隊を組織したが、最も弱かったのが大阪人を主体とした部隊と言われている。ホントかウソかは知らないが、銃弾が飛んで来たら真っ先に逃げていたのが大阪兵だという。

 大阪人部隊を茶化した歌が『またも負けたか八連隊』だ。八連隊とは、主に大阪出身者で組織された連隊である。今年のNHK大河ドラマは『西郷どん』だが、西郷隆盛が起こした西南戦争で、八連隊が負けたことを歌われていた。
『またも負けたか八連隊』は、太平洋戦争が終わるまで歌い継がれたという。

『金にがめつい』『商売上手』『お笑い好き』というのは現代でも大阪人を現す気質だが、明治時代から大阪人にはそんなイメージが付いていたのだ。
 商売しか能がなくて頭の中は金のことばかり、そしていつもヘラヘラ笑っている大阪兵は根性がなく、軍隊ではものの役にも立たないと思われていたのである。

▼とても根性がないとは思えない、大阪出身の秋山準

「デッカイ穴ぼこがおまっせ」

 時代は下って第二次世界大戦の頃、久留米連隊から大阪の部隊へ転属となった将校がいた。九州は大阪と違って、勇猛果敢な部隊が揃っている。もちろん、久留米から大阪の部隊に来た将校も、歴戦の勇士として評判の軍人だった。

 ある日、朝鮮半島で大阪の部隊が夜間行軍の演習を行うこととなった。夜間での移動なので私語は一切禁止、物音を立ててもならない。極秘の移動である。もちろん、夜なので辺りは真っ暗、何も見えない。

 暗い夜道、ある兵隊が穴ぼこに落ちてしまった。幸い軽症で済んだものの、これが後に大問題となる。
 穴ぼこに落ちた兵隊を助けた男が、命令を無視して後ろの兵隊に忠告したのだ。

「ここにデッカイ穴ぼこがおまっせ。気ィ付けなはれや」
「ホンマでっか。ほな後ろにも伝えなあきまへんな」

 この情報は、後ろの兵隊に次々と伝えられた。

「ここにデッカイ穴ぼこがおまっせ」
「ここにデッカイ穴ぼこがおまっせ」
「ここにデッカイ穴ぼこがおまっせ」

 演習とはいえ、明らかに軍規違反である。到底許される行為ではない。
 やがて、大阪兵たちの囁き声に、久留米から来た将校が気付いた。

「貴様ら、何を喋ってる!私語は厳禁だ!」

 しかし、将校も大声で怒鳴るわけにもいかない。なにしろ物音を立ててはならない状態である。小声で怒られても迫力があるわけもなく、大阪兵たちは平気の平左だった。しかも、将校がいくら怖い顔をしても、真っ暗闇で見えない。

「ここにデッカイ穴ぼこがおまっせ」
「ここにデッカイ穴ぼこがおまっせ」
「ここにデッカイ穴ぼこがおまっせ」

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