永遠エース、ダイスケ34歳の若すぎる引退ロード～11･14ガッツワールド新木場

　2004年にガッツ石島選手を中心とした学生プロレス出身者が立ち上げたプロレス団体、ガッツワールドは今年の12月に、13周年を迎える。
　団体のエースでもあるダイスケ選手が9月大会の試合終了後リング上から突然引退を発表した。
　ダイスケ選手は34歳、誰が見ても、まだまだこれからという矢先のことで、誰もが何故という疑問を抱いた。
　私がダイスケ選手にインタビュー取材をしたのは、10月17日。先月の大会の試合前だった。
　いままで出すことができなかったのは、聞いたとおり書くことを迷っていた。やはり私は他人の人生を摘み取って記事にして書くことに抵抗があるから、記者には不向きだと痛感した。
　いまになって出すことにしたのは、私をプロレス記者と知りバックステージに入れて語ってくれたからには、ダイスケ選手にも覚悟があったのだと気づいたからだ。
　さらには、プロレスのバックステージに入ることを許可され、プロレスラーのインタビューを取ったのは、私はこれが初めてだった。あるいは最初で最後かもしれないと、思った。
　だから、公開することにした。
　
　試合開始前のあわただしい状況ということもあったので、質問内容はごく単純なものだった。
　年内引退すると発表をされたが体がボロボロというのは本当の理由なのか。リング上の試合を見ている限り、調子はむしろ上がってきているかのように見受けられるのだが？
　「リングに上がるとやはりプロ意識というのか、動けてしまうものです。でも悔しいが体がもうどうしようもない。それとなんというか・・・燃え尽きたという、感じなんです。」

　聞いてはいけない言葉を聞いてしまった気がした。
　燃え尽きた・・・
　彼はそれを淡々として語った。
　そして、だからやはり、相当に無理を重ねてリングに上がっているのだと思った。

　「12月のガッツワールド13周年興行が最後の試合になりますが、大げさでもなんでもなく試合が終わったら松葉杖をつかないと歩けなくなっても構わない位ファンの皆さんに向けて全力でプレイをして、悔いを残さずリングを降りたいと思っています。」
　こう語った其の日のセミファイナルで、ダイスケ選手は大ベテランのミスター雁之助選手と、30分を超える死闘を展開して、惜敗した。
　ミスター雁之助選手にも、この試合前にご自分より年若い選手の引退をどう思うか、寂しいと思いますかと尋ねた。
　「そりゃ寂しいですよ。悔しい気持ちもある。でも、だからって勝負は別。」
　この日の試合中のミスター雁之助選手の表情には凄みより慈愛があったように感じた。

　互いに譲らぬ凄まじい闘いであったにもかかわらず、肌をあわせるふたりの表情のほとんどは穏やかで、別れを決意した恋人たちのように、ふっつりとした潔さがあった。

　きょうの11・14新木場大会メインイベント引退ロード第二弾、ダイスケ選手と公私に渡り親交のある田村和宏選手とのシングルマッチもまた、30分越えの激闘となった。
　試合後半、ダイスケ選手に技を決めながら、田村選手が泣いていた。
　男泣きに、泣いていた。
　
　2004年からお互い切磋琢磨しつつ試合を重ねて7度目の、最後のシングルマッチだった。

■　ガッツワールドvol.113 CHAMPION of G 2017
11月14日 (火)　開場18:30　開始19:00
会場:東京・新木場1stリング
観衆283人（超満員）
＜第1試合　CHALLENGE THE VIOLENCE WALL　30分1本勝負＞
〇バッファロー
　8分29秒　体固め　
●大谷譲二

＜第2試合　新木場異次元対決！　30分1本勝負＞
〇黒田哲弘
　6分47秒　片エビ固め　
●ドレイク森松

＜第3試合　ガッツワールドvsヒートアップ　30分1本勝負＞
ミスター雁之助　〇ガッツ石島
　7分35秒　体固め　※フェイスバスター
兼平大介　●近藤”ド根性”洋史

＜第4試合　TECHNICAL WAR　30分1本勝負＞
〇ヤスウラノ
　9分29秒　回転エビ固め
●CHANGO

＜第5試合　2対3ハンディキャップマッチ　60分1本勝負＞
折原昌夫　〇マスクドミステリー
　12分6秒　エビ固め　※チョークスラム
ディック東郷　●アミーゴ鈴木　梁和平

＜第6試合　GWCタッグ選手権試合3WAYマッチ　60分1本勝負＞
〇TORU　阿部史典（挑戦者組）
　16分13秒　お卍固め　
●翔太　新井健一郎（挑戦者組）
※もう一組は松田慶三　YUJI KITO（王者組）
※第14代王者組6度目の防衛に失敗。阿部&TORU組が新王者となる

＜メインイベント　ダイスケ引退ロード第2弾～インディーライバル対決　名勝負数え歌FINAL～　時間無制限1本勝負＞
〇田村和宏
　32分50秒　片エビ固め　※バスソーキック
●ダイスケ