[週刊ファイト11月2日号]収録 [ファイトクラブ]公開中
▼プロレス界の新説を検証!「ターザン山本は21世紀に甦ったノストラダムス説」
by 安威川敏樹
・ ノストラダムスと五島勉
・プロレス界で一時代を築いたターザン山本
・プロレス・オールスター戦『夢の懸け橋』とノストラダムス
・20世紀の終わりと共に、消えゆく両雄
・火星が幸福に統治する
友人からLINEに届いた。どういう神経をしているんだ? pic.twitter.com/UmzoWwN2KY
— ターザン山本! (@tarzany) October 22, 2017
1990年代、最も輝いていたプロレスラーは誰だろうか。
それは紛れもなく、ターザン山本氏である。
ターザン氏はプロレスラーではないじゃないかと思われるだろうが、どんなプロレスラーよりもプロレスをしていた、と思う。週刊プロレス(ベースボール・マガジン社)の編集長として一世を風靡し、良くも悪くもプロレス界の中心にいた人物であることには間違いない。
しかしその後、取材拒否などに遭って影響力は低下、21世紀に入るとプロレス界でターザン山本氏の名前を聞くことは激減した。
ところが先日、ターザン山本氏は華麗に蘇った! しかもプロレスラーとして。
10月10日、東京・新宿Faceにてターザン山本氏は御年71歳でプロレス・デビューを果たした。これでターザン氏はレッキとしたプロレスラーとなったのである。もう前述のように「プロレスラーではない」とは言わせない。
ところで、ターザン山本氏がプロレス界を引っ掻き回していた頃、日本全体を覆う黒い影が存在したのをご存知だろうか。その影の正体となる人物とは、ミシェル・ノストラダムスである。
ターザン氏が大活躍していた90年代、ノストラダムスは誰もが知っている超有名人だった。といっても、彼がその時代に生きていたわけではなかったが。そのノストラダムスも、今の若い人は知らないかも知れない。
ターザン山本氏とノストラダムス、何の関係もないようだが、実はよく似ているのだ。世紀末となる90年代に脚光を浴び、21世紀に入ると共にその名が急速に廃れていったのもよく似ている。
そこで、筆者は一つの仮説を某番組ふうに立ててみた。即ち「ターザン山本は21世紀に甦ったノストラダムス説」を。
ノストラダムスと五島勉
映画化もされた(c)東宝
日本が高度経済成長に終わりを告げようとしていた1970年代前半、1人の無名なライターがノストラダムスという、遥か昔に死んだフランス人を有名にした。それが五島勉(ごとう・べん)氏である。
この五島勉氏とターザン山本氏はライターとして共通点が多い。「だったら『ターザン山本は五島勉説』にすればいいじゃないか」と言うだろうが、それだとインパクトが弱いのでノストラダムスの名前を使わせてもらった。いかにも三流ライターらしい手法を採ってしまったことをお許しいただきたい。
オイルショックと公害問題が深刻化した1973年、五島勉氏が上梓した「ノストラダムスの大予言(祥伝社)」は、終末思想に乗って大ベストセラーとなった。五島氏が紹介したノストラダムスの予言で最も有名なのが以下の一文である。
「1999年7月、人類は滅亡する」
本当は「恐怖の大王がアンゴルモアの大王を蘇らせる」としか書いてなくて、ノストラダムスは人類が滅亡するなどとは言っていないのだが、五島氏は人類滅亡と強引に解釈した。
「たってノストラダムスってさ、どことなくウソっぽいじゃないか」と普通の人なら思うだろうが、五島氏は「ウ……ウソっぽい!? こ、このガキが……生意気な~ッ!」と反論したのである(例によって「プロレススーパースター列伝(原作:梶原一騎、作画:原田久仁信)」からの引用)。
誰もがウソっぽいと思う人類滅亡予言だが、多くの日本人はこれを信じてしまった。五島氏は「ノストラダムスの大予言」をシリーズ化して、それぞれが大ヒットしたのである。
しかも、ノストラダムスが予言したのは人類滅亡だけではなく、ヒトラーの出現や真珠湾攻撃、原爆投下などを予言的中させたとしている。
それがまた信憑性のある書き方だったので、ますますノストラダムスの大予言を信じる人が多くなり、五島氏以外でもノストラダムス本を出版するライターが雨後のタケノコの如く多数出現した。
しかも、五島氏の予言解読を信じたのはいわゆるカルト信者だけではなく、多くの著名人も信用したのである。1999年が近付き、予言を信じる人々は意気上がり(みんな死んでしまうのに、なぜ意気が上がるのか不思議だが)、人類滅亡のカウントダウンが始まった。