映画『ロック・オブ・エイジズ』9月21日(金)より全国ロードショー公開 主演トム・クルーズ、ボディーガード役ケビン・ナッシュ

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 ブロードウェイのロック・ミュージカルが、ついにハリウッド映画として大スクリーンに登場。80年代メタルを愛した者にはたまらないヒット曲の数々が、これでもか、これでもかと満載だ。おそらくこの映画に出てくる楽曲は全部知っているという方々にとっては、大いに楽しめること間違いなしの推薦作である。
 1987年設定の物語は、そのヒット曲の歌詞内容をプロットにして展開していく。田舎からハリウッドにやってきた少女と、ロックスターを夢見る青年のラブ・ストリーを軸に、架空のロックバンド=アーセナルのカリスマ、ステイシー・ジャック(トム・クルーズ)が絡む。主な拠点はサンセット通りにあるクラブ「バーボン・ルーム」。もちろん「ウイスキー・ア・ゴーゴー」へのオマージュに他ならない。
 意外だったのは配役の選択。本人熱唱のトム・クルーズがロッカーというのを筆頭に、そのクラブのボスをアレック・ボールドヴィンが演じている。「ロックが街を退廃させている」と、クラブを閉鎖に追い込もうとする市長夫人はキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。市長のモデルはどうやらジェリー・ブラウン元州知事(リンダ・ロンシュタットらと浮名)らしい。要するに時代背景を知っているロック者なら、細かい部分までも二重、三重に仕掛けがあり、トリビアの発見が続くから何度も見たくなる種類の作品に仕上がっている。
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トム・クルーズI’m a cowboy, on a steel horse I ride I’m wanted (wanted) dead or alive
 ブロードウェイ初演段階では、ジャーニーの♪Don’t Stop Believin’がフィナーレ曲ということで、一部で「そうなのか?」みたいな賛否両論があったことも事実。しかし、その後のTVシリーズ『Glee』の大成功を思えば、一般大衆向けには正しかったと歴史が証明済みだ。ちなみに、2006年ミュージカル初演の方が先なのだ。レコード発売当時は、インダストリー・ロックだと、いわゆる評論家からは陰口を叩かれたものだが、四半世紀経ってクラシックに昇華した。
 物語でも、主人公男女の最初のデートで、「夜汽車に乗ってあてどのない旅へ」が歌われ伏線となり、エンディングの「己を信じて」に繋がる構成である。もちろん、ポイズンやスコーピオンズもまた、ダサくはなかった。名曲は残ったからだ。
 誉めてばかりでもしょうがない。フォリナーの♪Waiting For a Girl Like Youがデート場面になるのは自然だが、♪I Want To Know What Love Isの使われ方は、舞台版も映画版も解釈が安っぽくてがっかりだ。2時間強の尺に何十曲というヒット曲を次々に凝縮するのだから、いわゆるサビの部分、フックの箇所が台詞の役割を果たすが、パット・ベネターの♪Shadows Of The Nightを使うのなら、やっぱりイントロのステレオ効果箇所を大音量でやってくれよと、詳しければそれだけ不満も出てくる。ホワイトスネイクの♪Here I Go Againは、それは違うんじゃないかとか、サントラのアレンジがしっくりこない楽曲もある。『Glee』以降の映画版作品としては、2曲を混ぜてしまう手法にも疑問符だ。
 もっとも、本当にQueenを聴いて育った者を激怒させた舞台版『We Will Rock You』の史上最低の脚本を思い起こせば、『ロック・オブ・エイジズ』はよく練られてある。『ヘアスプレー』のアダム・シャンクマン監督の立場から指揮を取れと言われたら、なにもPV(ビデオクリップ)を制作するんじゃない以上、物語を回していかないといけない。フラッシュでカット割りせず、正攻法で見せるのは長時間劇場映画のお約束だ。
 ただし、メタル音楽には一貫して冷たかったローリング・ストーン誌の女性レポーターが、ステイシー・ジャックと絡むというのは、いくら映画は一般向きにわかりやすくするのが鉄則とはいえ無理がありすぎ。メタルヘッドにとって、あの雑誌はゴミなのに(笑)。
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No one like you I can’t wait for the nights with you音楽誌記者役マリン・アッカーマン
 さて、ロッククラブの運命やいかに。舞台版とは選曲も違うが、ロックに詳しくない方も楽しめるよう、わかりやすく作ってあるのがハリウッド映画なのである。
 メアリー・J・ブライジがストリップ「ヴィーナス・クラブ」のママ役でびっくり。カメオ出演ではデビー・ギブソンは確認できたが、W.A.S.P.のクリス・ホームズは本人なのかどうか不明。もっとも、ステイシー・ジャックが飲んだくれる場面は明らかに『The Decline of Western Civilization Part II: The Metal Years』のパクリだ。
 そのステイシーのボディーガード役で、結構何度も登場するのはプロレスラーのケビン・ナッシュ。近年映画出演が増えているが9月23日、全日本プロレスの横浜大会に来襲。武藤敬司と組んで太陽ケア、真田聖也組の対戦カードが予定されている。
■ ワーナー・ブラザース映画『ロック・オブ・エイジズ』Rock of Ages
  9月21日(金)全国ロードショー
画像 (c)2012 WARNER BROS. ENTERTAINENT INC.
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