『タダシ☆タナカ+シュート活字委員会 徹底検証!猪木vs.アリ戦の“裏”』を読む。

ある雑感【INOKI SPIRAL】タダシ☆タナカ+シュ-ト活字委員会 徹底検証!猪木vs.アリ戦の“裏”を読む。

 いよいよと言うべきか?或いは、やはり一筆したためられたのだなとの想い。タダシ☆タナカ先生の最新作、『タダシ☆タナカ+シュ-ト活字委員会 徹底検証!猪木vs.アリ戦の“裏”』(ミルホンネット刊)を読ませていただいた。

追記:40周年補講版発売中
 
 「世紀の大凡戦」から「これこそ真剣勝負の極み」、との評価変遷のち、とかくダークな部分をも後世に様々な形で伝わっている、猪木vs.アリ戦。筆者も先だってのTV放送(テレビ朝日開局50周年特別編成番組)を見て、感慨を自身のサイトに吐露させていただいたが、あくまでも少年時の記憶を呼び覚ますものであり、突っ込んで論評した次第では無い。
 主旨は飽くまでも一ファンが見た記憶をなぞっておくことも一興かなと思って記した次第であるから、無論、この一戦のダークな部分への紐解きまでは突っ込んで筆をしたためてはいない。
 タナカ先生のお作は、無論、こういった一ファンの感慨の外にあり、また論評する主旨が違うのだから、読む心構えまで変えて読まねばならない。
 その視点・解析はこれまでのお作同様、微に入っており、秀逸だった。
 
 猪木vs.アリ戦は闘う以前から“ケツ決め”があったと断じられ、引き分け裁定を下した三人のジャッジに言及なされて、その根拠を示されておられる。また当時のTVサイドへの“ケツ決め”裁定のあらかじめの申し渡しがあった!との見解をも示され、様々な観点・角度から論評なされてもおられる。
 筆者のような“最強幻想論”に覆われていた時代のファンタジープロレスをこよなく愛しつつも、そんなファンタジープロレスを演出してきたプロレスラーこそ、最高のエンターティナーだ!と考えられるプロレス者はよいが、こういった検証物を読んで、「ある程度はそうなのかな?と思ってはいたが、裏切られたような・・・・・・」等と思い巡らしてしまう読者には本編はやはり、毒というか、刺激が強すぎるかも知れない。
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 真実を知るということが現実を思い知らされる、もしや嘆きの対象でしかないなら、先生のお作は実際、読まないほうが無難かも知れないとも思うのだ。後付にてさも真実であるかのようにでっち上げられたルール等のまさに“出来レース”とも言うべきこれまでの検証物の記述に関して言及がなされると、先生の健筆は更に加速を増し、非難の一言は容赦が無い。
 あの『1976年のアントニオ猪木』の著者・柳澤健氏のお作にも断を下されておられるから、その論評はこれでもか!といった按配で読者に迫ってくる。事実は事実として受け止めつつも読み物として一線を画せるような、言わば“遊び心も保てる”大人の読者でなければ、その先々と読み進めてはいけない代物かとも思う次第である。
 先生はあらかじめの“ケツ決め”決着を猪木、アリがしっかりと遂行し、が為、その後もふたりの“友情”は続いたのだ!と記され、だがリアルファイトであったとの賛美論評には断固として拒否声明を改めて唱えられてもおられる。
 アリはあくまでもボクシングvs.プロレスのエキシビションマッチをやりに日本へと乗り込んできたのであり、猪木は「プロレスなんて八百長だ!」と揶揄する世間への“徹底抗戦”として暗躍し、最終的にはアリとの前約束を守った・・・・・・との筆者なりの読後感。
 ひとそれぞれの思いはそれこそ百人百様尽きぬだけに、本編への解釈はここまでとしたいが、ご興味お有りの方々以外にも是非、本編を読了なされ、様々な誤解認識を解いていただきたいとの想いも強い。
 「読めば納得」との宣伝文句等を他書などでよく拝見するが、本書こそ、そういった類いの極みだろう。事実誤認を修正しつつ、読み進め、新たなる自身の見識眼を携えたい読者には一読の価値ある好書物である、とここに一筆啓上させていただく次第である。

筆者・美城丈二