デビル雅美引退興行 End of long fight ~長い戦いの終わり~ 12.30後楽園ホール~リアルタイム速報

 まさにプロレス界の女帝という名が相応しい。30年という長きに渡って女子プロレス界のトップヒールとして君臨してきた。引退と復帰を繰り返す事の多いプロレスラーの中で、常に現役として活躍してきたデビル雅美に遂に本日、引退を迎える。

<引退セレモニー>
 関係者、プロレスマスコミに続き、神取忍、キューティー鈴木などゆかりのある戦友達が駆けつけ、会場は暖かい空気に包まれる。週刊プロレス元編集長の浜部は、デビュー当時の竹刀を携えたスリムなデビルのパネルをプレゼント。
 続いて本日試合した選手、スタッフらから花束贈呈。ダンプ松本、コマンド・ボリショイ、ポリス、尾崎真弓、風間ルミ、イーグル沢井、アジャ・コングなど関係の深い選手達と再会に涙を流すデビル雅美。そして最後は実母が駆けつけてくれた。

<デビル雅美、ラストメッセージ>
「ずっと、引退発表をして、まあ約1年ありましたので、普通通りに毎回の試合をやっていく事が出来ました。気持ちがちょっとにぎわしくなってきたのが、12月に入ってからでしょうか。
 なるだけ考えないで一試合、一試合、来て下さったお客様に、いい試合を見て頂く為に、頭の中に引退という文字は消す努力を重ねてまいりました。今日も同じです。
 1試合目のスーパー・ヒールはスーパー・ヒールに成り切る事。歌う時は歌手として皆様の前に立ち、メインではではデビル雅美としてお客様の前に立つ。一生懸命やったつもりです。
 とにかく30年間、今までの選手、そして今ここに来ている選手の中でも、運の強い選手であったと、本当に恵まれた選手であったと思います。
 先ほども皆様の前に出ましたが、母は本当に普通位の大きさで、あの母がこのでかい私を、頑丈な私を生んでくれたお陰で30年間、これといった大きな怪我をする事もなく、25年を過ぎてはじめて大きな怪我を一回だけした、恵まれたプロレス人生だったと思います。
 悔いはあります。わがまま言わせて頂ければ、ただ好きな気持ちだけでプロになれるのなら、一生気の済むまでこのリングに立ちたい。皆さんの前で試合をしたい。正直な気持ちです。
 でも私、プロですから、衰えたデビル雅美を、スーパーヒールを皆様の前でリングに立つ訳にはいかないと思いました。
 しかし、私は本当に恵まれてます、悔いがあろうと、自分が信じたプロという道を全うし、自分で自分の道を決め、自分の引き際をまた自分で決め、何もかも自分で選ぶ事が出来た私は本当に幸せ者だと思います。
 どんなに苦しい事があろうと、どんなに辛い事があろうと、リングの上に立った時、何もかも忘れる事が出来ました。リングに立つ為に、いつも踏ん張っている事が出来ました。皆様のお陰です。
 言葉を捜したんですが、値する様な言葉が見つかりません。
だから、ありきたりですが、本当に、本当に、有難うございました。」

「最後に、私、急にぽっと思った事を言うのが好きなもんですから、今日、本当にこんなに多くのお客様が集まってくれて、私は色んな雑誌や取材に話しているのですが、今日、私はこの試合は私の引退の為の試合では無い、ひとりでも多くのお客様に今の女子プロレスの選手の力を、選手の魅力を、団体の魅力を感じて頂ける様な、そんな試合に出来ればいいと思い、来年に繋がる試合が見て頂ければ、大成功だと思っています。
 今日、本当に一試合、一試合、皆様、声援を送り、喜んで頂く姿を見て、私、女子プロレス好きですから、皆さん、お願いします。年に一回、一回でいいです。こういう試合を女子プロレスでやらせて頂けませんか?
 団体対抗とかじゃなくていいんです。毎回、毎回、今日みたいにおんなじ団体同士、フリー同士でもいい、抗争なんて、そんなもんじゃなくて、お客様に今の姿を見てもらえる、そんな試合を年に一回、やらせてやって下さい。
 こんなにお客さん集まって、見てやって下さい。」

「今、お客さんもそうだと思うんですが、世の中不景気で、女子プロレスも団体も少なくなり、本当に私の場合は怪我をあまりせずに済みましたけど、怪我はつきものです。それに見合うギャラは正直言って、頂いてません。それが現状です。
 ならば、年に一回、こういう場所で女子プロの試合を、団体を越え、色んな壁を越え、もしそれで黒字が出る様でしたら、その黒字を女子プロレス基金の様なものにして、例えば怪我をしたら、その基金から少しでもお金を出せる様に、選手達が安心して試合をし、皆様の前で元気な姿で皆様に楽しんでもらえる試合を出来る様に、そんな風に出来たらなと・・思いついちゃいました。
 応援してください。その為に今日、私の試合をプロデュースしてくれた長与くん、いますし。
 彼女ならやってくれると思います。
 あ、先輩なんでやらせます!
 なので皆さん、本当に有難うございました!
 そして後輩達を宜しくお願いします!」

 そして引退のテンカウント・ゴング。
 女子プロレスの母がついに終幕を迎える。

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 プロレスラーの引退試合の中でも屈指の感動を与えたラストメッセージに。
 放送延長はしないと告示していたGAORAも特別待遇。終了時間の9時を過ぎても延長して放送してしまった事でもいかに感動的だったかが分かる。
 有難う!デビル雅美、有難う女帝。

■ 長与千種プロデュース デビル雅美引退興行 End of long fight ~長い戦いの終わり~
日時:12月30日
会場:後楽園ホール

<第1試合  10分1本勝負>
○スーパーヒールデビル雅美 KAORU(フリー) ダンプ松本(極悪同盟)
 ファイヤーバレー
堀田祐美子(フリー) 里村明衣子(仙台ガールズ) ●長与千種

<第9試合(メインイベント 無制限一本勝負)>
●デビル雅美、カルロス天野、ダイナマイト・関西
 ドラゴンスープレックスホールド
アジャ・コング、○植松寿絵、輝優優

 盟友ダイナマイト関西を従え、相手のボスにはアジャ・コングが仁王立ちというファン泣かせの6人タッグマッチ。 いきなり先発を買って出たデビル雅美。愛弟子である輝優優をいたぶり、試合序盤から場外乱闘とヒールで生き抜いてきた女帝の貫禄を見せ付ける。
 序盤はスピーディーな展開から、後半、大技連発の本気のぶつかり合い。何度もカウント2でカットと引退試合にも関わらず、両チーム、本気で勝ちにくる熱い展開に会場のファンも大声援を送る。

 最後は愛弟子の植松がデビルから恩返しのドラゴンスープレックスでフォール勝ち。デビルは見事なラストマッチ、次の世代にバトンを渡した結果になった。試合後、全てをやりつくした満足そうな顔が印象的であった。

「引退試合」で勝ってしまったら、それは復帰への序奏というジンクスもあるマット界。さすがに今回の引退はガチンコなので、負け役をすることはわかってるが、誰にフィニッシュを取らせるのかも注目だった。ドラゴンスープレックスで投げたのは植松。なるほど、最初から鉄腕アトムの髪型ではなく、まじめモードで最後のお勤めを果たしていた。
 ただ生演奏はいいんだが、アジャのテーマ曲・鋼鉄神ジューダス・プリーストの『エレクトリック・アイ』は、歌詞がでたらめだったのが悔やまれる。ロブ・ハルフォード先生に失礼であったかも。