障害者達の燃え上がる熱情-障害者プロレス「ドッグレッグス」

2008年11月22日、新木場 1st RINGにてその大会は行われた。障害者プロレス「ドッグレッグス」第77回興行、「self」。障害者と侮るなかれ。そこでは健常者に負けず劣らずな男達の熱い戦いが繰り広げられた。席はほぼ満員。その様子に、ひな壇に並んだ選手達も嬉しそうであった。
1試合目 ミラクルヘビー級時間差バトルロイヤル
ノーシンパシーvsハンマーシャーク芹田vs遠呂智vsよっこいしょvs愛人
結果:ドロー
2試合目 D-1トーナメント2008 1回戦Aブロック
× 福祉パワーvs鶴園誠 ○
結果:判定により鶴園誠勝利
3試合目 D-1トーナメント2008 1回戦Bブロック
○ 関口洋一郎vs真・大玉 ×
結果:2R1分4秒、TKOにて関口勝利
4試合目 世界障害者プロレスヘビー級選手権試合
○ 第17代障害王 天才まるボンvs挑戦者 永野V明 ×
結果:判定により天才まるボン勝利
5試合目
× ロリろり太vs陽ノ道 ○
結果:2R1分33秒、チョークスリーパーにて陽ノ道勝利
6試合目
○ アンチテーゼ北島・サンボ慎太郎vs虫けらゴロー・柳下ミツル ×
結果:7分20秒アンチテーゼ北島が柳下ミツルを捕らえ、TKOにて勝利
7試合目 D1トーナメント2008 決勝戦
鶴園誠vs関口洋一郎
8試合目 癌患者vs聴覚障害者
× 中嶋有木vs高王 ○
結果:1R1分1秒、KOにて高王勝利
 今回は以上の試合が行われた。その中でも一番目を引いたのはやはり年に一度しかないD-1トーナメント2008であろう。チャンピオンベルトはない。優勝商品は30kの美味しいお米。下手をすると持ち帰るのに大変な景品である。しかし、鶴園誠、関口洋一郎、真・大玉、福祉パワーの4名が欲するのは景品などではない。自分こそが一番であるという名誉だけであるのだ。
 試合の組み合わせは大会の直前に抽選によって決められた。それぞれがAブロックBブロックに分かれ、ブロックごとの勝利者が決勝戦にて争い、優勝者を定める。抽選の結果、Aブロックは福祉パワーvs鶴園誠、Bブロックは関口洋一郎vs真・大玉にとなった。
 Aブロックでは健常者である福祉パワーと座位で戦う前年度D-1王者鶴園誠が争った。福祉パワーは鶴園と同じ様なスタイルにするため、ゴムのようなもので足を使えないようにして戦う。福祉パワーは上から絞め技を決めようとするが強大な腕力を持つ鶴園に何度捕まえても逃げられる。また、捕まえたとしても鶴園は下から同じ場所ばかりにパンチを入れ、福祉パワーにとって非常に痛い攻撃を繰り返すという、福祉パワーにとって辛い試合展開が続いた。結果は、鶴園誠の判定勝ち。
 Bブロックはお互い元柔道選手であった関口洋一郎と真・大玉が技を競い合った。じっくりと絞め技の応酬で試合が進んでいくかと思いきや、まずお互いが繰り出していったのは拳や動かない足であった。しかし、最後は締め技のポジション争いとなってゆき、次第に関口が優勢になっていく。結果、2R1分4秒にTKOにて関口洋一郎の勝利。決勝戦では鶴園誠と関口洋一郎が争う事となった。
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 前半戦から幾分かの時間を置き決勝戦は行われた。やる気満々な、熱い男関口洋一郎。関口に相反するかのようなリング場であっても肘をつき余裕そうなクールっぷりをアピールする鶴園誠。しかし彼の目からは熱い情熱が垣間見える。
 斯くして試合開始の合図が告げられた。まず観客を沸かせたのは関口が鶴園を高く持ち上げ、リングに叩き付けたことだろう。叩きつけ、鶴園を押さえつけたところで関口が得意な絞め技を繰り出していく。しかし、一方的な試合であったわけではない。押さえつけられても下から顔面や胴の弱いところにパンチを繰り出してゆく。また、押さえつけられても鍛え上げられた腕を駆使し絞め技から何度も抜け出す。離れ間合いを取ると、鶴園お得意の挑発で熱い男の関口をさらに燃え上がらせる。互いに一歩も引かぬ戦い。
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 後半になってくると、関口の首から胸辺りにはくっきりと爪跡が残されていた。かなり果敢に攻め立てているためか、体からは疲労が見て取れた。対する鶴園も腕が真っ赤に変色し、表情からは見て取れぬが疲弊しているのが感じられた。
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 関口が鶴園のマウントをとり、最後の攻撃とばかりに攻め立てるが、鶴園の強大な武器であり盾である腕がその攻撃を抑える。3分3R全てを戦い抜いた両者。勝敗は判定へと委ねられた。結果、2対1で鶴園誠の勝利。前年度D-1王者が今年度大会の防衛にも成功するという形となった。
 次回ドッグレッグス興行は2009年の4月25日である。次の試合にも是非とも期待したい。
障害者プロレスを見てきました(前編)
障害者プロレスを見てきました(後編)