川村亮が第4代ライト・ヘビー級キング・オブ・パンクラシストに

 川村亮とKEI山宮の、自称プロレスラー同志の因縁の再戦は、グランド展開なし、ひたすら拳を打ち合った激闘、いや死闘に後楽園ホールは大いに沸いた。
 パンクラス15周年記念大会第一弾は、感動のフィナーレに。28-19、29-30、29-30の判定が示すように、いずれも1ポイント差で打ち勝ち、山宮の顔面を鮮血に染めた川村が念願のベルトを巻いた。パンクラスのX印ロゴに大の字になってみせ、最後はismの選手がリングに並び、究極のハッピーエンディングに酔いしれていた。
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川村も泣いていたが、北岡悟も泣いていた。そしてism道場全員集合、笑顔の大団円に・・・
 パンクラスの15年、いや、総合格闘技の15年とは何であったのかを確認するにふさわしいメインイベントだった。マイクを握った川村は、「今ここにあるパンクラスの応援をお願いします。ありがとうございました」と大会を閉めた。
 一方も山宮も、控え目な彼にしては珍しく、観客の声援に応え、手を挙げて胸をはってリングを降りた。試合後の会見では、「すっきりしている。明日になれば悔しいと思うかも知れないが、今は悔しさもない。(川村の怒涛のラッシュは)オヤジ狩りにあったようなもの!」と試合を振り返った。
 
 開始ゴング直後こそ、川村はあえて前に出てこずに、ベテラン山宮の出鼻とリズムを崩すかのようだったが、それからあとは、両雄がひたすらバチバチに殴り合った。山宮はあとで、「打ち合うつもりはなかったのに、川村のペースに巻き込まれた。純粋に彼の勝ち。(セコンドの)横田に聞いたけど、やっぱり言いわけなしにしたい」と記者陣を笑わせた。
 入場時のロングスパッツは、顔が田尻義博に似てるからと、合わせるようにKAMENDOが制作してくれたのだという。「くるくる回るパフォーマンスをするつもりが、リングにマイクがあって出来なかった」とも答えた。また、パンツにあった15周年のマークは、「湘南の象徴サザンオールスターズの30周年ロゴをパクっただけ」だと言うが、記者はパンクラスの15年を象徴するメインを張れたのは自分であるとの秘めたる決意だったと信じたい。
 また、1Rなど山宮のパンチのほうが的確に川村をとらえていたのに、打たれ強かった川村が印象に残った。実際、山宮は88.7kgだったが、川村は92.9kgと大きくなっている。しかし山宮は、「日本人に関しては体格差はない。外人とかには感じることはあっても、普段から大きいのと練習している」と、この点に関しても言いわけをしなかった。
 川村については、「前回は考えて闘っていたが、今日はなりふり構わず来た」と分析する。
 
 勝敗を超えた闘いだったことは間違いない。観客の盛り上がりも凄かったが、おかげで「自分が興奮してセコンドの声が聞こえなかった」と山宮は振り返る。「プロレスとしてはいいストーリー、負けたけどいい仕事ができた」と、普段の彼を知る記者たちには驚くほど饒舌だった。
  
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ガンガン、ごんごん、バチバチ…家でK-1 MAXをテレビ観戦するより、こっちのド迫力は満点!
 
 ベルトを巻いた川村は、「小学校6年のときにパンクラスが出来た。このベルトへの思い込みは強い」と述べた。「ベルトは昔のイメージがある。ライトヘビー級は先輩ばかり。自分の力で現在進行形のパンクラスにしていく」と頼もしいい。
 激闘を分かち合った山宮先輩に対しては、「山宮さんだからこそ吐き出せた。気持ちを持った人は少ない。自分が小さい頃から活躍している人には感謝あるのみ。前の試合を上回る勢いで襲いかかることを心がけた」と戦術を語る。
 「山宮さんとじゃなきゃできなかった試合」・・・試合後会見には「雰囲気」というキーワードも飛び出した。昨年12月に負けてショックを受け、しかしそれが15周年記念大会のメインイベントにつながるドラマに。川村は山宮先輩が「心意気に返してくれたんだ」と言う。また、試合直後に抱き合った二人は、なにやら言葉を交わしていたが、試合後の謎解きに関しては、「それは読唇術でも読んで下さい」と中身を語らなかった。
 「気持ちが上回っていたから?」との質問もあったが、「勝因がわかっていたら、もっとスマートに勝てていた」とも答えている。また山宮と同じく、会場の興奮もあってかセコンドの声も聞こえなかったそうで、「1Rは山宮のほうが勝っていたのでは?」との問いにも、「わからなかった。バカだから2Rも前に出れた。倒せなかったのは悔しかった」と、大物を予感させている。
 リング上で発言した「今のパンクラス」とは、「川村亮のエンターテインメント」なんだそうだ。「プロレスラー同志の戦いだった」と満足そうな川村のエース宣言である。「最後まで楽しんでもらえれば」と、激闘直後にもサイン会をして、お客を喜ばしていた。
 
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15周年メインのレフェリーは廣戸聡一先生 大変良く出来ました!
 
08.10.1pan4.jpg 山宮の会見中に、さっそくサイン会をしていた川村が戻ってきた。「メッチャ痛かった、もうやらないよ!」と山宮。「次は(アホ呼ばわりした)坂本さんとやります」に対して、坂本社長は「頭打たれておかしくなった? いい試合でした。今度はミドル級でオファーします」。
 プロレス試合として見るなら、最高のお仕事をした山宮の偉大さにプロ格闘技興行の真実が見て取れる。