総合デビューのシャンジ・ヒベイロとキング・モーの女王様たち

 『戦極~第五陣~』で総合デビューを飾ったシャンジ・ヒベイロ。他のネット媒体が触れてない試合後会見の話題を取り上げてみたい。記者会見には、兄貴のサウロ・ヒベイロ、それから『DREAM』ミドル級トーナメントで惜しくも優勝を逃したホナウド・ジャカレイを伴って現れたシャンジ。
 サウロと言えば、ヒクソンの一番弟子という紹介で『コロシアム2000』に参戦している。この時は、船木誠勝の一番弟子であった近藤有己にわずか22秒、血祭りKOされてしまうのであるが、奇しくもこの日、その近藤はGRABAKAの佐々木有生に一本負けしてしまった。
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首相撲からのヒザ蹴りを多用していたシャンジ。結局これが3R最後の1分間での打撃KOにつながる(左)、貫禄の兄貴サウロ先生(中)
 「今日の近藤戦を見たか? 弟が勝った日との因縁をどう思う?」との記者の質問に対して、サウロは「あの時はあの時、自分はもう違うファイター」と雄弁に語り出した。それもそのはず、サウロは指導者として柔術界で尊敬を集めるだけでなく、なんと先月には『世界ノーギ柔術選手権』のメイオペサード(-85kg)級で優勝している。
 弟のMMAデビューに関しては、「格闘技界に新しい血が入ったんだ」と、ヒベイロ一門の攻勢に鼻が高い。「弟は人間として成長した。素晴らしいデビューだったと思う」と総括している。弟も言っていたが、対戦相手をリスペクトして、愛を持って闘うのがポリシーなんだそうだ。
 驚かせられたのは、兄貴以上にシャンジの英語が非常に滑らかだったこと。なんでも「母親のおかげで、11歳から英語に親しんできた」という。「1999年には米国に渡り、そこで6年間を過ごし、ミリタリーハイスクールにも行った」のだそうだ。
 また、その英語の話し方からも明らかなように、インテリ戦士でもある。途中で止めてしまったとはいえ、リオのロースクールに入学して弁護士を目指したこともあった。現在は再び米国に渡り、サンディエゴで兄貴と柔術道場で教えている。
 これまであれだけホジャー・グレイシーの売り出しに熱心だった戦極であるが、ドタキャンになったとたんに、シャンジがホジャーに勝った柔術大会決勝のビデオを煽りに使うなど、ホジャーを落とすようなムードになっていたのが可笑しかった。
 「上には上がいる」というシャンジの紹介は偽りではない。寝技の凄みを披露して欲しかったという期待とのギャップはともかく、試合中何度も繰り出した首相撲からのヒザ蹴りに、兄貴サウロの打撃KO負けからのリベンジ完結を見た思いがしたのは記者だけではなかったのではなかろうか。
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 この日一番目立っていたのは、ドタキャン男ホジャーの代役で呼ばれたキング・モーである。王冠をかぶり、ガウンを身にまとうだけでなく、4名の美女を従えてのハーレムな入場は大いに笑わせてくれた。おまけに勝ってしまったんだから、話題をさらったのは無理もない。「彼女たちは俺の王国の女王様なんだ!」と、記者会見でもご機嫌だった。
 
 セコンドに就いたのはDREAMのスーパーモンキーことジェイソン・“メイヘム”・ミラーである。「どっちが勝利に貢献したのか」という鋭い質問に対して、「いい質問だ!」と会見場の爆笑を誘っていた。「ジェイソンがトレーニングのスタンダードを高くしてくれた」そうである。猿はどうやらキャラとは裏腹に、知恵袋でもあったようだ。また、キックボクシングのコーチ=ミルコ・マナーズや、マネージャーのブライアンへの感謝も忘れてはいない。
 もっともこの試合、レフェリーストップさせられた対戦相手トラビス・ビューの言い分でも聞けたように、「特に利いている感じはない。ちょっと止めるのが早かったかも」は、記者にしても同じ印象がある。
 誰もがアフリクションのTシャツを着るなかで、スポンサーであるWARRIORのTシャツ姿のトラビスは「7年間に12回負けている。負けを受け入れることが必要」とも語ってくれた。”野獣”藤田和之をKOしたトラビスだが、舞台裏での印象は大人である。対戦相手が急遽変わったことも含め、不運だった一戦であった。
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1Rはひたすら右に回って、近藤のサウスポーをかわした佐々木有生 「嬉しいけど、時の運だ」、「みんながいるから自分が生かされている。一人では生きていけない」、「郷野さんに、もうちょっとマイク面白いこと言えと・・・」