書評 『真の実力者たち』第1回世界の”TK”髙阪剛(前編)

高阪剛という格闘家と出会ったのは、WOWOWのリングス生中継でのことだった。現ハッスルの坂田亘との試合で、30分の間お互いに決めきれない試合を続けて引き分け、試合後は前田にひどく叱られたと言う。
そんな高阪が輝きはじめたのは、95年、トーナメント・オブ・Jで優勝した頃からだったと思う。試合後の雑誌のインタビューで
「最初から優勝する気で臨んだ。試合前は賞金をパーッと使ってしまうつもりだったが、試合中にけっこうきつかったので、賞金は車を買うことにした」
と語っているのを見て、私は高阪がいっぺんに好きになってしまった。
その後の活躍は皆様もご存じの通りで、今や「世界のTK」である。
本書はその高阪の打撃を指導した大地耕輝が、自分の目から見た高阪を描いた一冊である。
「ここ数年の間に総合格闘技のレベルは急激に上がり、スタンド・組み・寝技、そのどれか一つでも欠けていたら勝てない」
そう確信した高阪がヨネクラジムを訪れたことから二人は出会う。高阪の第一印象は「でかい人」。そして高阪の挨拶に見せた姿勢に好印象を持った大地は、高阪の打撃を指導することになる。
「自分は打撃しか知らない。それしかコーチできない。あとのこと(そこからのキックや寝技に入る攻防)は自分で応用して考えて欲しい」
と最初に告げた大地に、
「はい! もちろん打撃だけ教えてください。宜しくお願いします」
と答えた高阪。二人は次第に親しくなり、高阪の練習に賭ける熱い思いを大地は知ることになる。
そしていよいよ、マーク・ハント戦が決まり……というところで前編は終了。
後編の一日も早い出版が待たれる。
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『真の実力者たち』第1回世界の”TK”髙阪剛(前編)
DENNY 山口敏太郎事務所