TNAにフランク・トリッグ登場!北米MMAブームに伴うプロレスとのクロスオーバー現象

 3月27日(現地時間)、アメリカ第二のプロレス団体、TNAのTV中継『iMPACT!」に著名なMMAファイター、フランク・トリッグが解説者として初登場した。
 フランク・トリッグはUFC黄金の階級ウェルター級の強豪として活躍後、PRIDE北米放送の解説者として人気があり、アメリカではかなりの知名度を誇る。また日本でもあの秋山成勲を叩きのめした三崎和雄から何度もテイクダウンを奪い完勝した上、試合後すぐに解説席に戻り実況の仕事を続けた猛者だ。強くてタフな選手と一目置かれるMMAの実力者である。
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PRIDE33フランク・トリッグが三崎和雄を下す 07年2月24日ラスベガスPPV中継より
 UFCとは契約問題で揉めて離脱後、北米のローカル団体『ICON SPORT』『Rumble on the Rock』などで選手として活躍すると共にPRIDE BUSHIDOの解説者として人気があったが、バス・ルッテンが米国DSE代表と揉めて消えてからは本戦実況席でも豊富な知識を披露。UFCがPRIDE買収に伴いその去就が注目されていた。
 結果、彼が選んだ先はプロレス団体TNAであった。UFCの人気沸騰、エリートXCの地上波放送(エリートXCとCBS契約の盲点については、ミルホンネット刊『悪夢DREAM 戦極激突!』がどこよりも詳しく全容が記されている。この機会にぜひお読みください)、そしてボクシング王者デラホーヤの新団体とMMAブームに沸く北米シーンにおいて、知名度の高いトリッグがプロレス団体を選んだのは、北米市場に置いてMMAとプロレスのクロスオーバー現象が加速している証明でもあるだろう。
 過去にもケン・シャムロック(WWE)、タンク・アボット(WCW)と大物MMAファイターがプロレスラーに転向した例はあるが、現在のクロスオーバー現象はもっと大きな流れになっている。
 例えば、このトリッグにしてもただの解説者採用では無く、今後予定されているTNAのPPV大会において行われる予定のカート・アングルvsサモア・ジョーの“MMAマッチ”に大きく絡むアングルが予定されている。現在もサモア・ジョーがオクタゴンで練習をしたり、MMAファイターに教えを請うシーンが頻繁に流されたりしており、北米のMMA熱の高まりを実感出来るだろう。
 またこのMMAマッチ=異種格闘技戦アングルはカート・アングル、サモア・ジョー両者が非常にMMA好きでシナリオ班に売り込んだとも言われており、プロレスラーのMMA志向が伺える。
 このTNAで行われるMMAマッチは純粋な競技とは別ものではあるが、カート・アングルをはじめとしてプロレスラーが実際にMMAに挑戦したいという気運もかなり高まっており、アングルにしても夏には、あのランディ・クートゥアとのグラップリング・ルールでの対戦も噂されている。
 特にアングルは身体が動く間に総合格闘技に挑戦したいと前々から公言しており、元五輪メダリストの腕はまだまだ錆付いてはいない。WWE時代にバックステージでA・トレイン(現在のジャイアント・バーナード)など大きな選手にバックを取らせた状態からスパーリングをはじめる遊びを行っていたが、常にアングルが勝利していたという。
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UFC81フランク・ミアがブロック・レスナーに膝十字 08年2月2日ラスベガス大会PPV中継より
 現在の北米のMMAブームに伴うプロレスとのクロスオーバー現象のもっとも顕著な例としては、実際に挑戦したブロック・レスナーのUFCデビューに止めをさす。「UFC81」においてフランク・ミアに敗れたものの、その潜在能力の高さ、PPVでの人気、そしてプロレスの現役トップがMMAに挑戦した事は歴史的事件であった。
 また実際、プロレスラーもMMA好きが多く、珍しい所ではWWEのアンダーテイカー。格闘技から対極に位置するプロレスラーだが、「UFC81」には生観戦する姿がPPV放送でも紹介され、“WWEスーパースター”とテロップまでついていた。アンダーテイカーの総合好きは有名でホイス・グレイシーが活躍する初期のUFCから熱心に観戦しており、彼が近年、好んで使う三角締めもグレイシーなどの影響である。
 もちろん、アンダーテイカーは単にファンとしてMMAが好きなだけで、自分が挑戦する気は無いが、実際に挑戦しようとした選手も多い。ゴールドバーグなどMMAデビューしようと、当時、マーク・コールマンらが練習していたオバケジムに入門するも、柔術白帯に何度も極められて、これは無理と悟り断念している。
 さらに、先日WWEを退団した元ECW王者ボビー・ラシュリーもMMA転向を希望し、現在トレーニングを続けているという。
 プロレスラーのMMAデビューは日本の専売特許の様に思われているが、日本の場合は明らかに峠を過ぎた昔の名前で出ている選手が、かませ犬役で呼ばれることが少なくない。あるいは逆に、プロレスではまったく実績の無い若手がMMAに出るケースがほとんどだ。
 しかし現在の北米シーンはプロレスラーとしても実績がある上に、レスラーとしても全盛期であるレスナー、ラシュリー、そしてアングルと言ったチャンピオン選手が挑戦するのだから日本で行われた客寄せの意味しかなかったものとは別次元と言っていい。今後もどんどん続くであろうMMAとプロレスのクロスオーバー現象は注目すべきだろう。
悪夢DREAM 戦極激突!