桜庭vs秋山戦でわかった格闘技界の惨状:「今週のおススメ」

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 秋山成勲ヌルヌル事件ほど、専門誌メディアとインターネットの掲示板やブログとの違いを際立たせたテーマはなかった。
 ターザン山本は、最新作『桜庭vs秋山戦でわかった格闘技界の惨状~マスコミの犯罪行為』で、「最大の変革、改革は審判部の独立である。独立した以上、アスレチック・コミッションと同じように興行する団体から何パーセントのあがりをもらって、それをレフェリーの報酬とする。そうすることで初めて試合はクリーンなものになるのだ。これが正論ではないか? 正論はさっそく実行しろ、なのだ」と、あっさりと大みそかメインイベント問題の核心に斬り込んでいる。
 舞台裏の暴露より、「団体が審判を自分の所で丸抱えしているシステムでは、組織に対するチェック機能が存在しないことと同じなのだ」と、冷酷に通達するターザン山本は鬼そのものだ。さらに、格闘技マスコミのことをボロカスに断罪する箇所こそ、後世に残る秋山失格処分の全容を明かしたルポタージュ足りえる作品に仕上がっている。
 「いかに今のマスコミに骨がないか? あるいは信念がないか? 一番大事なジャーナリズムの精神がない」と酷評したあとで、天下の朝日新聞に盗用記事が発覚、キャンペーンの「ジャーナリズム宣言!」を引っ込めざるえなくなった。また、山本はK-1のスポンサー危機についても、不二家の不祥事や、「発掘!あるある大辞典2」における花王の動向までを比較検証している。専門雑誌の最前線ライター諸氏が、遠慮から事件の本質を検証できないでいる隙に、あえてK-1という大巨人を敵にまわしてまでも、徹底的な勇気ある告発を、これほどまで緻密に描写できたのは、ターザン山本だけであった。
 「ファイト!ミルホンネット」は、武道・プロレス・格闘技の専門誌を自認する一方で、課金インターネットという、無料閲覧が定着しているWEBの世界にメディア革命を起こすべく起業されている。タイトルにある「犯罪」の意味は、この迫真レポートの末尾を読んだ者だけが納得するだろう。
 
 ターザン山本!著『桜庭vs秋山戦でわかった格闘技界の惨状~マスコミの犯罪行為』は傑作である。