リアルジャパンプロレス12・9後楽園ホール大会直前独占取材!
[レジェンド王者]船木誠勝が関本大介戦への決意を告白
「今度の試合は“力と技の勝負”になる!」
「得意の打撃で“肉の壁”関本選手を斬りにいきます」
12月9日、リアルジャパンプロレス『初代タイガーマスク黄金伝説~LEGEND OF THE GOLD Ⅲ』後楽園ホール大会が開催される。年内最後の大会でメインイベントを飾るのはレジェンド選手権試合。9月大会で王座を獲得したばかりの船木誠勝が、大日本プロレスの関本大介を挑戦者に迎え、初防衛戦に臨む。決戦を控えた船木にタイトル戦に臨む決意と、現在のプロレス観を聞いた。
(取材・文:村上謙三久)
「映画でタイガーマスク役をやった時が初遭遇」
――対戦カードを発表した記者会見で「関本選手は苦手なタイプ」と仰っていましたね。
船木 やっぱりちょっと未知数なところがあって。今までにあんまりやったことのないタイプというか。大きい選手とはやってきたんですけど、関本選手は身長からするとジュニアじゃないですか。だけど、あの体型というのは今までにないタイプですね。
――同じパワーファイターでも、全日本マットで対戦した諏訪魔選手とは違いますよね。
船木 違うと思います。逆に自分より背が低くて体重のある相手だと、ハイブリッドブラスターで持ち上げるのが難しいんですよね。苦戦するんじゃないかというイメージがあります。
――関本選手とは、2011年に『世界最強タッグ決定リーグ戦』の公式戦(12・1名古屋大会での船木&河野真幸vs関本&岡林裕二)で1度だけ対戦経験があります。
船木 岡林選手を蹴った感覚はあるんですけど、関本選手と絡んだ記憶があまりないんです。
――直接対戦はしなくても同じリングに立つことはよくありますが、関本選手の試合はご覧になっていますか?
船木 結構見ますね。正直、あまりやりたくないなと。何でも跳ね返してしまいますしね。
――関本選手は現在34歳で、デビュー16年。プロレスラーとして脂が乗っている時期です。
船木 今が最高な時じゃないですかね。業界の中で注目されているレスラーのひとりだなという感じがします。実は、彼のことを2005年に知ったんです。映画『真説タイガーマスク』でタイガーマスク役をやった時に練習相手をしてもらったんですね。大日本プロレスの道場でやっていたんですけど。
――船木さんが現役復帰をする前に役者として活動されていた時期ですね。
船木 佐山さんの指導で、関本選手を相手に1、2週間ぐらい練習をやったんです。その時に「凄い体をしてますよね」っていう話を佐山さんとしてたんですけど、それが初対面ですね。その後、2010年にプロレス復帰をしてから、彼の試合を見るようになって、「ああ、あの選手がこんなに活躍するレスラーになったんだな」って。
「異種格闘技戦のような試合になると思います」
――戦うとなると、やはり打撃から崩しに行く作戦でしょうか?
船木 それしかないですよね。やっぱり正面から組み合ったとしても、完全に力負けすると思いますから。打撃を入れながら崩していかないと無理だなという感じがします。
――ああいう体型の選手を蹴っていると自分も疲れるのではと思うんですか。
船木 あまり鍛えている部分は狙えないですね。こっちがしんどくなっちゃうんで、要所要所で効く場所を狙っていかないと。頭を蹴っても倒れなそうな感じもしますからね。どこまで自分の打撃を受けきれるのかなという興味もあります。今まで戦ってきた選手のほとんどが自分の打撃を強烈だと言っていましたので。
――考え方を変えれば、いつも以上に思いっきりいけると。
船木 そうですね。今回に関しては「力」対「技」というのが一番表現しやすい試合になると思います。
――船木選手がいくら蹴っても、あの強烈な逆水平チョップとの打ち合いになってしまうときついでしょうね。
船木 正直、打ち合ったら無理でしょう。まあ、自分はスタイル的にも打ち合いには持ち込ませないので。そういう意味で言うと、ちょっと異種格闘技戦のような試合になると思います。どれだけ体が丈夫だと言っても、人間なので急所があるものなんです。普通の人であれば1発で倒れるものが、もしかしたら3発、4発、5発をかけないと倒せないかもしれないですけど、そこは根気強くやっていくしかないですね。
――狙えるなら短期決戦もありえますか?
船木 突拍子もない技がハマれば、短期決戦はありだと思います。ただ、それなりに警戒はしてくると思うので、どうですかね?打撃で短期決戦という作戦はあんまり通用しない気がします。
「セミを意識したらやられてしまうんで、関本選手しか見えないです」
――きつい戦いが想定されますが、それが楽しみな部分もありますか?
船木 そうですね。フリーになったので、やったことのない試合をドンドンやっていきたいという気持ちがあります。今年最後にこの試合が決まり、いい仕事終わりじゃないですけど、勝って年を越したい!という気持ちがあります。
――レジェンド王座のベルトを獲った時に「何歳までもできないギリギリの試合をやりたい」と仰っていましたが、まさにそういう戦いになりそうですか?
船木 はい。今日、たまたまドリー・ファンク・ジュニアやマスカラス、ザ・グレート・カブキさんと組むんですけど(取材日は12月1日)、おそらく自分の場合は、今のスタイルでやっていくと、70歳までリングに立つことはできないと思います。ここまできたら、いつリングに上がれなくなってもいいような、悔いのないような試合をしていきたいですね。試合数が減った分、一戦一戦記憶に残るような感覚でやっていますんで。
――セミファイナルでは、スーパー・タイガー選手と全日本プロレスの諏訪魔選手がタッグで対戦することになりました。お二人とも船木さんと縁のある選手ですが。
船木 それこそ関本選手を含めて、タイトルに絡む可能性がある実力者がどんどん増えていけば、今まで以上に、タイトルが光ってくると思うんですよね。そういう意味では、諏訪魔選手のリアルジャパン参戦は大賛成です。
――「試合内容で勝負したい」という意識もあるようなのですが、それを受けて船木さんは?
船木 自分が一番いい試合をしたいというのはみんな思うことなので。自分の場合、そういうことを考える時代からかなり経っていますので。今はとにかく頑張って、最高の感覚で試合ができれば、ファンの人たちも楽しんでくれるだろうという気持ちでいます。メインを食うとか、セミに負けないとか、そういう感覚ではないです。
――やはり自分との戦いという気持ちが強いと?
船木 そうですね。他の試合に目を向けてたら、おそらく相手にやられてしまうと思うんで、関本選手しか見えないです。
「レジェンド王座は自分のためにあるベルトじゃないかなって」
――レジェンド王座のベルトを巻いた時、最初は「実感がない」と仰っていましたね。
船木 正直、スーパー・タイガー選手がベルトを持っているなとは思っていたんですが、どういう防衛戦をやっていたのかをまったく知らなかったんで。自分がリアルジャパンに参戦した時にタイトルマッチは1回も見てないんです。そういうところで、「このベルトはどんな存在なんだろう?」と思ってました。
――ベルトを取って3ヵ月経ちましたが、自分に馴染んできた感覚は?
船木 なんか自分のためにあるベルトじゃないかなって。それぐらいに今は思っています。写真で見たら本当に似合ってたんで、凄く愛着がありますね。昔、初代タイガーマスクが巻いていたベルトのデザインと近いじゃないですか。全日本では三冠王座も獲ったことがあるし、ZERO1の世界ヘビー級王座も巻いたんですけど、どこか「他人のベルト」という感覚があって。でも、今回は「自分のベルト」という感じがするんです。
――船木さんがリアルジャパンに参戦し始めてから2年が経ちました。初代タイガーマスク選手とのタッグ結成、長井満也選手や藤原喜明選手との再会、そしてレジェンド王座奪取とドラマティックな試合が続いてきましたが、船木さんの目から見て、この団体はどんな印象ですか?
船木 やっぱり自分が15歳からやっていた新日本の源流を受け継いでいる団体だなと思いました。自分が20歳で新日本を辞めて、20年経ってプロレスに戻って来たんですが、その空白の時間がリアルジャパンには感じないですね。40歳の時に久しぶりに全日本プロレスに復帰して、武藤さんの団体だったんですけど、まったく自分の知らないプロレスが行われてたんですよ。浦島太郎みたいな感じでやってたんですけど、リアルジャパンは昔のままの源流があるなと思いました。
――全日本やWRESTLE-1での船木選手も異質な雰囲気がして良かったですが、リアルジャパンに出ると、物凄くハマるというか。
船木 なんかしっくり来るんですよね。それはたぶん、お客さんも見ててそう感じていると思います。それは、初代タイガーマスクという存在が大きいと思います。
――現在、初代タイガーマスク選手は欠場中で、船木選手はことあるごとに「帰ってくるまで団体を守りたい」と仰っています。それだけ思い入れが強いんでしょうか?
船木 自分も46歳ですけど、30年以上前のタイガーマスクの記憶が未だにありますからね。佐山さん自身も最初はタイガーマスクをやりたいと思ってマスクを被ってなかったはずなんです。でも、それがこういう形になって、いろんな人の気持ちを動かしている。人の運や縁を感じますし、不思議だなって思います。
「“プロ”と“モノマネでやる遊びのプロレス”は違うんです」
――リアルジャパンは“ストロングスタイルの復興”を旗印にしていますが、船木さんが思うストロングスタイルとはどんなものなんでしょう?
船木 自分が思うのは、“本当に強い人がやるプロレス”だと思っています。強くなるための練習をして育ってきた人間が行うプロレスだと思っていて。
――初代タイガーマスク選手が打ち出す考え方には共感できると?
船木 はい。それがプロレスだと思っているし、そうであってほしいですよね。じゃないと、胸を張って「自分はプロレスラーです」と一般の人に言えないと思うんです。今はお笑い芸人がプロレスをやったり、そういうイメージが強くなっているんで。でも、「プロ」と「モノマネでやる遊びのプロレス」は違うんです。本当に強い人がやることなのか。それとも強くない人が型でやっているのか。その差だと思いますね。
――プロレスに復帰して6年になりますが、いろいろと見てきて、そういう考えに至ったと?
船木 今の結論ですね。「別に強かろうが、強くなかろうが関係ないだろう」と言う人もいっぱいいると思うんですが、やはり戦いですから。「試合」ですから、本当に戦い方を知らない人が型だけでやるもんじゃないと思うんです。そこは絶対に守っていきたいなと思いますね。パフォーマンスができることを最優先するのであれば、ダンサーとか、お笑い芸人とかの方がよっぽど上になっちゃうと思うんです。その人たちとの差が何かと言ったら、自分たちは戦いを見せているわけですから、「強さ」だと思います。少なくとも、レジェンド王座に絡む相手はそういう人を選んでやっていきたいですよね。
――フリーに転向された際に「勝負するのは50歳まで」と仰っていましたが、今後はどういう戦いをしていきたいですか?
船木 できれば「若い人に倒されたい」です。ただ、自分も「倒されたい」だけでやるわけにはいかないですからね。今の自分ができる“最高”というものを常にキープしていきたいんで。それに対抗して自分を倒せる人に出てきてほしいなと思います、素直に。本当にお客さんも納得して、世代交代ができるような……。あと3、4年でそうなればなと。それが自分の理想ですね。
――ベルトを奪取した時に、前王者であるスーパー・タイガー選手との再戦を見据えた発言がありましたが、彼がそういう存在になる可能性もありますか?
船木 良い選手だと思いますが、今だと「まだだな」という感覚があって、自分の中には勝てる自信がありますね。彼のプロレス自体が固まっていないような印象があります。スーパー・タイガーという影に潰されているような気がして。彼の真の中身が出てきたら、もっと強くなりますよね。また挑戦してきてほしいです。
「今も進化していて、昔の自分に勝てるような気もするんです」
――現役としてのゴールを見据えている中で、それでも自分が進化しているという感覚もありますか?
船木 進化はしていると思います。若い頃と比べたら、体力的には絶対に昔の方がありますけど、昔の自分に勝てるような気もするんですよ。その頃は知らなかった技や戦い方があって、今だからこそわかるものがあるんです。経験って凄い大事だなと思いますよ。ずるさで昔の自分を封じ込めれる可能性はあると思います。ドンドン無駄がなくなってきているんですよね。昔はいろんなことをやったりしましたけど、できなくなった分、本当に得意なところに集約するというか。そういう感覚ですよね。あえてあれもこれもという風にはしないようにしてます。
――復帰された直後よりも充実しているように見えます。
船木 今は自分がわかってきたというか。以前のように「どうしたらいいんだろう?」とか、「これをやった方がいいのかな?」って手探りでやっていた時はしっくりこなかったんですよね。
――今後、戦ってみたい相手はいますか?
船木 やはり、今まで対戦していない選手ですね。ノアとか、新日本の選手とは、ほとんど絡んでいないので。この間、アレクサンダー大塚選手の20周年大会でノアの選手とチラッと絡みましたけど(10・28後楽園ホール大会。大塚&モハメドヨネvs船木&杉浦貴)、やっぱり新鮮ですよ。組むのも新鮮だし、やるのも新鮮っていう。自分もそう思うということは、ファンの人はもっと思っているはずなんです。これも組織の問題になると思うんですけど、門は常に開けておいてほしいです。諏訪魔選手が今回リアルジャパンに出ただけでも、カードに厚みが出ますから。そんな風にいろんな団体にいろんな選手が出ていった方がいいと思うし、自分のその中に入りたいです。
――まさにリアルジャパンは開かれたリングで、様々なタイプの選手が出場していますから、こういうタイミングで船木さんが王者になったのも巡り合わせかもしれないですね。最後に関本戦に向けて、ファンの皆さんにメッセージを。
船木 初防衛戦なので緊張していますけど、ベルトを守って来年を迎えたいという気持ちが強いです。自分の得意な打撃で“肉の壁を斬る”という、そういう気持ちで関本選手を斬りにいきたいと思います。応援よろしくお願いします。
大会概要・対戦カード
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