[ファイトクラブ]仙女の初秋 ぎゅんとギャンとドロップキック 橋本千紘・高野玲菜

[週刊ファイト10月1日]期間 [ファイトクラブ]公開中

▼仙女の初秋 ぎゅんとギャンとドロップキック 橋本千紘・高野玲菜
 Photo:(c) 仙台ガールズ HIROKI 西尾智幸 スープレックス豪編
・ウナギ・サヤカは仙女に一人で来た パートナーX最初からいなかった
・橋本千紘が泣いた日 「あんなに強くても、そんなことで泣くんだ!」
・「お前に足りないのは・・・ガマン」「ガマンなんかしねぇよ!」の応酬
・「まっすぐ生きてきたことだけがプロレスじゃねぇぞ」言われた側の返し
・ぎゅん生まれたのは2016年 バンジーから出た意味ない一音だった
・ギャンは外へ出るための言葉 YouTubeの動画タイトルから始まった
・「変な#をつくるな。悪くないけど。」怪物のタグで遊ぶ2025年の距離
・そのリングに、今を懸命に生きている18歳がいる
・同じ入口から、極めにいく上村優也と、丸め込むしかない高野玲菜
・橋本千紘が18歳に勧めているのはムーンサルトである
・10月1日じゃじゃ馬と10月10日のサンプラザ 仙女の秋


 9月も後半になると、昼間はまだ暑いのに、朝晩には少しずつ秋の気配が混じってくる。空の色や風の温度が、真夏とはほんの少し違う。プロレスの興行を追っていると、こういう季節の変わり目に、これまで見てきた選手や試合をふと思い出すことがある。

 今年の仙女を見ていて、そんなことを考えた。橋本千紘とウナギ・サヤカ。そして、今年7月にデビューした高野玲菜。いまの仙女界隈を見渡すと、この3人がちょっと気になる。

 もちろん、3人が一つの物語として動いているわけではない。橋本とウナギは、3年9か月前にシングルマッチで対戦した。高野は今年デビューしたばかりで、その頃のことをリングの上では知らないだろう。

 橋本は「怪物」と呼ばれる。ウナギは、その橋本に「お前を査定してやるよ」と言った。そして高野は、いま、その怪物のそばで大きく成長しようとしている。

ウナギ・サヤカは仙女に一人で来た パートナーX最初からいなかった

 2022年11月20日。ウナギ・サヤカが仙女のリングに上がった。相手は橋本千紘と優宇。ウナギはパートナーXを連れてくると予告していたが、実際には一人でリングに上がった。つまり、1対2。仙女を代表する重量級タッグ「チーム200キロ」を、一人で相手にした。

 ウナギは負けた。なぜ仙女だったのか。本人が後にこう話している。「仙女は橋本千紘とやりたかったから。それに、ギャン期に入るなら2人いっぺんに相手したいなって。仙女には(里村明衣子が作った)古きよき強い女子プロレスがあると思うんです。」

 順番は、こうだった。仙女に行ったら橋本がいた、のではない。橋本とやりたくて、仙女へ来た。その2週間前、11月3日に橋本はこう書いていた。「いつ誰が相手でも、チーム200キロはチーム200キロ。チーム200キロの相手に相応しくないなんて言われんなよ、ウナギ・サヤカ。お前に感じるものがあるから、私は戦う。けど、一生査定なんて言葉使わせないようにする」

 ウナギはそれを引用して、こう返した。「相手に相応しくない? 言われたところでなんだよw そんなもんに恐れる私ではない。やる前からやべぇやつなのは知ってるわw 2021年7月11日に橋本千紘が流した涙 私はあんな涙は流させないよ? お前をあんな悲しい顔になんてさせない ただお前には持ってないもので 全力でぶん殴ってやる。」

橋本千紘が泣いた日 「あんなに強くても、そんなことで泣くんだ!」

 その涙について、ウナギは後日こう説明している。橋本を「強さの象徴」のような人だと思っていた。ところがコロナ明けの仙女後楽園ホール大会で、メインを務めた橋本が、空席が目立つ客席の前で、試合後のマイクで涙を流した。

「”強さの象徴”みたいな人なのに、『あんなに強くても、そんなことで泣くんだ!』と思ったんですよ。」「あの日に初めて、橋本千紘の人間っぽいところが見えた気がして、闘ってみたいと思ったんです」「『チーム200キロ』とのハンディキャップマッチは、ギャン期のなかでマストでした」

「お前に足りないのは・・・ガマン」「ガマンなんかしねぇよ!」の応酬

 12月5日、新木場。今度は橋本が一人で、ウナギと岡優里佳の2人を相手にした。また橋本が勝った。2回やって、2回とも負けた。その試合後のウナギの言葉が、この先を変えた。

「1人になって自分の力を死ぬほど思い知らされてるよ」それでも、続けてこう言う。「圧倒的に自分を信じてる」「負け戦ほど面白いものはないだろ」「橋本千紘、お前とシングルマッチがしたい」「絶対にお前を越える」「お前を査定してやるよ」

 橋本の返しは、こうだった。「仙女のリングはウナギ・サヤカの上がるリングじゃない。レベルが違いすぎる」「お前に足りないのは・・・ガマン」

 ウナギは即答する。「ガマンなんかしねぇよ!」 橋本が続ける。「基礎のキができてない。お前に教えたいこといっぱいあるよ」ウナギが聞く。「じゃあ?」橋本が受けた。「12月23日の仙台で…(観客に)何も言うなよ、お前ら。ウナギ・サヤカとシングルマッチやってやるよ」

 橋本はこうも書いている。「あんなに負けても負けてもしつこく自我を押してつけて来る奴は初めて」橋本が認めたのは、ウナギの技ではない。しつこさである。

「まっすぐ生きてきたことだけがプロレスじゃねぇぞ」言われた側の返し

 12月21日、そのシングルが発表された日。ウナギはこう書いた。「ギャン期に入ってある意味1番ヤバいカードと言っていい。橋本千紘とシングルがしたかった。でも想像できたか?橋本千紘。想定外の世界を見せてやるよ。まっすぐ生きてきたことだけがプロレスじゃねぇぞ」

 同じ日、橋本はこう返している。「私は私。ウナギ・サヤカはウナギ・サヤカ。リングの上で正々堂々戦おう。たくさん、伝えたいことがある。」

 12月23日、仙台。橋本が勝った。「【#仙女 仙台大会速報】メインイベント 橋本千紘vsウナギ・サヤカ そ ん な も ん か、と。」

 翌日、橋本が書いた。「ウナギ・サヤカと戦って 色んな意見を言われたけど 私は、またひとつ強くなった。たくさん練習しろよ、ウナギ。ぎゃんよりぎゅん。」

 これが、いまも2人の唯一のシングルマッチである。2023年1月以降、シングルは組まれていない。

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