[週刊ファイト09月03日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼なぜ東女が面白いか?鈴芽#TPC13辰巳リカ極上-王者・荒井優希の夏
photo & text by buffy0628 編集部編
・憧れの物語から新しい夢の始まりへ 東京女子プリンセスカップ鈴芽初制覇
・鈴芽「夢は何個持ってたっていい」 スターダムが吏南を押した日の東女
・山下実優とタッグの荒井優希「王者としての物語」x松本浩代&中島翔子
・山下を超えた荒井-中島にリベンジする荒井-師匠・松本と初めての対戦
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■ 東京女子 第13回東京プリンセスカップ
日時:8月23日
会場:後楽園ホール 観衆927人
憧れの物語から新しい夢の始まりへ 東京女子プリンセスカップ鈴芽初制覇
<第8試合 第13回東京プリンセスカップ決勝戦 時間無制限1本勝負>
○鈴芽
20分46秒 スプリング・リング・ア・ベル⇒体固め
●辰巳リカ
※鈴芽が初優勝

8月23日の東京女子プロレス後楽園ホール。東京プリンセスカップ決勝、鈴芽vs.辰巳リカ。20分46秒、鈴芽がスプリング・リング・ア・ベルで辰巳から3カウント。
悲願のプリンセスカップ初優勝を果たし、10月3日大田区総合体育館でプリンセス・オブ・プリンセス王者・荒井優希への挑戦権を手にした。
しかし、この一戦を単なる「トーナメント決勝」として片付けるのは惜しい。鈴芽にとって辰巳リカは、プロレス人生の原点とも言える存在だからだ。
シングル王座初挑戦の相手が辰巳リカだった。当時の鈴芽にとって辰巳は、単なる対戦相手ではない。
「自分もこんなレスラーになりたい」と憧れていた存在。
その憧れのレスラーと初めて一対一で向き合い、そこから鈴芽のシングルプレイヤーとしての歩みが始まった。だから今回の決勝は、鈴芽にとって「決勝で辰巳リカと戦う」のではなく、「憧れの人に、成長した自分を見せる」という意味も持っていた。
2022年の東京プリンセスカップでも鈴芽は辰巳と対戦し、「この夏、あこがれの辰巳リカを超えます!」と宣言していた。
あれから4年。
初めてシングル王座に挑んだ相手が、今度は決勝で立ちはだかった。これ以上ない「物語の回収」である。

試合開始から鈴芽はスピードを生かして仕掛ける。
ドロップキック、丸め込みといった機動力で辰巳を翻弄しようとするが、辰巳は場外戦に持ち込んで流れを奪う。
そして徹底的に狙ったのが鈴芽の左足。ドラゴンスクリューから足4の字固め。さらにコーナーから飛ぼうとする鈴芽の足を狙い撃ちする。鈴芽最大の武器である「飛ぶ力」を封じる、実に辰巳らしい攻略だった。
憧れの先輩だからといって、辰巳に遠慮はない。鈴芽にとっては、かつて憧れた存在から真正面から「レスラーとしての実力」を試される時間となった。
終盤、鈴芽は辰巳のドラゴンスリーパーなどに追い込まれる。体力も限界。本人も試合後に「もう動けないと思った」と振り返っている。
それでも動いた。相手が辰巳リカだったからこそ、最後の力を振り絞った。ここが今回の試合の象徴だろう。
初めてシングルに挑んだ時には、辰巳の背中を追いかけるだけだった。今回は、その辰巳を倒さなければ優勝できない。
「憧れ」が「超えなければならない壁」に変わった瞬間だった。
最後は鈴芽自身の必殺技、スプリング・リング・ア・ベルにて3カウント。鈴芽、東京プリンセスカップ初優勝。
初シングル・タイトルマッチの相手だった辰巳を、今度はトーナメント決勝で破った。ここに大きな意味がある。

辰巳から何かを「受け継いだ」のではなく、鈴芽は鈴芽自身のスタイル自分自身の必殺技で勝った。かつて辰巳に憧れていた少女が、「辰巳リカを倒せるレスラー」へと成長したのである。
辰巳リカにとっても鈴芽は特別な存在。もう単なる後輩ではない。
自分に憧れてプロレスを始め、初シングルの相手にもなった鈴芽が、今や東京女子のトップ戦線に立っている。そして今回は、辰巳自身も初めて東京プリンセスカップ決勝まで勝ち上がった。その最大のチャンスを阻んだのが、よりによって「自分を憧れていた」鈴芽だった。
試合後の辰巳はバックステージで悔しさを爆発させ、「こんなに頑張って、報われないのはおかしい」と絶叫。
さらに「給料上げろ!」「特別ボーナスを出せ!」と訴えた。
鈴芽「夢は何個持ってたっていい」 スターダムが吏南を押した日の東女
鈴芽の次の相手は荒井優希。
10月3日大田区総合体育館。
かつて辰巳を見上げていた鈴芽が、今度はプリンセス・オブ・プリンセス王座を狙う。
辰巳を超えた鈴芽が、次に荒井を超えられるのか。
8月23日後楽園は鈴芽の「憧れの物語」が終わった日ではない。
憧れを超えたことで新しい夢が始まった日だった。
▼鈴芽 デビュー戦先輩・中島翔子撃破!リング・ア・ベル両国KFC超満員
鈴芽「夢は何歳から見たっていいし、何個持ったっていいって東京女子が教えてくれました」
山下実優とタッグの荒井優希「王者としての物語」x松本浩代&中島翔子
<第7試合 20分1本勝負>
○荒井優希 山下実優
15分51秒 サソリ固め
松本浩代 ●中島翔子
この試合、まず注目すべきは荒井優希と山下実優が再び同じコーナーに立ったことだ。
7月18日の後楽園ホール。荒井が保持するプリンセス・オブ・プリンセス王座に山下が挑戦。
山下は荒井にとって、プロレスを始める前から一緒に練習してきた、いわば「ずっと追いかけてきた強くてカッコいい先輩」。
その山下を相手に荒井は王座を防衛し、チャンピオンとして東京女子を引っ張っていくことを宣言した。
▼山下実優の東京女子プロレスから、「荒井優希の東京女子プロレス」へ
それから約1カ月。今度はその2人が敵味方ではなく、同じチームとしてリングに立つ。
タイトルマッチでは「王者・荒井vs.挑戦者・山下」だった関係が、この日は「王者と先輩が力を合わせる」関係へ。
荒井にとっては、山下を倒して王座を守った後だからこそ、今度はその山下と組んで戦うことに意味がある。
試合では荒井と山下が、それぞれの持ち味を発揮。
荒井はチャンピオンらしく前へ出る。山下は打撃と蹴りで相手を削る。7・18では互いに王座を懸けて激突した2人が、今度は背中を預け合う。

しかし、そこへ立ちはだかったのが松本浩代と中島翔子だ。
中島は荒井にとって7月30日の東京プリンセスカップ2回戦で敗れた相手。荒井はトーナメント優勝を逃しただけに、この日はリベンジの意味もあった。
▼今大会最大の波乱:大怪獣・中島翔子35歳-●プリプリ王者・荒井優希


松本にはさらに特別な意味がある。松本は豆腐プロレス時代、荒井にプロレスを教えた師匠なのだ。これまで2人は2025年9月大田区総合体育館でタッグを組んだこともある。
だが、対戦相手として向き合うのは今回が初めて。つまり荒井にとっては、「ずっと追いかけてきた山下と組み、プロレスを教えてくれた松本と初めて戦う」という、過去と現在が同時に交差するカードだった。
東京女子も大会前から「豆腐プロレス師弟対決」として、この組み合わせを大きく打ち出していた。
試合では松本のパワーが荒井を圧倒する場面も。だが荒井も真っ向から応戦。「師匠だから」という遠慮はない。すでに東京女子の最高峰ベルトを腰に巻くチャンピオンとして、松本と向き合う。
終盤、荒井は中島をサソリ固めに捕獲。15分51秒、ギブアップを奪って勝利した。
山下を超えた荒井-中島にリベンジする荒井-師匠・松本と初めての対戦

試合後、松本のコメントが実に興味深かった。
初めて対戦した荒井について松本は、「正直もっと舐めてた部分があった」と本音を吐露。しかし実際にリングで向き合ってみると、荒井が一人のプロレスラーとして歩んできたことを感じたと評価した。
これは荒井にとって非常に大きな言葉だ。
豆腐プロレス時代には松本から教わる側だった荒井が、今では東京女子の頂点に立つ。
その荒井を実際に攻撃し、受け、戦った松本が、「もう単なる教え子ではない」と認めたわけだ。
一方の荒井も、師匠との初対戦を終えて終わりではない。
「何度でも闘いたいし、荒井が勝てるまで成長したいです!」と再戦を希望。
今回はタッグマッチ。しかも荒井が中島を下して勝利した。だからこそ、まだ「師弟対決の決着」ではない。むしろ、荒井優希vs.松本浩代という新しい物語のスタート地点と見るべきだろう。
このセミファイナルは、荒井を中心に見ると実に濃い一戦だった。7・18後楽園では山下実優を相手にプリプリ王座を防衛。8・23は、その山下とタッグを結成。
そこへ7・30のトーナメント2回戦で敗れた中島翔子、そして豆腐プロレス時代の師匠・松本浩代が登場。
「山下を超えた荒井」
「中島にリベンジする荒井」
「師匠・松本と初めて対戦する荒井」
三つのストーリーが一本のリングに集約された。
最後に立っていたのは王者・荒井。
山下との王座戦を乗り越えた荒井が、今度は山下と肩を並べ、師匠を相手にした初対決を経験し、中島への借りも返した。
バックステージで松本が荒井の成長を認め、荒井が「何度でも闘いたい」と再戦を求めたことで、ここからさらに面白くなる。
7・18が「山下を超えた荒井」なら、8・23は「師匠にも認められた荒井」。そして10・3大田区では、東京プリンセスカップを制した鈴芽が、その荒井のプリプリ王座へ挑戦する。
荒井優希の「王者としての物語」は、ここからさらに一段上のステージへ入ったと言える。