[週刊ファイト8月16日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼SmackDownボストン顔折られた女王チェルシー・グリーンに残る30日
(c) 2026 WWE, Inc. All Rights Reserved.
by スープレックス豪
・番組はニック・アルディスGMがリングで話し始めるところから動いた
・相手を輝かせてきたチェルシーが、最後に梯子を登って王者になった
・チェルシーから3カウントを取ったレイニー・リードも相手を立てる側
・「決して王者じゃない」と言っていたチェルシーへの王座返上の要求
・ベルトで人を殴った男は正義か悪か、本誌が問うたアルディスという男
・王座は返さなくていい!アルディスがチェルシーに残した30日の猶予
・泣き言はたくさんだと言ったグンサーと、飯を食いに来たと笑われた夫
・私服のまま試合に入った夫が、ボストンでボストン・クラブに捕まった
・地元ボストンのカーメロ・ヘイズが敗れ、コービンがUS王座を守った
・タッグ王座がトンガ兄弟に移り リングサイドには父HAKUが立っていた
・中邑の相棒はティッキング・タイム・ボム、高橋ヒロムの異名と重なった
・CMパンクが名指ししたのはオバ・フェミ、メインを壊したのはRオートン
・コディ・ローズxサミ・ゼインも・・・同じ安宿に泊ったケビン・オーエンズ
・フェイタル・インフルエンスの3人全員がベルトを持った8・14金曜夜
■ WWE SmackDown
日時:8月14日(日本時間8月15日)
会場:米マサチューセッツ州 ボストン TDガーデン
番組はニック・アルディスGMがリングで話し始めるところから動いた

2026年8月14日、アメリカ・ボストンのTDガーデン。WWEの番組「SmackDown」は、リングに立ったニック・アルディスの話から始まった。アルディスはこの番組の責任者で、試合を組み、選手の出場を判断する立場にある。
医師と話した結果を伝える、とアルディスは言った。先週この番組で顔の骨を折ったチェルシー・グリーンは試合に出せない。だからWWE女子王座のベルトを返してほしい。
呼び込まれたチェルシーは、そのベルトを腰に巻いて出てきた。顔にはまだ痣が残っていた。会場からは彼女の名前を呼ぶ声援が沸き起こった。
▼狙われ首-帰ってきた首SD中邑真輔狙う次? シャーロットAブリスTパクスリー
相手を輝かせてきたチェルシーが、最後に梯子を登って王者になった

プロレスの試合は、勝つ側と負ける側だけでできているわけではない。相手の技を受け、見せ場を作り、その相手を強く見せる仕事がある。チェルシー・グリーンは、その役で評価されてきた選手だ。
WWEの制作幹部であるマイケル・ヘイズは、彼女の役割についてこう言っている。「トップの逸材ではない、他の人間を作る側の演者だ」と。専門メディアの評価も同じ方向で、相手を引き上げる、与えられた出番の時間を最大限に使う、必ず印象を残す、と評されてきた。
笑いを取るのも彼女の仕事だった。ゴミ箱に体を放り込まれ、バースデーケーキやパイに顔を突っ込む。サマースラムのラダーマッチでも、ティファニー・ストラットンとじゃれ合って場内を沸かせている。
本人はこう話している。自分の最大の功績は、同業者からの称賛だ、と。
本誌は、彼女が王座を取るずっと前からその動向を注視していた。2025年10月の記事では、リングでの姿とプライベートの顔の両方を見せられるからこそ、グリーンはWWEという巨大な舞台で生き残り、常に話題を提供し続けている、と書いている。そして、今後ふたたびリング上でその実力を爆発させる時、さらなる盛り上がりを生み出すに違いない、と結んでいた。
▼“口先女王”WWEチェルシー・グリーン日焼けビキニ姿にファン歓喜!ゴージャスな素顔
そのチェルシーが、8月2日のサマースラムで暫定WWE女子王者になった。本来の王者リア・リプリーが膝を負傷して出場できなくなり、王座を空席にせず代理の王者を決めることになったからだ。
その試合内容は、リングの上に吊るされたベルトを、梯子を登って先に取った者が勝ちというラダーマッチ。出場したのはラッシュ・レジェンド、ジェイド・カーギル、シャーロット・フレアー、ティファニー・ストラットン、そしてチェルシーの5人だった。チェルシーは梯子で客席の柵に叩きつけられている。それでも最後にリングへ戻り、登り切った。

脱落した側にいた人間が、一番高いところで運を掴んだ。
戴冠の直後、彼女はこう話している。トリプルHに抱きしめられた時に思った、これは13年かけて作られたものだ、そしてあなたは何回私をクビにしたんだっけ、と。
その5日後、8月7日に、王者になって最初の試合を迎えた。ティファニー・ストラットンと組み、3人組のフェイタル・インフルエンス(ファロン・ヘンリー&ジェイシー・ジェーン&レイニー・リード)と対戦している。
チェルシーから3カウントを取ったレイニー・リードも相手を立てる側

負けたのはチェルシー組だった。決まったのはリードとヘンリーの合体技「Fatal Flaw」。二人がかりで相手の両腕を脚の間に挟み込んで動きを封じ、そのまま押さえ込む技だ。そして、3カウントをチェルシーから取ったのはレイニー・リードだった。
これまで2回にわたって個人的な印象として「リードの受けが相手を引き立てる」と述べた。リードは3人組の中では、プロレスを始めてからの年数も一番短い。下部組織のNXTから上がってきたばかりだ。それでも相手の技をきちんと受けて、相手を良く見せる。デビュー1年ちょっとの選手には私には見えなかった。
しかしこの試合では、リードの体がチェルシーの顔の上に落ちた。チェルシーは眼窩底、つまり目のすぐ下にある骨を折り、そのまま救急に運ばれた。テレビの画面ではきれいに決まったように見えた。
この技については、業界内から批判が出ているようだ。そもそも決め技として良くない、という声で、WWEが技そのものを変えることを検討しているとも報じられた。
リードとチェルシー。役割を同じくした二人が同じ舞台に立ち、またそれぞれベルトを持ち、複雑な状況に追い込まれている。個人的な見方に過ぎないかもしれないが、そこが一番印象に残った部分だ。
またチェルシーは、こう話している。
「救急に行って、眼窩底を骨折していた。見た目は最高。感じは最悪だけど、見た目はかなり最高」
「これまでの不運が無かったら、私には運がまったく無いことになる」
運を掴んだ5日後のことだった。
「決して王者じゃない」と言っていたチェルシーへの王座返上の要求

8月14日、アルディスはチェルシーに王座返上を求めた。
「言いにくいことだが……君がどれだけやってきたか知っている。これが君にとってどれだけの意味を持つかも、あのサマースラムの瞬間がどれだけのものかも分かっている。だがチェルシー、メディカルと話した。眼窩底骨折を抱えたまま君を試合に出すことは、良心にかけてできない」
チェルシーは途中で遮った。
「言わないで、お願い。もう治りかけてる。何でもするから、ニック」
アルディスは続けた。
「この仕事のこの部分が、俺は嫌いだ。だが、これが俺の仕事だ」
そして、WWE女子王座を返上してほしいと伝えた。
チェルシーは、自分がここまで何をしてきたのかを話した。
「チェルシー・グリーン、お笑い担当。他の女たちにとって都合のいい相手。決して王者じゃない。決してQB1じゃない」
QB1という言葉は、アメリカンフットボールでチームの中心となるクォーターバックを指す。
チェルシーは、結婚式に出られなかったこと、葬式にも出られなかったこと、骨を折ったこと、リングに血も汗も涙も置いてきたことを並べた。バースデーケーキやパイに顔を突っ込み、ゴミ箱に体を放り込まれ、世界中に笑われてきたとも話した。
そして言った。
「それでも毎晩ベッドで自分に言い聞かせた。全部その価値があるって。だってこの瞬間が来るから。そして今、ここにいる。私はやり遂げた」
お笑い担当。
他の女たちにとって都合のいい相手。
決して王者じゃない。
そう自分で言ってきた人間が、今は王座を腰に巻いている。
だから、返してほしいと言われても簡単には手放せない。
「誰かが私からこれを奪い取るまで、これは私のもの」
言い終えてから、アルディスに向き直った。「あなたなら分かるはず。特にサマースラムのあとなら」。アルディスは「それとこれは違う」と言い、チェルシーは「まったく同じでしょ」と返した。