[ファイトクラブ]【ハイフライヤーの代償2】飯伏幸太とリコシェ 空中戦が生んだ2人の天才

[週刊ファイト8月13日]期間 [ファイトクラブ]公開中

▼【ハイフライヤーの代償2】飯伏幸太とリコシェ 空中戦が生んだ2人の天才
 by スープレックス豪 編集部編
・Flying High世界最高峰のプロレス2014年大阪6・21新日DOMINION
・中邑真輔との2戦2013年8・4ベストバウトと2015年1・4東京ドーム
・15歳で飛び始めたリコシェ2018年1・16WWE入り、今AEW-CMLLも
・飯伏幸太の負傷記録2010年6・13から2025年10・11まで
・ハヤブサ命日の2021年3・3武道館で上谷沙弥も飛んだ
・フェニックス前史 佐山サトルが考えライガーが完成ハヤブサの武器に
・いまも630°スプラッシュを跳ぶリコシェ、膝のカミゴェを打つ飯伏
・連載次回【終章】 上谷沙弥の物語は、まだ終わっていない
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Flying High世界最高峰のプロレス2014年大阪6・21新日DOMINION
 いまも飛んでいる男がいる。
 もう飛ばない男がいる。

 2014年6月21日。大阪府立体育会館、DOMINION。
 リコシェと飯伏幸太が向かい合った。
 この頃の二人を見ていると、勝ち負けとは別のところで目が離せなかった。人間はどこまで空に近づけるのか。そんなことを、二人ともリングの上で実践していた。

<第5試合 IWGP Jr.ヘビー級選手権>
[第67代王者]○飯伏幸太
 13分37秒 フェニックスプレックス
[挑戦者 BOSJ XXI優勝者]●リコシェ
※4度目の防衛成功


▼飯伏幸太リコシェ神業!世界最高峰のプロレス~6・21新日DOMINION

飯伏幸太リコシェ神業!世界最高峰のプロレス~6・21新日DOMINION

 BEST OF THE SUPER Jr.を制したリコシェが、飯伏のIWGPジュニアヘビー級王座に挑み、敗れた。一騎打ちは、これが最初で最後になった。

 あれから12年が過ぎた。
 リコシェは、いまも飛んでいる。そして飯伏のフィニッシャーは、カミゴェになった。


▼飯伏幸太がカミゴェで内藤哲也に、石井智宏がケニー・オメガに勝利!~G1クライマックス

飯伏幸太がカミゴェで内藤哲也に、石井智宏がケニー・オメガに勝利!~G1クライマックス

中邑真輔との2戦2013年8・4ベストバウトと2015年1・4東京ドーム

 飯伏幸太の凄さを語るなら、やはり中邑真輔との試合は外せない。
 しかも、一度ではない。

 シングルでの対戦は2度ある。2013年8月4日、大阪府立体育会館のG1 CLIMAX公式戦。そして2015年1月4日、東京ドームのIWGPインターコンチネンタル王座戦である。
 2013年の一戦は、東京スポーツ新聞社制定プロレス大賞の年間最高試合賞に選ばれた。勝ったのは中邑である。2015年は、飯伏の初挑戦を中邑が退けた。

 2度の試合いずれも飯伏は勝っていない。
 この2人の試合が面白いのは、単純に「飛ぶ飯伏」と「受ける中邑」という構図ではないところだ。
 飯伏は、空中殺法だけのレスラーではなかった。
 むしろ、あの身体能力を持ちながら、真正面から中邑の攻撃を受けることができた。蹴られても倒れない。投げられても立ち上がる。

 飛べるレスラーは、当時から決して珍しくなかった。
 しかし、飯伏は「飛べる」だけではない。身体のバネ、柔軟性、バランス感覚、打撃の威力、そして相手の技を受け止める強さ。それらを全部持っていた。
 だからこそ、中邑のような独特の個性を持つレスラーと向き合っても、飯伏の存在感はまったく薄れなかった。

 むしろ、中邑の強烈な攻撃を受ければ受けるほど、飯伏の異常な身体能力が浮かび上がってくる。
 そして、ここが飯伏の恐ろしいところだ。普通なら「ここまでやったら終わり」という場面で、もう一度動き出すことができる。
 一度なら偶然かもしれない。
 二度なら技術かもしれない。
 でも、それを何度も繰り返す。それが飯伏幸太だった。

 だから飯伏の試合を見ていると、技の凄さだけではなく、「この人間の身体は一体どうなっているんだ」という感覚に襲われる。その2戦の間、2014年に、飯伏はリコシェと向き合っている。
 ここで初めて、「飛ぶ」という飯伏の武器が、別の形で極限まで研ぎ澄まされたレスラーとぶつかることになる。

 リコシェは空中戦のスペシャリストだった。
 一方の飯伏は、空を飛ぶことすら自分のプロレスの一部にしていた。
 だから、この2人の試合は単なるハイフライヤー対決ではない。
 「空中戦を極めた男」と、「空中戦すら自分の身体能力の一部としてしまった男」。

 そう考えて見ると、飯伏幸太というレスラーがどれだけ特別だったのかが、よりはっきり見えてくる。そして、そんな飯伏が、自分の最大の武器である身体を使い続けた先に待っていたものが、のちの負傷だった。

 だからこそ、飯伏の物語は単純な「飛び続けた男の悲劇」ではない。
 これほどまでに凄い身体能力を持っていた男が、その才能を、最後まで使い切ろうとした物語なのだ。

15歳で飛び始めたリコシェ2018年1・16WWE入り、今AEW-CMLLも
(c)CMLL
▼AEW勢来襲!リコシェ王座防衛!CMLL アレナメヒコ金曜日

AEW勢来襲!リコシェ王座防衛!CMLL アレナメヒコ金曜日

 リコシェには630°スプラッシュがある。
 シューティング・スター・プレスの超高角度版もある。ムーンサルト・アタックもある。ファイヤーバード・スプラッシュも、フェニックス・スプラッシュもある。
 飛び技のデパートだ。

 15歳の誕生日にデビューした男は、名前を変えながら、ヘリオスになり、プリンス・ピューマになり、リコシェになった。
 新日本を経て、2018年1月16日にWWEと契約。NXT北米王座。US王座。IC王座。WWEでも王座を獲得した。
 そして現在はAEWにいる。初代AEWナショナル王者にもなった。
 場所は変わった。名前も変わった。それでも、630°スプラッシュは健在だ。

 初めてあの技を見た時、私は衝撃を受けた。こんな奴がいるのかと。
 世の中にはすげー奴がいると、ワクワクした。

 リコシェについて、確認できる範囲では大きな負傷の記録が見当たらない。
 もちろん、リングに立っている以上、身体に何も起きなかったという話ではない。ただ、ここで飯伏の負傷歴と並べてみると、記録の見え方が違ってくる。

飯伏幸太の負傷記録2010年6・13から2025年10・11まで

 2010年6月13日。BEST OF THE SUPER Jr.決勝、プリンス・デヴィット戦で左肩を脱臼。
 2011年9月11日。左肩脱臼。

 2014年7月4日。KUSHIDA戦、IWGPジュニア王座戦で脳震盪。
 2015年11月2日。頸椎椎間板ヘルニアの診断。
 2021年10月21日。右肩関節前方脱臼骨折、関節唇損傷。
 2024年1月2日。両足首負傷。
 2025年10月11日。右足の大腿骨を骨折。全治1年。

 その中でも、2021年10月21日は外せない。
 日本武道館。G1 CLIMAX 31優勝決定戦。相手はオカダ・カズチカ。飯伏はフェニックス・スプラッシュを放ち、オカダにかわされて自爆した。
 右肩を脱臼骨折。全治2か月。

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 のちに本人が、そのときのことを話している。
 「自分の中ではやっぱり焦ってましたよね。早く決めたい。何とかして決めようと。」
 そして、もう一つ。
 「体重のコントロール。今回、それまでに体重が減ったり増えたりして…あれって100グラム違ったら全然(感覚が)違う。」
 
 KENTA戦から当日までに、体重は3キロ変動していた。
 100グラム違えば感覚が違う。それは飛ぶ側にしか分からない数字であり、感覚なのだろう。
 ただ、これは後から振り返った本人の言葉である。フェニックス・スプラッシュは、勢いだけで飛んでいる技ではなかった。

 身体の位置。体重。回転。着地。
 そのどれかがずれれば、リングは待ってくれない。
 そして、その7か月前にも、日本武道館でフェニックスが空転している。

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