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[週刊ファイト08月06日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼連載【ハイフライヤーの代償】1上谷沙弥、翼を封印した不死鳥
by スープレックス豪 編集部編
・2026年4・26満員の横浜アリーナ 翼を閉じた王者を落としたのは?
・2023年12・25品川 玖麗さやかデビュー戦の相手は上谷沙弥だった
・人間は本来飛べない だから私たちは空中技に息をのむ!
・獣神サンダー・ライガー空中技を「プロレス言語」に変えた代償・脳腫瘍
・リングを立体的に変えたGサスケ1996年J-CROWN決勝で頭蓋骨を
・空中技絵にしたハヤブサ2001年10・22 後楽園奪われた「飛ぶ」人生
・棚橋弘至「飛べるから飛んだ」のではない 膝2回、肩1回、そして引退
・連載次回 最も高く回った男と同じ夜に決勝を戦った男
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いま、飛ばなくなった女がいる。
2026年4・26満員の横浜アリーナ 翼を閉じた王者を落としたのは?

ワールド・オブ・スターダム王座戦は玖麗さやか●上谷沙弥、27分5秒。決まり手は玖麗のファイヤーバード・スプラッシュだった。赤いベルトは第21代王者の腰へ渡った。
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奇妙なのは、その一撃を受けた相手である。上谷はフェニックス・スプラッシュを代名詞にしてきた選手だ。リング外へ身体を向けてトップロープに立ち、半ひねりを加えて前方回転する大技である。
上谷がこの技を封じたのは、これが初めてではない。2022年11月3日、広島サンプラザホール。白川未奈とのワンダー・オブ・スターダム王座10度目の防衛戦で、上谷のフェニックス・スプラッシュは失敗した。

白川は顎と口を負傷し、前歯を折って約2か月の欠場を強いられている。上谷はそこで技を封じた。自分のためではなく、相手を壊したからだ。
解禁したのは一度だけ。2023年4月23日、横浜アリーナ。白川との再戦だった。
その試合で上谷は敗れ、ワンダー・オブ・スターダム王座から降りている。そしてこの日を最後に、上谷はフェニックス・スプラッシュを使っていない。それから3か月後の2023年7月23日、5★STAR GP開幕戦の大田区総合体育館。
中野たむとの公式戦で、上谷はリングを囲む照明やぐらへ登り、場外へ身体を投げた。着地に失敗して左ヒジを脱臼。
レフェリーは即座に試合を止め、担架が入った。欠場は4か月に及び、残りの公式戦はすべて不戦敗となった。
肩の状態が分かったのは、復帰後に受診してからだった。着地の衝撃が積み重なって腱板が部分断裂し、左肩の靱帯は3本のうち2本が切れていた。上谷がそれを明かしたのは2024年4月。
飛ぶのをやめてから、1年が経っていた。
翼を閉じた上谷は2024年12月29日、両国国技館で中野たむを破ってワールド・オブ・スターダム王座を初戴冠し、2025年度の東京スポーツ新聞社制定プロレス大賞で最優秀選手賞を受賞した。女子選手の受賞は第52回のこの賞で初めての事だった。
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その上谷が、自分が手放した技の源流にあたる一撃で王座から降りた。「沙弥様のその赤いベルト、少しの間だけお前に貸しといてやるから。大切にしとけよ。私がすぐ奪いに返しに行ってやるよ」。リング上の言葉は強気だったが、声は震えていた。
2023年12・25品川 玖麗さやかデビュー戦の相手は上谷沙弥だった
玖麗さやかがデビューしたのは2023年12月25日、品川インターシティホールの『NEW BLOOD 12』である。その相手が上谷沙弥だった。上谷はスター・クラッシャーから片エビ固めで、新人の初戦を終わらせている。

デビュー前の玖麗はこう話していた。「上谷さんは強くてカッコよくて、リングを自由に飛び回る姿がとっても輝いていて、私にとってあこがれの選手です」。飛び回る姿に憧れて、この世界に入ってきた選手だった。
二人がベルトを懸けて向かい合ったのは2度ある。1度目は2025年5月11日、後楽園ホールのワールド・オブ・スターダム王座戦。上谷が22分0秒、旋回式スター・クラッシャーから片エビ固めで3度目の防衛を果たした。
デビュー戦と同じ技である。2度目が4月26日の横浜アリーナだった。
決めたのは玖麗のファイヤーバード・スプラッシュ。憧れた側が空から落ちてきて、憧れられた側は翼を閉じたままだった。
人間は本来飛べない だから私たちは空中技に息をのむ!
本来、リングは「強さ」を競う場所だ。相手を倒し、3カウントを奪い、勝者と敗者を決める。だが、観客が最も息をのむ瞬間は、強烈なラリアットでも、豪快なジャーマンスープレックスでもない。
人が空を飛ぶ瞬間だ。トップロープへ駆け上がり、一瞬だけ静寂が訪れる。そして次の瞬間、レスラーの身体は重力を忘れたかのように宙を舞う。