[ファイトクラブ]野球もプロレスも、日本はアメリカのマイナー・リーグ化されるのか!?

[週刊ファイト4月2日]期間 [ファイトクラブ]公開中

▼野球もプロレスも、日本はアメリカのマイナー・リーグ化されるのか!?
 photo:George Napolitano/他 by 安威川敏樹
・日本野球界はアメリカのビジネス規模に全く太刀打ちできない
・皮肉なことに日本野球のレベル・アップが選手流出を招いてしまった
・日本プロ野球と全く同じ悩みを抱える日本のプロレス界
・2026年はプロレス元年になる! 筆者の予言はまた外れるのか!?


 日本中を熱狂させたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が閉幕した。ベネズエラが、史上最強と言われたアメリカを破り、初優勝を遂げたのである。
 ベネズエラの熱狂ぶりは日本を遥かに超え、優勝した翌日には祝日となったほどだ。サッカーなどに比べると、世界的にはマイナーと言われた野球が、WBCのおかげで着実に世界に浸透し始めた証拠とも言える。

 その一方で、日本では様々な課題が浮き彫りにされた。一つは、侍ジャパンが優勝したベネズエラに敗れ、ベスト8止まりというWBC史上最低の成績に終わったこと。ちなみに言うと、野球日本代表はWBCのみならず、オリンピックも含めて常にベスト4以上の成績を残してきたのだ。これほど安定した成績を残してきた国は、野球の母国アメリカを含めて、他にはない。
 もう一つは、日本では地上波中継されず、有料配信であるNetflix(ネトフリ)の独占中継になったことだ。これにより、WBCがテレビ中継されないことすら知らないお年寄りまで続出し(筆者の親がそうだった)、野球難民が数多く誕生したことである。これは、いわゆるライト層、にわかファンの取り込みを制限された形になり、野球人気の低下が危惧されたのだ。

▼来年のWBC地上波中継なし! テレビ・プロレス衰退との関連性

[ファイトクラブ]来年のWBC地上波中継なし! テレビ・プロレス衰退との関連性

日本野球界はアメリカのビジネス規模に全く太刀打ちできない

 ネトフリ独占中継に関しては、放映権を持たない民放各局が積極的にWBCの特番を組んだため、盛り上がりに欠けるということはなかった。とはいえ、今後の課題は残る。150億円とも言われる巨額な放映権料が、次回以降のWBCでも継続されると、もはや日本のテレビ局では手が出せないコンテンツになると思われるからだ。
 今大会は侍ジャパンが2連覇に挑戦ということでかなり注目されたものの、もし今後の大会での成績が芳しくないと、地上波中継が無いことも相まって野球人気が低下することも予想される。

 そうならないためにも、侍ジャパンには一層の強化を図ってもらいたいところだが、今回はベスト8止まりだったこともあって、かなり厳しい意見が飛び交った。アメリカやベネズエラ、ドミニカ共和国あたりが本気を出して一流のメジャー・リーガーを揃えてくると、侍ジャパンでは太刀打ちできなくなるのではないか、と。
 実際、侍ジャパンで活躍したのは大谷翔平、鈴木誠也、吉田正尚、山本由伸といったメジャー・リーグ(MLB)勢で、日本プロ野球(NPB)勢はあまり目立った活躍はできなかった。

 そこで、日本ももっとMLBに人材を送り込むべきだ、という意見が多数を占める。NPBだけの活躍では井の中の蛙で、侍ジャパンの大半をメジャー・リーガーで固めないと世界では勝てないと言われているのだ。
 そもそも、侍ジャパンの四番打者だった吉田ですら、怪我があったとはいえボストン・レッドソックスでは控え選手である。つまり、侍ジャパンはレッドソックスよりも弱いということだ。

 その反面、このままではNPBはMLBのマイナー・リーグ化されるのではないかという心配の声もある。WBCの放映権で日本のテレビ局が束になって掛かっても、ネトフリには敵わなかったのだ。
 同じことが、NPBとMLBの間にも起きている。2025年時点でのMLB最高年俸は大谷で7000万ドル(約105億円)、NPBでは有原航平の6億円。なんと、大谷は有原の17.5倍もの年俸を貰っているのだ。しかも、有原はMLBでは2年間で3勝しか挙げられず、ハッキリ言って通用しなかった。そんな投手が、NPBでは最高年俸である。

 もはやNPBは、MLBには全く太刀打ちできない。その理由は、MLBは世界を相手にビジネスをしているのに対し、NPBは国内のみのマーケットだからである。MLBの商売相手は、日本をはじめとする韓国や台湾などの東アジア、そして中南米にカナダと幅広い。さらに、MLBはオセアニアやヨーロッパも視界に入っているようだ。
 しかし、NPBが相手にするのは人口1億人程度の日本国内のみ。MLBの約1/20のビジネス規模にしかならないのも頷ける。そうなると、NPBのトップ・プレーヤーがMLBに挑戦するのは当たり前だ。そして、NPBがMLBのマイナー・リーグ化すると懸念されているのである。

皮肉なことに日本野球のレベル・アップが選手流出を招いてしまった

 レベル・アップのためにも、もっとMLBに選手を送り込むべきだという意見と、このままスター選手がMLBに流出するとNPBが空洞化してしまうという、この相反する意見。言ってることは正反対なのだが、不思議なことにどちらも正論なのだ。
 MLBに挑戦する選手がいなくなればNPBはガラパゴス化してしまうし、NPBのスター選手が一斉にMLBへ流れてしまえば、NPBはMLBのマイナー・リーグになってしまいかねない。

 実は、NPB黄金時代と言われた1980年代は全く事情が違っていた。NPBには読売ジャイアンツ(巨人)というモンスター球団があり、ニューヨーク・ヤンキースをはじめとするMLB各球団は巨人の足元にも及ばないほど収益の差が大きかったのである。
 当時、巨人戦は毎試合のようにゴールデン・タイムでの地上波中継があり、視聴率は常に20%を超えていた。後楽園球場や東京ドームには毎試合5万人もの大観衆が詰め掛けていたのである。

 マスコミの扱いもハンパなく、各スポーツ新聞の一面トップはいつも巨人。テレビでも巨人を中心にプロ野球の特番が何度も組まれていた。野球とは関係ない雑誌でもプロ野球の話題は事欠かず、ヤンキースから巨人に入団したロイ・ホワイトは、ヤンキースにいた15年間で撮られた枚数の写真を、巨人ではたった3ヵ月で撮られた、と語っていたほどである。当時の巨人は間違いなく、ビジネス面では野球のみならず世界最強のプロ・スポーツ・チームだったのだ。
 ただし、当時はまだ日本人メジャー・リーガーが1人もいない時代で、その実力差は歴然としていた。オフ・シーズンに日米野球が行われても、NPBチームは観光旅行気分のMLBチームに全く歯が立たない。アメリカでは3Aクラスのマイナー・リーガーに過ぎなかったランディ・バースが、阪神タイガースに入団すると2年連続三冠王に輝いたほどだ。

 21世紀に入り、巨人一極集中が是正され、日本人メジャー・リーガーが当たり前になって以前ほどMLBとの実力差はなくなったものの、地上波中継は激減し、ビジネス面ではMLBに大きく水を開けられる。
 2004年に勃発した球界再編騒動以降、NPBの各球団は懸命な集客努力を行い、実際に閑古鳥の鳴く球場がなくなったとはいえ、皮肉なことにレベルが上がったことでMLBに選手を獲られる結果になってしまった。

 実は、平均観客動員数で言えば、NPBはMLBを上回っている。2024年度、阪神より上のMLB球団はロサンゼルス・ドジャースだけだったが、もし阪神甲子園球場のキャパシティがドジャー・スタジアムと同じだったら、阪神の方がドジャースよりも多くの観衆を集めるだろう。何しろシーズン前の段階で、甲子園の1年間の前売り券が完売してしまうほどだ。
 NPBで最も平均観客数が少なかった球団は埼玉西武ライオンズだが、MLBにはそれを下回っていたのが8球団もあった。それでも、MLBがNPBよりも遥かに儲けているのは、世界中に試合映像やグッズを売っているからに他ならない。

日本プロ野球と全く同じ悩みを抱える日本のプロレス界

 それでは、NPBはMLBに食われてしまうのか? 実際、MLB球団はNPB球団を買って、自軍のマイナー球団にするぐらいの資金力はあるだろう。
 そのうち、MLBそのものがNPBを買収して、日本マーケットを完全にMLB傘下にすることも可能なはずだ。そうなれば、日本野球は完全にMLBの軍門に降ってしまうことになる。

 だが、そうはならないのではないか。資金力では可能でも、買い取るには日本野球はあまりにも巨大すぎるからである。この『巨大』というのはビジネスのみならず、日本野球の歴史やファン層を含めてのことだ。
 明治時代、日本に輸入されたベースボールは『野球』という日本語を与えられ、早慶戦をはじめとする大学野球が大人気を博し、大正時代から始まった高校野球(当時は中等野球)、そして社会人野球も行われ、戦前の昭和初期にはプロ野球を生み出した。日本人の野球熱はアメリカ人にすら理解不能であり、国技と言っても過言ではないほどファンが大量発生したのである。

 そして、日本野球は独自の発展を遂げた。これらをひっくるめてMLBが日本野球を乗っ取るのは、並大抵のことではない。
 それならば、NPBの人気をこのまま維持させ、スター選手を買い取った方が手っ取り早いだろう。もちろん、MLBが日本マーケットをこれまで以上に席巻することは間違いないが、完全マイナー・リーグ化はしないと思われる。

 NPBと同じ悩みを抱えているのが日本のプロレス界だ。今や日本のプロレスにとって、アメリカのプロレスは百万光年の彼方に行ってしまったほど、手の届かない存在になっている。
 かつての日本は、アメリカのレスラーにとって『日本帰りは出世する』という諺が生まれたほどのプロレス天国だった。

 それが、今ではどうだ。新日本プロレスの棚橋弘至社長が「WWEは3兆円企業、新日本プロレスは53億円企業」と嘆いていたほどの差である。
 その規模、WWEは新日の約570倍。もう比較すること自体がおかしいぐらいの数字だ。大谷の有原に対する17.5倍の年俸どころの話ではない。というより、日本最大のプロレス団体である新日本プロレスの年商は、大谷の年俸の約半分に過ぎないのだ。

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