▼大谷よ、これが真の二刀流だ! ザイオンがラグビー・リーグ米代表に
photo:テキサスロングホーン/他 by 安威川敏樹
・完全に大谷翔平を超えた、ザイオンの二刀流
・ラグビー・リーグって何? 日本人のほとんどが知らないスポーツ
・日本ではマイナーでも、世界的には人気スポーツのラグビー・リーグ
・驚くべきザイオンのタフネスぶり、次は日本代表サムライズ入りか!?
いよいよ野球世界一を決めるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開幕する。最も注目されるのは何と言っても大谷翔平だろう。今大会では投手としての登板は無さそうだが、大谷は前回大会で二刀流として大暴れした。
だが、ちょっと待って欲しい。大谷の場合は二刀流と言ってもあくまで野球内での話だが、プロレス界には2つのスポーツを掛け持ちする選手がいるのだ。
それがザイオンである。ザイオンは現役プロレスラーながら、先日ラグビー・リーグのアメリカ代表としてテストマッチ(真剣勝負の国代表同士の試合)に出場した。
これは完全に大谷を超えた、真の二刀流である。

photo:George Napolitano
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ラグビー・リーグって何? 日本人のほとんどが知らないスポーツ
現地時間2月27日、アメリカ合衆国ネバダ州ヘンダーソン(ラスベガス郊外)でラグビー・リーグのアメリカ代表vs.スコットランド代表がテストマッチを行った。アメリカ代表の選手として、ザイオン(本名:ダニエル・ビド)が出場したのである。
誤解して欲しくないのは、ザイオンが出場したのは日本人が想像するラグビーではなく、ラグビー・リーグでの試合だったということだ。ラグビー・リーグは日本では全く知られていない。

「え? ラグビー・リーグなんて日本にもあるじゃん」とほとんどの人は思うだろう。たしかに、日本にもラグビー・リーグは存在するが、大抵の人は花園ラグビー場などで行われる15人制のラグビーを連想するに違いない。だがラグビー・リーグとは、ラグビーのリーグ戦という意味ではないのだ。
この15人制ラグビー、あるいはオリンピック競技にもなっている7人制ラグビーは、正式にはラグビー・ユニオンと呼ばれるスポーツ。しかし、ザイオンが出場したラグビー・リーグは13人制で(9人制や7人制もある)、ラグビー・ユニオンとはルールが全く異なるのだ。今後、本稿ではラグビー・ユニオンをユニオン、ラグビー・リーグはリーグと表記する。
元々、ラグビー・フットボールとして競技化されたのはユニオンの方。ユニオンは貴族などの富裕層がプレーしており、アマチュアリズムが基本だったが、ラグビーは労働者層にも広まっていった。
ところが、労働者層は生活に余裕がないため、ラグビーをプロ化して報酬を得ようとしたが、ユニオンはこれを認めず、新たにリーグとして枝分かれする。リーグの選手は肉体労働者が多かったため、負傷をすると仕事に支障が出るので、怪我をしやすい危険なプレーを排除するようになった。なお、リーグがプロ化されたのは19世紀の1898年だが、ユニオンでプロが容認されたのは何とその約100年後の21世紀近い1995年である。
リーグでは、ラックやモールといったユニオンではお馴染みの密集プレーがない。ラインアウトも存在せず、要するにユニオンにおけるフォワード・プレーがほとんどないのだ。スクラムだけはかろうじてあるものの、ユニオンみたいに押し合わず、ほとんど形式的なものだけ。
パスやランなどのユニオンでいうバックス・プレーに主眼が置かれ、ユニオンに比べて華麗なプレーが多く、素人でも判りやすいルールになっている。
ユニオンでボールを持った選手がタックルされると、すぐにラックやモールなどの密集状態になり、ボールの争奪戦となるのが特徴だ。
特に最近ではラックの連取が重要な戦法であり、2次攻撃、3次攻撃を仕掛け、相手のディフェンス・ラインを崩していく。これを『フェイズを重ねる』という。
▼ラックの連取により36フェイズも重ね、トライを獲った桐蔭学園vs.大阪桐蔭の試合
▼ユニオンでの密集プレー、地面にボールがあればラック(誰かがボールを持っていればモール)

日本ではマイナーでも、世界的には人気スポーツのラグビー・リーグ
一方、リーグにはルール上『フェイズを重ねる』という戦法はできない。なぜなら、タックルが成立した時点でプレーが止まってしまうからだ。
タックルが成立すると両軍はすぐに離れて、ボールを持っている選手は地面にボールを置き、足でボールを後ろに掻き出して味方に渡し、プレーが再開する。この、ボールを足で後ろに掻き出すプレーを『プレイ・ザ・ボール』という。
▼ユニオンには無い、リーグ独特の『プレイ・ザ・ボール』

つまり、ユニオンのようなラックやモールという密集プレーがないということは、リーグではボールの争奪戦が起こらないのだ。
「ボールの争奪戦がないということは、ボールを落したりしない限り、ボールを持っている方のチームの攻撃がずっと続くってこと?」と思うかも知れないが、そうではない。
リーグでは、野球と同じく攻撃側と守備側がハッキリ分かれ、6回タックルが成立すると攻守が交代する。つまり、攻撃側は6回タックルされる前に、点を取らなければならない。要するに、ラグビーにアメリカン・フットボール的な要素を加えたスポーツなのだ。
ただ、アメフトと違い1回の攻撃が終わるたびにハドル(作戦会議)を組むことはなく、試合のテンポは速い。また、アメフトでは1チームの中でもオフェンス・チームやディフェンス・チーム、キッキング・チームなどに分かれるが、リーグではそんなことはなく選手交代の無い限り13人で行う。
▼ユニオンと違い、タックルが成立するとプレイ・ザ・ボールで再開するリーグ(筆者撮影)
ザイオンはオーストラリア出身。オーストラリアと言えばラグビーのイメージが強いが、事実ユニオンのワールドカップではオーストラリア代表(ワラビーズ)は2度の優勝を誇る。だが、オーストラリア国内での人気は、ユニオンよりもリーグの方が上だ。
世界的に見ても、リーグの方がユニオンよりも人気が高い国は多い。パプアニューギニアやクック諸島なんて、ユニオンではまず見掛けない国だが、リーグでは強国なのだ。