[週刊ファイト02月26日]期間 [ファイトクラブ]公開中
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▼全日富士大会に刻まれた前哨戦の熱量と2つの記念日が交差した夜
(C)全日本プロレス公式 編集部編
・全日本プロレス富士大会!激闘の記録
・宮原健斗と斉藤ジュンの火花が先導した、前哨戦の導火線
・世界タッグ戦線の焦点が研ぎ澄まされた夜
・空中分解した因縁が再点火した黒潮TOKYOジャパンvs.大森北斗
・ライジングHAYATOがシド・ヴィシャスで井上凌を仕留める
・潮﨑豪&芦野祥太郎が豪腕で田村男児をねじ伏せる
・北里アリーナ富士の幕開けを飾った無差別級の衝突
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全日本プロレス富士大会!激闘の記録
■ 全日本プロレス チャリティ富士大会~いただきへのはじまり~
日時:2月11日(水・祝)
会場:静岡・北里アリーナ富士(富士市総合体育館)
<第6試合 三冠ヘビー級選手権試合前哨戦 タッグマッチ 30分1本勝負>
宮原健斗 ○本田竜輝
16分46秒 ファイナル・ベント→片エビ固め
斉藤ジュン ●セニョール斉藤
<第5試合 世界タッグ選手権試合前哨戦 タッグマッチ 30分1本勝負>
○綾部蓮 タロース
12分03秒 デスルーレット→片エビ固め
●鈴木秀樹 立花誠吾
<第4試合 シングルマッチ 30分1本勝負>
○黒潮TOKYOジャパン
9分13秒 イケメンサルト→片エビ固め
●大森北斗
<第3試合 Road to ゼンニチJr.タッグフェスティバル 8人タッグマッチ 20分1本勝負>
青柳亮生 ○ライジングHAYATO MUSASHI 佐藤光留
11分15秒 シド・ヴィシャス→片エビ固め
吉岡世起 進祐哉 ●井上凌 関札皓太
<第2試合 タッグマッチ 20分1本勝負>
○潮﨑豪 芦野祥太郎
10分11秒 豪腕ラリアット→体固め
安齊勇馬 ●田村男児
<第1試合 シングルマッチ 20分1本勝負>
○羆嵐
8分27秒 逆エビ固め
●小藤将太
宮原健斗と斉藤ジュンの火花が先導した、前哨戦の導火線
2月11日、静岡・北里アリーナ富士で行われた「全日本プロレス チャリティ富士大会~いただきへのはじまり~」のメインイベントは、2.23東京・大田区総合体育館で控える三冠ヘビー級選手権を見据えた前哨戦として組まれた、宮原健斗&本田竜輝vs斉藤ジュン&セニョール斉藤のタッグマッチであるが、この試合が特別な温度を帯びた理由は、単に王者と挑戦者が同じリングに立ったからではない。
宮原健斗にとっては2008年2月11日の健介オフィス・後楽園ホール大会でデビューを果たした記念日がちょうど大会当日と重なり、さらにパートナーの本田竜輝も2000年2月11日生まれでバースデー当日の試合となったことで、リングの空気は「前哨戦」という言葉だけでは収まらない祝祭性と緊張感が同居するものになっていたのである。
先発で出た宮原健斗は健斗コールに応えながら、チャレンジャー・斉藤ジュンといきなり一進一退の攻防を展開し、序盤から「三冠ヘビー級選手権試合前哨戦」という枠組みを、体感として観客に理解させる仕事をやってのけたのだが、リング上が本田竜輝vsセニョール斉藤の構図に移っても、宮原健斗と斉藤ジュンは場外で激しく火花を散らし続け、試合の焦点が「誰がフォールを取るか」だけでなく、「王者と挑戦者の温度差がどこまで上がるか」にも置かれていたことが明確になっていく。タッグマッチでありながら、視線が自然と宮原健斗と斉藤ジュンへ吸い寄せられていく流れは、前哨戦において最も重要な“勝敗以上の伏線”を、試合の時間軸の中で丁寧に積み上げていたと言っていい。
試合の中盤は本田竜輝が捕まる時間が続き、斉藤ジュン&セニョール斉藤の側が主導権を握る局面が目立ったが、ここで本田竜輝がスピアで反撃に転じて流れを切り替え、宮原健斗へスイッチした瞬間、会場の熱が一段階上がったのが印象的である。宮原健斗はフロントハイキックからドロップキックを2連発で畳みかけ、健斗コールでパワーをチャージすると、強烈なカウンターを叩き込みながら「静岡、待たせたな」と斉藤ジュンの髪をかき上げる仕草を真似し、ただ勝つための攻撃ではなく、この前哨戦を“物語として成立させる”ための表現を混ぜていく。
そこからシャットダウン・スープレックスの体制に入るも、怒りの斉藤ジュンが強烈な張り手で拒み、さらに豪快なブレーンバスターでぶっこ抜いてみせたことで、王者のペース一色にはさせないという挑戦者の意地が、技の説得力として残ったのである。
この試合で独特だったのは、セニョール斉藤がラフプレーを織り交ぜた職人技で宮原健斗を翻弄し、前哨戦の熱量に“嫌な粘度”を加えていた点であり、宮原健斗が簡単にはリズムを作れない時間帯が生まれたことが、終盤の爆発力を逆に際立たせた。宮原健斗は顔面蹴りでピンチを脱し、本田竜輝に勝負を託す形で局面を託したが、本田竜輝は狂乱のラリアットからスパインバスターへつなぎ、さらに逆エビ固めをガッチリ決めて勝負を絞りにいく。
しかしセニョール斉藤はロープエスケープで生き延び、ここで会場に26歳コールが発生したことで、本田竜輝のバースデー当日という文脈が試合の最終盤に重なり、勝ちたい理由がリング上に可視化されていく。斉藤ブラザーズの連携に捕まる場面もあったが、宮原健斗がリングに飛び込んで救出し、セニョール斉藤にブラックアウトをクリーンヒットさせて道を開くと、本田竜輝がフルパワーのラリアットからファイナルベントを敢行して文句なしの3カウントが入った。タッグの勝利ではあるが、流れとしては宮原健斗の介入が勝負の扉をこじ開け、本田竜輝が最も説得力のある形で扉を蹴破った決着であり、前哨戦として“期待値を上げる勝ち方”になっていたのである。
試合が終わっても宮原健斗と斉藤ジュンの激しさは収まらず、宮原健斗が自分の頭を指さすDOOMポーズからブラックアウトを放って斉藤ジュンを完全KOし、最後の前哨戦が行われる2.15後楽園大会へ向けて強い通告を残していく流れは、勝った側の余裕というより、むしろ王者としての危機感と支配欲が同時に噴き出したような凄みがあった。リング上のマイクで宮原健斗は、斉藤ジュンに対してこう言い放っている。
宮原「オイ、斉藤ジュン!どうやら2月23日、東京・大田区総合体育館では、全日本プロレス会社の方はオマエら兄弟を推すらしいな。どうだファンは?どっちを推すんだ?オイ、最後のキック痛かったか?しゃべんじゃねぇ、オラ。オマエに教えてやろう。あえて教えてやろう。この俺の足癖の悪さは業界一だ。2月23日、東京・大田区総合体育館、この技の名前教えてやろうか。『逆DOOM』だ」
この言葉は挑発でありながら、技に名前を与えることで物語の象徴を固定し、2.15後楽園、2.23大田区へと線を引く宣言でもあるのだが、さらにバックステージでは同じ主張をより濃いテンションで繰り返し、前哨戦を勝った満足ではなく、むしろ“もう一度喋れなくしてやる”という執着を前面に出している。
宮原「さぁ斉藤ジュン、決まったらしいな。何が決まったか分かるか?2.23東京・大田区大会、#DOOMの日らしいな。俺も社会人だ、受け入れよう。だから今日見たろ?あの技を。見てくれ俺の黄金の右足を。プロレス業界一、足癖の悪い宮原健斗があの名前を教えただろ、リング上でな。分かったか?その名は『逆DOOM』だ!分かったな、こうだ。指さして、こうだ。逆DOOMをかましてやったよ。オマエ、マイクで応えられないくらいのびてたな。ハハハ、逆DOOM、2月23日、いや!2月15日、東京・後楽園ホール、最後の前哨戦で業界一足癖の悪い逆DOOM決めてやるからな。いいか!2月15日、後楽園ホールでもう一度オマエを喋れなくしてやる。逆DOOMだ」
前哨戦の勝敗が「本田竜輝のファイナルベントで3カウント」という事実に落ち着いたとしても、三冠戦の中心にいるのは宮原健斗と斉藤ジュンであり、その中心線が試合後の言葉でより濃く描き直された、という見方が自然である。
一方で、このメインイベントを締めたもう1つの核は本田竜輝であり、バースデー当日に勝利を掴んだ事実を、本人が最も分かりやすい言葉で未来へ接続している点が重要である。リング上で本田竜輝は、勝ったのが自分であることを茶目っ気を交えて主張しながらも、宣言は一点突破である。
本田「あのぅ、勝ったの俺なんですけど…。26歳になったぞ!俺からは一言だけ、26歳は三冠獲るぞ。この全日本プロレスには、俺の夢、観に来てくれるファンのみんなの夢がたくさん詰まっている。そして、俺からファンのみなさんに伝えたいことがある。ミュージック流してくれ。(ホンダンスを披露)最後に勝ったということで俺が富士大会を締めさせてもらう。みんな最後、反則カウントを数える準備はいいか?せーの、1・2・3・4!」
さらにバックステージでもテンションを落とさず、勝利と誕生日をまとめて肯定し、そこから三冠へ直結させている。
本田「富士大会終了、最後勝ったぜ!26歳になった!おめでとう!ありがとう!26歳は三冠獲るぞ」
この試合は三冠ヘビー級選手権の前哨戦である以上、どうしても宮原健斗と斉藤ジュンの線に意識が引っ張られるが、決着の3カウントを奪ったのは本田竜輝であり、しかも宮原健斗のブラックアウトでセニョール斉藤を崩した直後に、フルパワーのラリアットからファイナルベントで取り切ったという流れが、単なる“アシストされた勝利”ではなく“勝ち切る役割を全うした勝利”として成立している点は見逃せない。前哨戦の結末として、王者が挑戦者を言葉ごとねじ伏せる宣言を残し、同時に若いパートナーが「26歳は三冠獲るぞ」と未来を宣言する、この2本の矢が同じ夜に放たれたことこそ、富士のメインイベントが濃く記憶に残る理由である。
世界タッグ戦線の焦点が研ぎ澄まされた夜
2月11日に静岡・北里アリーナ富士で行われた大会の第5試合・セミファイナルは、世界タッグ選手権試合前哨戦として組まれたタッグマッチであり、世界タッグ王者として君臨するタイタンズ・オブ・カラミティの綾部蓮&タロースが、2.23大田区大会での防衛戦で相対する諏訪魔&鈴木秀樹のうち鈴木秀樹、そして立花誠吾と対峙する構図になっていたのだが、この一戦は単に次のビッグマッチへ向けた顔合わせに留まらず、王者側が「勝つ」だけでなく「勝ち方」を積み重ねていく過程そのものが、前哨戦の価値を押し上げる試合であったと言える。
試合前の段階で、綾部蓮は前哨戦の第1ラウンドでもデスルーレットで鈴木秀樹から3カウントを奪っており、今回もまた同じ相手から同じフィニッシュへ向けて持っていくのか、それとも鈴木秀樹が王者の読みを外してくるのか、前哨戦でありながら「結末の再現」と「対策の提示」が同居する独特の緊張感が、セミファイナルという位置にふさわしい重みを生んでいたのである。
開始のゴングは綾部蓮と鈴木秀樹の顔合わせで鳴り、序盤から緊張感あふれる攻防が続いたとされているが、この出だしは前哨戦の文法として実に明快で、王者と防衛戦の相手が触れ合う時間を最初から確保することで、観客の意識を「世界タッグ」という到達点へ一気に引き寄せる装置として機能していた。鈴木秀樹は自軍コーナーに追い詰めると立花誠吾のアシストを受けながらボディへのエルボーを連発し、個の技術だけではなく連携で綾部蓮の呼吸を乱そうとしたが、さらに狙った合体タックルでは立花誠吾のみが弾き飛ばされてしまい、序盤の段階からタイタンズ・オブ・カラミティのサイズ感と圧力が、相手の「作戦」を一部破綻させる形で可視化された点が大きい。
ここで重要なのは、王者側が単発のパワー誇示に終始せず、相手の狙いを潰したうえで試合全体の流れを自分たちのものにしていく、前哨戦らしい支配の手順を踏んでいたことである。
試合は場外戦に発展するとタイタンズ・オブ・カラミティが大暴れし、リング内外で支配領域を広げていくのだが、その中で綾部蓮が、世界ジュニア王者としての意地を見せる立花誠吾を巨人殺法で圧倒したという描写が、単なる体格差の提示以上の意味を持っていた。立花誠吾はタロースのサイドウォークスラムを喰らいながらも、アニキコールで奮い立って低空ドロップキック、後頭部へのエルボーで逆襲し、受け身のまま終わらない姿勢を示したが、タイタンズ・オブ・カラミティはこの抵抗を「耐えたから偉い」で終わらせず、押し返して息の根を止めにいく流れへ繋げていく。
前哨戦という文脈では、挑戦者側やその同盟者が「やれるところ」を見せることで本番の期待を膨らませるのが定番だが、この試合では王者側がその芽を摘む形で主導権を握り続けたため、むしろ本番に向けて「何をどうすれば崩せるのか」がより難題として立ち上がっていく構造になっていたのである。
鈴木秀樹の攻めは、ただ派手に倒すのではなく、タロースが大の字になった局面で足、腕、1本ずつにストンピングを落とし、さらにネックツイストで首にもダメージを与えてフロント・ネックロックへ移行するという、勝ちへ至るための削りを丁寧に積むものであった点が特徴的である。綾部蓮のフロントハイキック、ランニング・ネックブリーカーを喰らっても、突進を止めてぶら下がり式首4の字を極めるなど、相手の勢いを受け切らずに「止める」ことで流れを奪い返そうとする姿勢が見て取れ、さらにタロース目掛けて立花誠吾をスローして巨人コンビを分断する場面は、世界タッグ王者の強みである連係とサイズを同時に断ち切ろうとする、前哨戦としての明確なメッセージになっていた。
つまり鈴木秀樹は、この段階で既に「本番で勝つためには何をすべきか」を試合の中で試し、相手の強さに対しての解法を輪郭として提示していたのであり、その解法がどこまで通用するかは別として、挑戦者側が手ぶらではないことを示す重要なパートになっていたのである。
分断策の流れの中で立花誠吾は追撃のプランチャを放ったが、タロースが受け止めて返り討ちにしたという一点だけでも、タイタンズ・オブ・カラミティがこの前哨戦で「形勢逆転の起点」を相手に与えなかったことが伝わってくる。飛び技は流れを変える象徴になりやすいが、それを真正面から受け止めて潰された時点で、立花誠吾側の反撃は勢いを得る前に折られ、王者側は落ち着いて終盤の決め手へ向かうことができる。ここから綾部蓮がブレーンバスターで反撃の狼煙を上げ、タロースの串刺しボディアタックからフルネルソンバスターへ繋ぐと、試合は「王者が勝つ流れ」に回収されていくのだが、その回収が急ではなく、相手の抵抗と策を一度受け止めたうえで、最後に質量と連係で押し切るという筋道を通っているため、前哨戦としての説得力が強く残るのである。