トップ画像:photo by George Napolitano 2019年5月18日PWHFより
[週刊ファイト2月20日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼みぶ真也の昭和プロレス追憶☆哲学者獣人パンピロ・フィルポ
by みぶ真也
Crybaby Cannonパンピロ・フィルポ ジャイアント・へイスタックス ボブ・アームストロング Crazyルーク・グラハム
「一番好きなレスラーは誰ですか?」
と訊かれたらいつも、
「パンピロ・フィルポ!」
と即答して、意外な顔をされる。
ブルーザー・ブロディやランディ・サベージに大きな影響を与えたレスラーながら、フィルポは日本ではあまり評価されていない。ヒールとは言え、帝王アントニオ・ロッカに続くアルゼンチン出身レスラーとして、ヒスパニック・ファンの多い米国では人気があったはずだ。
ベビーフェイスもこなし、ジュニア・ヘビーからヘビー級に至るまでタイトル獲得歴も多数ある。洋の東西を問わず王座を得るためには、レスリングの実力だけでなく人気が必要なことは言うまでもない。野蛮な獣人タイプは米マットでは好まれるのだ。
初来日は1967年。日本のプロレス記者はフィルポの風貌を写真で見て、それ以前に来日して話題をさらった“グレート・アントニオの再来”的な売り方を考えていたらしい。
カナダの密林(!)からアルゼンチンの草原、出身地は違えど大自然の中で発見された原始の怪物というわけだ。
ところが、いざ実物を見てみると巨漢のアントニオに比べてはるかに体が小さく、他のレスラーと並ぶと見劣りする。さらに、数週間の来日期間で日本語日常会話をマスターするというインテリぶり。いずれにせよ、怪物とか原人のイメージにはほど遠い。
そこでフィルポのキャラクターは、野人は野人でも自らの知性と意思であえて自然児として生きる、言わば犬儒派の哲学者のイメージになったようだ。