[ファイトクラブ]先行公開 [週刊ファイト9月12日号]収録
▼舞華・全勝優勝スターダム5☆GP総括 岡田新体制上半期の結果は?
Photo: やす 西尾智幸/他 by 甘井公平 w/編集部編
・日本武道館より巨大な、武蔵野の森総合スポーツプラザ
・年間最大イベント『5☆GP』はどのように変化したか?
・リング外の新体制 「選手ファースト」岡田社長を漢にしたい!
・選手ファースト大いに結構だが・・・岩谷麻優「来年以降の5☆GP辞退」
・リング中の新体制 「新マッチメーカー朱里姉さんの顔を立てたい!」
・手足細くなった上谷沙弥 舞華の決まり手スターダム各選手今後の課題
・スターダム対マリーゴールド興行戦争 割って入ったノロノロ台風10号
・翌日の9月1日、ジュリアはWWEのNXT『No Mercy』に華々しく登場
■ スターダム 5☆GPシリーズ
2024.8.10(横浜武道館)~8.31(武蔵野の森総合スポーツプラザ)
「なんだよ、前日になって弱気な発表しやがって(公式サイトで中止の可能性アリと発表)」
「マリゴの開幕戦(大阪府立第2、昼夜興行)は、さっさと決行宣言したのにな」
「年間最大の試合なんだから、ホテルを取って遠くから来る友人もいるんだ。いい迷惑だよ」
東京都は多摩の外れ、新宿から40分の京王線飛田給駅前で聞かれた会話である。
日本武道館より巨大な、武蔵野の森総合スポーツプラザ。隣には更に巨大な味の素スタジアムもある。サブアリーナやサッカー場など巨大スポーツ施設が林立するこのエリアは、元々1941年に完成した「調布飛行場」が戦後米軍に没収され、その後は米軍と東京都でシェアして使用。1974年に東京都に完全返還されたのを機に、持て余していた周囲の土地を再開発した一角だ。今も三宅島や大島行きの民間航空便はここから発着している。
運営は独立採算の第三セクターとはいえ、大株主は東京都なのだ。
しかもメインアリーナは10,000人のキャパ(リングや花道・舞台を組んでもMAX7,500人収容可能)を誇る『むさスポ』。ここは全国中高校生の部活動やアマチュア活動の頂点(全国大会)として定着している。バレーやバスケ、卓球といった屋内スポーツを中心にバトン・トワリングやブラスバンド、ダンス、そして完全バリアフリーを活かし、いわゆるパラリンピック系スポーツの聖地という側面もある。
商業目的にはめったに貸し出さず、プロレス団体の使用はこれが2度目であり、1度目もスターダム2022年10月1日の5☆GP決勝戦。ジュリアが優勝した興行だ。
年間最大イベント『5☆GP』はどのように変化したか?
▼営業努力!新会場開拓ライバルから結束固まったスターダム中身充実
岡田新体制のもと、初開催の5☆GP。
前年は「長期日程(23年7.23~10.1の70日間」「途中タイトルマッチが何度か入るため日程過密」など選手には不評であり、実際に怪我による戦線離脱者も5名以上。
今回は20日間の短期開催。例年と異なり、ブルーとレッドを更に2つに分け、短い中にも盛上げどころを分散。最終日は「決勝戦」ではなく4選手の「優勝決定戦」とし、4ブロックを勝ち残った4人の代表が1Dayトーナメントを行った。
開幕戦の横浜武道館こそ、舞台の仕掛けと照明を安く上げたばかりに「ただの地方体育館興行」と揶揄され、慌てて従来のショーアップ路線に変更。
キーとなったのは、岩谷がメインを務めフブキ・ラナまで出した8・15後楽園ホールと、舞華の全勝確定と当日2試合目の羽南が朱里に勝った8・28新宿FACE大会だ。土日の地方興行ではREDもしくはBLUEの公式戦を小出しにし、この2大会では12試合をドンと並べ、目の肥えた首都圏マニアを集客。共に平日開催にもかかわらず超満員に。
この2興行で、8・31の優勝決定戦進出者と展開が見えた。
夏休み返上でSareeeとタッグを組む岩谷麻優。
全敗の中野たむは(全敗にもかかわらず)セミで刀羅ナツコの持つワールド・オブ・スターダムに挑戦。
H.A.T.E.を代表し、渡辺桃は渡米してメルセデス・モネの持つSTRONG女子王座に挑戦。
9月からは再び力を入れ仙台女子の「じゃじゃ馬トーナメント」と併催するNew Bloodを任される若手エース吏南は、姉の妃南とフューチャー・オブ・スターダム防衛戦。
団体の今後の姿勢と輪郭がはっきりした興行であろう。
リング外の新体制 「選手ファースト」岡田社長を漢にしたい!
▼明暗出たStardom5★GP神戸 AZM・舞華4連勝 中野たむ4連敗裏
岡田体制になってからは、ロッシー小川路線を否定した「全方位外交」に目が行きがちだが、実はこれ以外にも試合当日の医療ケアが充実。地方大会でも医師が一人、そしてメディカルケア専門スタッフ3名が常駐している。リング下と控室のブルーのユニフォームにブルーの手袋の男女スタッフがそれだ。もう若手が先輩の、若手が自身のテーピングを巻くことはない。
今回の5☆GPのように4人が残り「優勝者決定戦」方式だと、最終興行の大箱、前半の試合に注目の準決勝シングルが2つ組まれることになり、前半から盛り上がる。過去の5☆GP最終戦はメインの「RED・BLUE」勝ち残り同士2選手の試合にのみ注目が集まり、セミ前までは脱落選手や若手による大人数タッグマッチの消化試合続きとなるため、客もダラダラと物販コーナーに残り、場内が温まらなかったのだ。
また「全方位外交」の賜物としてWAVEに参戦した上谷沙弥は7・14のCatch The Wave(総当たりシングルトーナメント)で優勝。共に参戦した八神蘭奈もデビュー1年目とは思えぬ活躍で、GAMI代表に今後のスポット参戦を要求された。
さらに岡田新体制ではロッシー小川時代には光のあたらなかった実力派・飯田沙耶を成長させ、ただのヒール軍団であった大江戸隊の扱いを変え、ユニット名も変更。Starsと並び最古のユニットであったQueens Questを解散させ、若手グループNEO GENESISに昇華させることで団体内ユニットシャッフルと新陳代謝に成功している。
某若手選手曰く、「いま女子プロ界で最もNGのない男」と呼ばれ、選手・スタッフとも提案しやすい雰囲気を団体に醸成させた岡田社長。今のところ確実にマリーゴールドに1歩リードだ。