北の大地に集まったのは僅か2,156人! UJPWとプロレスの現実

 ほれ見ぃ、言わんこっちゃない。
 6月15日(土)、北海きたえーるで開催された日本プロレスリング連盟(UJPW)設立第2弾大会『ALL TOGETHER in SAPPORO~能登半島復興支援チャリティ大会』の観衆は、僅か2,156人(主催者発表、以下同)に過ぎなかった。5月6日に東京・日本武道館で行われた第1弾大会は4,583人だったから、それよりもさらに下回っている。

 武道館の時は、同じ日に井上尚弥のタイトル・マッチが東京ドームで開催されたという不利な面もあったが、今回はもう言い訳要素がない。きたえーるのキャパシティが約1万人だから、1/5程度しか客席が埋まらなかったわけだ。
 土曜日開催という好条件だったのに、この体たらく。とはいえ、翌16日の日曜日に同じ会場で行われた新日本プロレス大会だって2,370人しか入らなかったのだから、少し増えたとはいえ五十歩百歩、UJPWのみならずプロレス界全体が危機なのかも知れない。

 筆者は常々、合同興行だけの連盟発足では意味がないと本誌で訴えてきたが、その合同興行ですら惨敗だったのである。今のままでは、UJPWの存在そのものが無意味と言わざるを得ない。


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[ファイトクラブ]13年振り日本武道館低調『ALL TOGETHER』! 敵は他団体に有らず

不入りの責任は誰が取るのか!?

 そもそも、2回のALL TOGETHERの集客を、どこまで本気で行っていたのか疑問だ。この大会の主催者はUJPWではなく、ALL TOGETHER 実行委員会である。そして、協力しているのは日本プロレスリング連盟実行委員会だ。なんだ、その『実行委員会』って?
 なぜ、せっかく連盟が発足したのに、UJPWが主催しないのだろうか。

 答えは簡単で、UJPWがまだ法人化していないからである。『連盟』と銘打ちながら、未だに宙ぶらりんの状態だ。
 UJPWの発足が発表されたのは昨年の12月15日。つまり、それからちょうど半年も経った。そして3月26日の記者会見では、UJPWは法人化に向けて調整中と説明している。あれから約3ヵ月、まだ法人化されていないのは、いったい何を『調整』しているのだろうか?

 ロッシー小川は、スターダムを契約解除されてからたった2ヵ月でマリーゴールドを株式会社化し、旗揚げ大会を行っている。営利目的だと、このスピード感だ。
 UJPWは、未だに一般社団法人にすらなっていない。まさか、公益社団法人を目指すなんて大それたことを考えているのだろうか? それなら、まだ法人化されていないのも納得だが、常識的に考えてプロレス組織が公益法人として認可されるとは思えない。

 ならば、ALL TOGETHERを主催&協力する『実行委員会』とは何なのだろう。この2大会の不入りについて『実行委員会』は、どう責任を取るのだろうか?

 おそらく、責任は問われないのだろう。これが各プロレス団体の興行だったら、営業担当は厳しく糾弾されるはずだ。団体が不利益を被ったのだから、責任を追及されるのである。
 だが、今回の『実行委員会』は多分、2回の大会が終わればお役御免となるだろうから、お役所仕事になっても不思議ではない。

UJPWは今こそ西川きよしの精神を発揮すべし!

 以前にも書いたが、プロレス界の統一コミッション設立を目指したグローバル・レスリング連盟(GPWA)などは、いつの間にか消滅した。プロレス団体は、金儲けが目的だと真剣に取り組むが、他団体との協力となると利害関係で揉めて、長続きしないのである。

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[ファイトクラブ]消息不明のGPWA&日本列島プロレス連盟~消えたプロレス団体

 それでも、合同興行なら利益にも繋がるからそれなりに取り組むが、自主興行ほどの旨味はないのでおざなりになりがちだ。
 結局は、せっかく連盟(のようなもの)を立ち上げても法人化されず、自然消滅してしまうのである。

 だが、何度も言うように連盟の本当の目的は合同興行ではない。無秩序状態のプロレス界に、各団体が共存できるルール作りが急務だ。特にプロレスラーの安全対策、セカンド・キャリアを含む待遇改善、社会人教育などである。
 これらは、一朝一夕にできることではなく、また金儲けに直結しないことから、各団体はなかなか重い腰を上げようとしない。だからこそ、連盟によるルール作りが必要なのだ。

 以前からよく言われているライセンス発行も目標の一つだろうが、基本的なルール作りもできていないのに、ライセンス発行は現実的とは言えない。日本プロレス末期の言葉を借りれば『時期尚早』だ。
 西川きよしではないが「小さなことからコツコツと」まずは出来ることから始めるべきである。

 ともあれ、主催ではないとはいえUJPWによる合同興行は2回とも失敗した。当分は、合同興行は各団体に任せ、ルール作りに専念するべきである。UJPWが合同興行を主催するのは、その後でよい。
 問題なのは、ルール作りをしようとすると、各団体のエゴがぶつかり合い、結局は脱退する団体が出て来て、連盟が有名無実化することだ。第一次世界大戦後に平和目的で発足したものの、第二次世界大戦勃発を止められずに崩壊した国際連盟のようなものである。

 いずれにしても、今のままではUJPWもGPWAのように何時の間にか忘れ去られ、法人化される前に消滅する可能性が高い。そうならないためにも、筆者はしつこく訴えていく所存だ。

 もう一度、UJPWの設立理念を記しておく。

『わが国におけるプロレスへの認知を高め、プロレスが社会の文化的公共財であることを認識し、これを普及して国民生活の明朗化と文化的共有の向上を図るとともに、プロレス事業の推進を通してスポーツおよび文化の発展に寄与し、プロレス業界の繁栄に貢献することを目的とする』

▼日本プロレスリング連盟(UJPW)の会長、坂口征二


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