日本プロレスリング連盟への提言~プロレスラーの社会人教育

トップ画像:photo by George Napolitano

 前回、日本プロレスリング連盟(UJPW)に関する批判記事を書いたら、SNSでバズッたようだ。今年に入って現役レスラーが2人も試合翌日あるいは試合直後に亡くなったにもかかわらず、UJPWは何の動きも見せず、また3月26日の記者会見でもその件には全く触れなかったことに筆者は憤ったのである。
 せっかくプロレス界を統括する組織が発足したのだから、合同興行を行うだけの連盟では意味がない。それが筆者の主張だが、他の媒体は提灯記事ばかり。

 しかし、批判ばかりしても仕方がないだろう。もちろん批判もするが、前向きな提言もしていくつもりだ。ここはまず、最も着手しやすい合同興行から始めたのだろうと、好意的に解釈する。
 プロレス界発展のために、UJPWが機能することを願わずにはいられない。

▼日本プロレスリング連盟(UJPW)は何のための組織なのか!?

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▼プロレス界 本日モ 反省ノ 色ナシ

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誰にでもなる可能性がある、ギャンブル依存症

 今年のスポーツ界で最も大きかったニュースは、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平の通訳を務めていた水原一平容疑者のスポーツ賭博事件だろう。水原容疑者は、違法なスポーツ賭博により多額の借金を抱え、大谷の銀行口座から勝手に預金を引き出したと報道された。
 事の顛末は裁判の行方を見守るしかないが、衝撃的だったのはあれだけ好感度の高かった水原容疑者が、ギャンブル依存症だったという事実だろう。水原容疑者は、日本にいる間はギャンブルに手を染めていなかったと言われている。つまり、賭博に寛容なアメリカに渡ってからギャンブル依存症になったということだ。

 ここにギャンブルの怖さがある。要するに、誰でもギャンブル依存症に陥る危険性があるということだ。
 ギャンブルなんてやったことがないという人でも、一度ギャンブルにハマってしまえば泥沼から抜け出せなくなる。そして水原容疑者のように、お互いに信頼し、信頼されていた大谷をも簡単に裏切ってしまうのだ。多額の借金の前では、人間関係なんて簡単に壊れてしまう。

 さらに、もっと恐ろしいのはギャンブルが反社会的勢力の入口になってしまうことだ。反社の人間たちは、有名人を虎視眈々と狙っている。有名人の弱みに付け込み、カネをいくらでもむしり取ろうとするのだ。特にスポーツ関係の場合は、ギャンブルが八百長に繋がるので、反社はそれをネタにゆするのである。
 水原容疑者も、反社の人間に弱みを握られていたことは想像に難くない。何しろ、すぐ隣りには『カネの成る木』大谷が控えているのだ。反社にとっては絶好のターゲットである。

 プロレスラーだって、有名人に違いはない。他のスポーツと違い、プロレスは八百長のやりようがないので反社がそれを強要することはないが、それでもギャンブルはスキャンダルに繋がる。
 ところで、プロレスラーに最も多い趣味はパチンコではないだろうか。合宿所や家の近くにはパチンコ屋があるだろうし、遠征中だってパチンコ屋は日本国中どんな田舎にも存在する。

 プロレスはオフの日や空き時間が多く、自由時間は独りで気軽に行けるのがパチンコ屋だ。パチンコ屋は朝から夜まで開いているうえ、ワンコインから遊ぶことができる。
 だが、この手軽さがギャンブル依存症の始まりになることも少なくない。筆者の周りにも、パチンコによる借金で首が回らなくなったヤツが少なからずいる。

 もちろんパチンコは合法的な遊戯だし、最初から使う金額を決めておいて、あくまでもヒマ潰しの遊びと心得ていれば問題はないが、負けた分を取り返そうと躍起になっているとギャンブル依存症にハマってしまうのがパチンコの怖さだ。実際、ダンプ松本もパチンコ依存症だった。
 また、パチンコが違法ギャンブルの入口になることもある。違法ギャンブルに反社は付き物。さらに、最近では違法なオンラインカジノも多い。こちらはパチンコ屋と違って閉店時間などなく、夜中でもお構いなしに24時間バクチに打ち込める。

▼パチンコ依存症だったダンプ松本

UJPWに望まれる、プロレスラーの講習会開催

 反社会的勢力の入口となるのはギャンブルだけではない。違法薬物もその一つだろう。
 特にプロレスラーの場合は、他のスポーツに比べてドーピングの規制が緩いので、違法薬物に手を染めやすい。それが反社にとって格好の餌食になるわけだ。

 力道山の頃はプロレス界自体が反社との関係が濃密だったが、現在では時代が違う。反社との繋がりが命取りになるのだ。
 他のスポーツ界では、特に反社との関係に気を遣う。八百長の温床になるし、利用できるとなると骨の髄までしゃぶりつくすのが反社だからだ。

 プロ野球ではシーズン前に全球団の新人選手を集めて、日本野球機構(NPB)主導で研修を行う。その中には当然、絶対に反社とは関わらないように指導する項目があるのだ。
 また、各球団でも所属選手に対しての講習会がある。警察関係者を講師に招いて、反社の恐ろしさを徹底的に説明するわけだ。選手が反社に関わると、選手生命が断たれるだけではなく、その球団はもちろん、野球界全体にとって大打撃となるからである。

 プロレス界はどうか。そういう教育を行っている団体もあるだろうが、多くの団体はそこまで手が回らないのが実情だろう。
 そんな時こそ、UJPWの出番である。プロレス団体で教育できないのなら、UJPW主導でやればいい。こういうために、主要団体が参加する連盟を立ち上げたのではないか。

 もちろん、反社との繋がりやギャンブルおよび薬物の恐ろしさを教えるだけではなく、社会人として恥ずかしくない一般常識も身に着けさせる。学校を卒業してすぐにプロレスラーになった者だと、社会のルールすら判らない場合もあるだろう。何しろ『プロレス界の常識は社会の非常識』と言われるぐらいだ。
 昔のように「プロレスラーは一般人と違い、常識はずれなところが魅力だ」なんて考え方は通用しない。プロレスラーといえども、最低限のマナーは守るべきである。

 UJPWがやるべき事柄はまだまだ多い。プロレスの人気回復だけではなく、一般社会でも通用するプロレス界にしていくことが、UJPWの使命である。
 最後にもう一度、UJPWの運営目的を記しておきたい。

『わが国におけるプロレスへの認知を高め、プロレスが社会の文化的公共財であることを認識し、これを普及して国民生活の明朗化と文化的共有の向上を図るとともに、プロレス事業の推進を通してスポーツおよび文化の発展に寄与し、プロレス業界の繁栄に貢献することを目的とする』

▼日本プロレスリング連盟(UJPW)の会長、坂口征二


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