アントニオ猪木と戦った“ロシアの妖怪”クリス・マルコフの訃報が届く

2004年4月17日、CACでの再会を喜ぶクリス・マルコフとアントニオ猪木の雄姿

 昭和のファンにおいては強烈な印象を残した『第11回ワールド大リーグ戦』の決勝戦においてアントニオ猪木と激戦の末、血染めの卍固めで敗れ去った“ロシアの妖怪”ことクリス・マルコフの訃報が飛び込んできた。死因は不明であるが2024年2月10日に85歳没とのこと。

 振り返ればこのリーグ戦においてはボボ・ブラジルとゴリラ・モンスーン2強の優勝候補の影に隠れ、伏兵的存在として参加。当時のパンフレットには1960年ヨーロッパでデビュー、ロシア・バルカン太平洋岸チャンピオンと記載されている。その後アメリカに渡りAWA圏で活躍、とにかく強烈なフライング・ニー・スタンプとキッチン・シンク、そして凶器攻撃を得意とし殴る、蹴るのラフ・ファイターの印象が強い。

編集部注:1938年3月1日ユーゴスラビア生まれ。幼少期、北米に移民。レスラーとなってからは、ロシア人ギミックのヒールとして活動した。


第11回ワールド大リーグ戦のポスターと1969年4月16日大阪大会のマルコフの雄姿

 日本中のプロレスファンが固唾を飲み、見たワールド決勝の活躍で一気にネームバリューが上がり、翌年の第12回ワールド大リーグ戦にも連続参加。リーグ戦ではエースのジャイアント馬場とはリングアウト引き分け、因縁のアントニオ猪木とは反則勝ちという活躍で大いにリーグ戦を引っ掻き回した。名実ともに日本マットにおいてメインエベンターとなる。

第12回ワールド大リーグ戦の記念ポスターと若き日のクリス・マルコフ(大阪府立体育会館)

 ところがその後、参加するシリーズ毎にトーンダウンしてゆくのである。
翌年、サマー・シリーズにエースとして参加しジャイアント馬場のインターナショナル王座に挑戦するが右膝の怪我もあり2対0のストレート負けを喫した。

 最後の日本プロレス参戦(既にジャイアント馬場もアントニオ猪木も既に独立)となった1972年の『サマー・ビッグ・シリーズ』にもエースとして参戦したが、特別参加した“アラビアの怪人”ザ・シークの悪党ぶりにマルコフのラフ殺法が色褪せて見えてしまう。このシリーズにおいて、後々ブル・ラモスやエル・ゴリアスと人種差別的な乱闘があったと伝え聞く。

 徐々にそのファイトに翳りが見え始めていたが、1974年ジャイアント馬場が設立した全日本プロレスに参戦。ジャイアント馬場が初めてジャック・ブリスコに勝利、日本人初のNWA世界王者となり盛り上がっている中、最終戦でひっそりと馬場のPWFに挑戦したがわずか13分ほどで2本ともとられ完敗している。
 満を喫してターゲットを新日本プロレスのアントニオ猪木に向け、1978年初参戦した『闘魂シリーズ』の名古屋でNWF王座に挑戦したが、これまた11分41秒、卍固めで完敗を喫した。

 日本に初登場してから新日本プロレス参戦に至るまで、エース外人として参戦はするものの、肝心の日本エースとの対戦においては寝る役となる定番の”シリーズ参加外国人”止まりが多く、徐々にそのカリスマ性は薄れていった。

 その後、フロリダやMidwest中西部の各テリトリー、さらにAWA圏での活躍を雑誌など通じて目にしていたが、次第にその雄姿は消えていった。
 ところが、2004年4月17日に開催されたCACに、アントニオ猪木が新たに新設されたルー・テーズ賞を受賞することを聞き、参加し会場に足を踏み入れるとあのクリス・マルコフが奥様と会場に現れたのである。現役当時と変わらぬガッチリした体格に日に焼けた顔で、まだまだ老け込んでいる様子もなくアントニオ猪木との再会を楽しみにしておられた。

CACで日本での活躍を懐かしむクリス・マルコフ

 やはり日本での思い出はアントニオ猪木と『第11回ワールドリーグ戦』の決勝で争った試合のことを懐かしく語られ、現在はミネアポリスで集合住宅の管理業務をおこなっているとのことであった。
 アントニオ猪木の出世試合の相手をしたクリス・マルコフの名は、あの試合をリアルに体感した昭和プロレスファンにとって忘れられない名レスラーである。改めてお悔やみ申し上げます。

マルコフ夫妻と藤井敏之記者


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